狼は瞑らない(ハルキ文庫)★★★★’~★★★★:75~80点
内容(「BOOK」データベースより)
佐伯鷹志は、かつて警視庁警備部警備課に在籍し、SPとして、政治家の警護をしていたエリート警察官だった。いまは一線を退き、北アルプスと立山連峰に挟まれた広大な山岳地帯で遭難者を救助する、山岳警備隊の隊員である。その佐伯を狙う謎の暗殺者集団。彼らは、警察と政界の闇を知りすぎた佐伯を消すために送り込まれた“掃除屋”だった。
久々の山岳冒険小説でした。
豪雪、寒風吹きすさぶ冬山。滑落の恐怖。まるで雷のまっただ中にいるかのような超大型台風の襲来。そのような過酷な自然の中、命がけのぎりぎりの闘いが繰り広げられる。最後に頼れるのは自分の肉体と精神力とほんの僅かな運のみ。
学生時代に少~し山歩きをしていたので(夏の北アルプスがメインでしたが)、山岳ものには大きな関心があります。山岳冒険小説には昔から傑作群がひしめいており、本作品にも色々と注文をつけたい箇所はありました。
悪役側の描き込み不足
絶対的有利なのに隙をみせては反撃されてしまう悪役たち
崖から落ちてもなぜか助かるのは山岳警備隊側
幾らでもコピーが可能なMOを取り戻そうとする不自然さ などなど
ですが、山と山岳警備隊員の描写が素晴らしく、まずは満足できる出来でした。
山岳警備隊の隊員たちは、警官というよりも限りなく山屋に近いですね。1年の多くを山で過ごし、シビアな自然の中、命がけで登山者を守り遭難者を救助する日々。山の中では最終的に自分で判断せざるを得ない。強烈なまでの自己責任。そのような生活を続けている内に普通の警官とは異なった考え方になっていくのでしょうか。
謎の暗殺者集団との対決よりも、山岳警備隊員の生き様の方がはるかに面白かったです。
佐伯が命を狙われる理由が、現首相の政治疑惑の真相を知っているからだけではなく、父の死にも関係していたという点は印象的でした。
主人公は佐伯なのですが、それ以外の登場人物も(が?)良かったです。
佐伯の父をよく知っており尊敬している山小屋の管理人・高坂夫妻
ある重大な使命を帯びながら、次第に真の山岳警備隊員に変わっていく杉浦
----実はもう一人の主人公ともいえます
大学時代とは雰囲気が変わってしまった佐伯をいぶかしく思い、時には疑ったりもするがダイ・ハード的な大活躍をする正岡
妻の死に直面するのがつらく、あえて危険を冒して佐伯の捜索を志願する日下部
少年時代に山で遭難した佐伯を背負い、ラスト、再び彼の救助に向かう深森
上からの命令を待たず悪天の下、自分の判断でヘリを飛ばすパイロットの甘木
腕にも自信あり
「ここらの山を飛ぶヘリの操縦士は、みんなベテラン中のベテランでね」
「本当かね」
「下手な野郎は、みんな落ちましたから」
最高!
冒険小説には彼のような人物が不可欠です。