生きる(文藝春秋)
乙川優三郎氏の直木賞受賞作。
表題作を読み始めたときは「ちょっと暗いなあ、今いちかなあ」と思っていたのですが、終盤ぐぐっと良くなってきました。自分のふがいなさに気づき、誇りを取り戻す主人公。ラストの再会シーンにホロリ。婢女(はしため)の”せき”も良い。
「安穏河原」:武家の娘として生まれながらも不幸な境遇におちた双枝。しかし、父の教えを愚直なまでに守り続ける。生き方が下手だった父の最後の大きな賭(?)。解説にも書かれていましたが、貧しい童女が口にした「おなか、いっぱい」という言葉には絶句。
「早梅記」:出世を目指したが故にお互いに惹かれながらも夫婦となることができなかった二人。ひとことの恨み言も口にせず静かに去った”しょうぶ”。しかし、彼女は彼女なりに精一杯生き、小さな幸せをつかんでいたことが20数年後にわかる。
ここで書いた以外に、佐和・”とも”という妻たちも含めて、女性の登場人物が印象に残りました。