梅咲きぬ(潮出版社)★★★★☆:90点
「欅しぐれ」に続いて、またも素晴らしい作品にめぐりあえました。
江戸屋の女将:四代目秀弥となる玉枝の五歳から四十一歳(四十二歳)までの物語。母である三代目秀弥も主人公の一人なのですが、ここは娘・玉枝の視点を重視します。
****【注意】以下、完全にネタバレあり****
幼い頃から将来の女将としてのしつけ・教育が始まるきびしさ。実は女将としての教育だけではなく、人としていかに生きるべきかを教えられていた。幼い玉枝にとっては泣きたくなるような厳しくつらい日々。それだけに、稽古場に運び込まれたひな飾りのシーンが胸をうつ。母、春雅・福松、厳しくも温かい人生の師が素晴らしい。
板長の謙蔵が仲居がしらの市弥が、そして深川の人々が玉枝を支える。玉枝も私心持たず、江戸屋の若女将・女将として深川の町と人々のために自分がすべきこと、自分ができることを必死で考える。深川の人情の素晴らしさ。自分が苦しいときにこそ皆を元気づけようとし、まわりの人々に救いの手をさしのべる。その心意気や良し。話が前後するが、商いよりも人のこころを重んじる米問屋・野島屋もあっぱれ。
春雅・福松は実に良い夫婦でした。柔らかな口調ながらもピシリと決める春雅の上方訛りが絶品。関西人の私には嬉しいかぎりでした。春雅が病に倒れてから福松が見せる愛情、福松に全幅の信頼を寄せる春雅に涙。この夫婦(めおと)愛はほんまもんですなあ。
八木仁之助との出会いと三十年にも及ぶ恋。縁談を断り続けた八木、婿取りをせずにきた玉枝。結ばれるはずのない身分違いの恋が切ない。しかしそれも定めと心に言い聞かせた二人。会う機会も決して多くなかったが、お互いの心を分かり合えた日々は幸せだったと思いたい。
物語が進むにつれて時の経つのが早くなり、終盤など一気に20年以上の時が流れたのには驚いた。読者は玉枝が過ごしてきた日々に思いをはせたのではないだろうか。決して順風満帆なはずはなく、多くの苦労があり、人に助けられ人を助けて日々懸命に生きてきたはずである。。。また、どうしても愛する人に先立たれた悲しみについても考えてしまう。それだけに今までの山本作品以上に切なさと寂寥感が強かった。氏はこの作品で新境地を開くとともに、また一つの金字塔をうち立てたように思う。
この作品には良いシーンが数多くあるのですが、書き出すときりがありません。
「深川の最中(もなか)」「うなぎ豆腐」をはじめとする料理のシーンは相変わらず素晴らしい。一方、騙りのエピソードでは江戸屋の人々が相手をギャフンといわせる小気味良さはあったものの、悪役が弱いという欠点も相変わらずなのが愛敬か。
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ここのところ忙しくて本を読む時間がなかったのですが、図書館・予約本の取り置き期限が迫ってきたため、急きょ読破。自分は玉枝の1/10も努力・我慢していないなあ。。。日々、安易な方に、楽な方に流されているなあ。。。子供に対してもこれだけの厳しさと愛情をもって接しているだろうか? と反省しきりです。
人生とは?生き方とは?しつけ・教育とは? 色々なことを考えさせられます。
一力ファンでなくとも必読の書。
参考ブログ:
*Happy Light*(よしさん)
ついてる日記(Rokoさん)
歯医者さんを探せ!(bamseさん)
のほ本♪(ゆこりんさん)
※素晴らしい感想、参考にさせて頂きました(よしさんのブログからたどらせて頂きました)。