sonryouya
損料屋喜八郎始末控え(文藝春秋)
★★★★(☆):85点

山本一力の単行本デビュー作ですか。これも良かったです(^_^)
氏の作品では1つ前に読んだ「大川わたり」(同じく85点)と合わせて、「合わせ技、1本!」でも良いかなと思いました。
最近のお気に入り作家では、若干出来不出来の差が激しい横山秀夫を差し置いて殿堂入りとしましょう。

他の山本作品から考えると、ちょっと珍しい(?)ややクールな喜八郎が主人公。
一代限りの末席同心であったとはいえ元は武士。腕も立つなら弁も立つ。頭の回転も抜群で悪い奴らに立ち向かう。
28才、かすれ声で、細面の両目は深くくぼんでいるとの主人公像。俳優でいえば誰かな?と考えたのですが、ちょっと思い浮かびませんでした。
寡黙な分、喜八郎の心情がつかみきれないもどかしさはありましたが、さすがは山本一力、たっぷり読ませてくれます。江戸屋の女将・秀弥との間に交わされるほのかな恋心もいとよろし。

一応悪役・にくまれ役で登場する伊勢屋、これがなかなか存在感あり。喜八郎や秋山にこてんぱんにやられてばかりですが、なかなかどうして・・・。良いこともするんですよね。伊勢屋と笠倉屋の番頭二人も良い味を出していました。

「いわし祝言」で描かれる清次郎とおゆきの祝言のシーンは感動的でした。

おゆきの白無垢の襟元に陽が当たり、絹の織目がきらきら輝いている。切れ長の瞳が、ときどき清次郎に流れた。相手を愛おしむ目を見せるおゆきに、長屋の住人が吐息を漏らした。

ここに至るまでが色々あって、久々にツーンとしてしまいました。
清次郎に迷惑をかけた伊勢屋からは番頭によって祝い酒の四斗樽が届けられるなど、ホロリとさせられやしたぜ。