このコラムでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)に初めて関わる、またこれからDXに取り組む企業経営者やマネージャーの方々を対象に、DXに取り組む際のポイントやデジタル最新技術などをお伝えしています。

皆さんの仕事の現場において、検索エンジンやSNSなどインターネット上から欲しい情報を見つけ出し、ビジネスに活用することは日々行われていることと思います。

今回は、インターネットの情報検索におけるWEBデータの自動収集とビッグデータ活用についてお伝えします。

WEBデータの自動収集 ~クローラーとスクレイピング~

インターネットから自動的にデータを収集する手法として「クローラー」、「スクレイピング」があります。クローラーやスクレイピングは、インターネットが利用されるようになった当初から存在しています。

「クローラー」とは、WEBサイトを来訪してサイト上のページのリンクを辿ってページ内のコンテンツを収集するプログラム(ロボット)のことです。皆さんが普段ネット検索で利用しているGoogleなどの検索エンジンは、まさにクローラーによって世界中のWEBサイトを巡回して膨大なコンテンツを収集し、検索インデックスに登録しています。

「スクレイピング」はクローラーとは異なり、WEBページの情報の中からルールに従って情報を抜き出す技術のことです。

例えば、複数あるインターネットショッピングサイト(ECサイト)を検索し、商品ごとの情報(商品名や販売価格など)を取得して比較用のデータベースを作成するケースを考えてみます。商品数が数点であれば自分で検索して比較することもできますが、数百点以上になると1サイトごとに検索して情報収集するのも大変ですし、新製品の登場や、料金などの情報も日々アップデートしていくことを考えると、人が毎日情報を取得しに行くことは現実的ではありません。

クローラー、スクレイピングの技術を利用すれば、自動で複数のサイトにアクセスし、WEBデータを抜き出すことができます。下の図の例では、商品ページのレイアウトが異なる複数のECサイトから製品番号、商品名、販売価格を取得してデータ比較用のデータベースを作成しています。

図:WEBクローラーツールで様々なサイトからWEBデータを自動収集する例


現在、クローラー(スクレイピング)ツールとして、Octoparse(オクトパス)KEYWALKER WEBクローラーをはじめ多数のサービスが存在しており、大手企業をはじめ様々な企業が、マーケティング調査やSNSなどの口コミ情報収集などの目的で、クローラー(スクレイピング)ツールを活用しています。

■AIを活用したクローラーツールの登場

上記でご紹介したクローラーツールは、巡回する対象のサイトや、取得したい情報がどのページのどの箇所に掲載されているかといったページ構成の情報を事前に設定しておく必要があります。

しかし、WEBデータを調査する側のニーズとしては「まだ存在を知らないWEBサイトも含めて、欲しい情報を収集したい」はずです。また「単にWEBサイト上のコンテンツを取得するだけでなく、取得したコンテンツを解析、要約、整理したい」といったこれまで人が行っていた業務の自動化のニーズもあることでしょう。

近年、これらの課題の解決につながるAIを活用したクローラーサービスが登場してきました。残念ながら公開されているサービス情報が少なく、日本国内での活用事例が見つけられないために、具体的なサービス名までご紹介はできませんが、今後国内でもAIを活用したWEBデータの自動収集サービスが続々と登場し、WEBデータの調査業務の在り方を変え、ビッグデータ活用がより広まっていくのではないかと期待しています。

■クローラー(スクレイピング)を利用する際の注意点

前述のとおりクローラーはGoogleなどの検索エンジンサービスでも利用されている情報収集の手法であり、それ自体は違法ではありません。スクレイピングも同様です。

総務省統計局の消費者物価指数 (CPI)調査などでもスクレイピングが活用されています。

(参考:消費者物価指数 (CPI) へ のウェブスクレイピングの活用について

しかし、クローラーを利用してWebデータの収集、活用する場合には以下の注意が必要です。

<クローラー利用における注意点>

  • クローラーで取得した情報を第三者に譲渡、販売などしないこと
  • クローラーが短時間で過度にアクセスするなどWebサイトのサーバーに負担をかけないこと(サービスに影響を与えないこと)
  • クローラーで取得したWebデータを他のWebサイトなど外部に公開しないこと(とくに個人情報を取得する場合、本人の同意を得ずに他の目的での利用、公開は当然できません)
  • 利用規約などでスクレイピングを禁止しているサイト上の情報収集は避けること(スクレイピングを禁止するWebサイトでは、代替手段としてWeb APIを公開しているケースもありますのでそちらを利用して取得しましょう)

サイト運営会社の利用規約への違反、著作権法や個人情報保護法、刑法などに違反する可能性がありますので十分注意して情報収集が必要です。基本的にクローラー(スクレイピング)で収集した情報は、自社内のデータ解析、共有目的に留めた活用が望ましいでしょう。

■まとめ

今回はWEBデータの自動収集とビッグデータ活用について取り上げました。

近年、SNS上の自社商品・サービスへの批判、評価を収集して、企業側がSNS上の消費者に直接返信するかたちでカスタマーサポートを行う「アクティブサポート」が注目されています。膨大なSNS上のWEBデータを効率よく収集する手段の1つとしてもクローラーツールが改めて注目されていくことでしょう。

以上


via 合同会社 BSMi
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このコラムでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)に初めて関わる、またこれからDXに取り組む企業経営者やマネージャーの方々を対象に、DXに取り組む際のポイントについてお伝えしています。

さて、前回はIT人材白書2020の中から、DX推進企業における内製化の状況を取り上げました。DXに取り組む企業では「企画・設計などの上流の内製化」を進めている割合が高く、その理由としてDX推進にはビジネスとデジタル(IT)の連携が不可欠であり、ビジネス環境の変化のスピードのなかで、迅速にデジタルソリューション提供を推進するためには、内製化を抜きに取り組みが難しいことをお伝えしました。また、中堅、中小企業はデジタル人材の不足から内製化が難しく、外部専門家(ビジネスアナリスト、ITコンサルタント)を活用しながらDXを推進するケースが増えていることをご紹介しました。

今回は前回コラムでも登場した「ビジネスアナリスト」について、その役割とDXとの関係性を確認していきたいと思います。

 ビジネスアナリストとは?については、ビジネスアナリシスの普及・啓蒙活動を行う団体のIIBA®(International Institute of Business Analysis)の日本支部にて次のように説明されています。

・ビジネスアナリストとは?
『ビジネスアナリシスを専門的に行う人』
・ビジネスアナリシスとは?

『ニーズを定義し、ステークホルダーに価値を提供するソリューションを推奨することにより、エンタープライズにおけるチェンジを引き起こすことを可能にする専門活動』

(IIBA日本支部 BABOK® ガイド v3: ビジネスアナリシスのグローバル標準 より引用)

横文字の用語が多くて少しわかりづらかったでしょうか。以下の業務内容がイメージしやすいと思いますのであわせてご紹介します。

ビジネスアナリストの業務内容
・ソリューションの代替案について、目的、ソリューションのスコープ、必要なリソース(ヒト、モノ、カネ、時間)、投資対効果、リスク評価を明らかにして、経営幹部によるソリューションの選定を容易にする。
『ステークホルダー間で合意が得られた組織目標達成のためのソリューションを提言するために、次の業務を行う。

・選定されたソリューションについて、要求を洗い出し、要求を分析して、要求事項を明確にする。

・要求事項を満足するソリューションがプロジェクトによって実現できたかどうか、アセスメントと確認を行う。』

(IIBA日本支部 HP FAQ ビジネスアナリシスについて より引用)

つまりビジネスアナリストとは「ビジネスとデジタルの橋渡し役として戦略分析~デジタルソリューション提供~評価までを推進する役割」といえるでしょう。

ビジネスアナリストの役割の概要を下の図にまとめています。

図:ビジネスアナリストの役割の概要(IIBA日本支部 BABOK® ガイド v3: ビジネスアナリシスのグローバル標準 内 1.1 PURPOSE OF THE BABOK内の図を参考にして加工)

ビジネスアナリストは戦略 (IT)コンサルタントやプロジェクトマネージャーの役割と混同されがちです。それぞれの役割は以下の通りです。

□戦略コンサルタント

企業やDXプロジェクトの規模にもよりますが、戦略コンサルタントの役割は上図の左側の企業のデジタル戦略や計画等の提案、助言を行う役割です。

□プロジェクトマネージャー

ソリューション構築のプロジェクトをITサービス会社(SIer)に委託するケースにおいては、プロジェクト推進におけるプロジェクトマネージャーの役割は、上図の通り「プロジェクト推進やソリューション提供を成功させる」までの役割となります。

□ビジネスアナリスト

そしてビジネスアナリストは「戦略分析~価値の実現を成功させる」までの幅広い領域の役割を担っている点が特徴です。


ビジネスアナリストの役割は10年以上前から日本でも注目されており、2009年にビジネスアナリストのタスクとテクニック集をまとめた知識体系ガイド(BABOK®)の日本版が発行されています。しかし10年たった今でも本場の欧米と比べて日本では未だにその役割が認知されていないようです。その理由として、日本企業においてはIT戦略策定~構築までをITサービス会社に委託する形態が多く、内製化が進まなかったことで「社内はビジネスのみ」、「社外にデジタル(IT)を委託」といったかたちで役割が分断されたことが要因の1つと考えられます。

企業のDXの取り組みが活発な昨今、ビジネスアナリストの活躍の場が増えてくることでしょう。

大企業ではDX推進組織を設置してビジネスアナリストの役割を担える人材の確保、育成を進めていますが、リソースの限られる中堅、中小企業では前述の通り未だ外部専門家の支援が必要です。

私が所属する中小企業診断士のワークグループでもビジネスアナリシスの研究会が発足しました。私自身も企業支援していくなかで、ビジネスアナリシスの普及、企業内のビジネスアナリスト育成につながるような活動に今後も携わっていきたいと考えています。

以上


via 合同会社 BSMi
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このコラムでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)に初めて関わる、またこれからDXに取り組む企業経営者やマネージャーの方々を対象に、DXに取り組む際のポイントについてお伝えしています。

さて、前回はIT人材白書2020の中から、DX推進企業における内製化の状況を取り上げました。DXに取り組む企業では「企画・設計などの上流の内製化」を進めている割合が高く、その理由としてDX推進にはビジネスとデジタル(IT)の連携が不可欠であり、ビジネス環境の変化のスピードのなかで、迅速にデジタルソリューション提供を推進するためには、内製化を抜きに取り組みが難しいことをお伝えしました。また、中堅、中小企業はデジタル人材の不足から内製化が難しく、外部専門家(ビジネスアナリスト、ITコンサルタント)を活用しながらDXを推進するケースが増えていることをご紹介しました。

今回は前回コラムでも登場した「ビジネスアナリスト」について、その役割とDXとの関係性を確認していきたいと思います。

 ビジネスアナリストとは?については、ビジネスアナリシスの普及・啓蒙活動を行う団体のIIBA®(International Institute of Business Analysis)の日本支部にて次のように説明されています。

・ビジネスアナリストとは?
『ビジネスアナリシスを専門的に行う人』
・ビジネスアナリシスとは?

『ニーズを定義し、ステークホルダーに価値を提供するソリューションを推奨することにより、エンタープライズにおけるチェンジを引き起こすことを可能にする専門活動』

(IIBA日本支部 BABOK® ガイド v3: ビジネスアナリシスのグローバル標準 より引用)

横文字の用語が多くて少しわかりづらかったでしょうか。以下の業務内容がイメージしやすいと思いますのであわせてご紹介します。

ビジネスアナリストの業務内容
・ソリューションの代替案について、目的、ソリューションのスコープ、必要なリソース(ヒト、モノ、カネ、時間)、投資対効果、リスク評価を明らかにして、経営幹部によるソリューションの選定を容易にする。
『ステークホルダー間で合意が得られた組織目標達成のためのソリューションを提言するために、次の業務を行う。

・選定されたソリューションについて、要求を洗い出し、要求を分析して、要求事項を明確にする。

・要求事項を満足するソリューションがプロジェクトによって実現できたかどうか、アセスメントと確認を行う。』

(IIBA日本支部 HP FAQ ビジネスアナリシスについて より引用)

つまりビジネスアナリストとは「ビジネスとデジタルの橋渡し役として戦略分析~デジタルソリューション提供~評価までを推進する役割」といえるでしょう。

ビジネスアナリストの役割の概要を下の図にまとめています。

図:ビジネスアナリストの役割の概要(IIBA日本支部 BABOK® ガイド v3: ビジネスアナリシスのグローバル標準 内 1.1 PURPOSE OF THE BABOK内の図を参考にして加工)

ビジネスアナリストは戦略 (IT)コンサルタントやプロジェクトマネージャーの役割と混同されがちです。それぞれの役割は以下の通りです。

□戦略コンサルタント

企業やDXプロジェクトの規模にもよりますが、戦略コンサルタントの役割は上図の左側の企業のデジタル戦略や計画等の提案、助言を行う役割です。

□プロジェクトマネージャー

ソリューション構築のプロジェクトをITサービス会社(SIer)に委託するケースにおいては、プロジェクト推進におけるプロジェクトマネージャーの役割は、上図の通り「プロジェクト推進やソリューション提供を成功させる」までの役割となります。

□ビジネスアナリスト

そしてビジネスアナリストは「戦略分析~価値の実現を成功させる」までの幅広い領域の役割を担っている点が特徴です。


ビジネスアナリストの役割は10年以上前から日本でも注目されており、2009年にビジネスアナリストのタスクとテクニック集をまとめた知識体系ガイド(BABOK®)の日本版が発行されています。しかし10年たった今でも本場の欧米と比べて日本では未だにその役割が認知されていないようです。その理由として、日本企業においてはIT戦略策定~構築までをITサービス会社に委託する形態が多く、内製化が進まなかったことで「社内はビジネスのみ」、「社外にデジタル(IT)を委託」といったかたちで役割が分断されたことが要因の1つと考えられます。

企業のDXの取り組みが活発な昨今、ビジネスアナリストの活躍の場が増えてくることでしょう。

大企業ではDX推進組織を設置してビジネスアナリストの役割を担える人材の確保、育成を進めていますが、リソースの限られる中堅、中小企業では前述の通り未だ外部専門家の支援が必要です。

私が所属する中小企業診断士のワークグループでもビジネスアナリシスの研究会が発足しました。私自身も企業支援していくなかで、ビジネスアナリシスの普及、企業内のビジネスアナリスト育成につながるような活動に今後も携わっていきたいと考えています。

以上


via 合同会社 BSMi
Your own website,
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このコラムでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)に初めて関わる、またこれからDXに取り組む企業経営者やマネージャーの方々を対象に、DXに取り組む際のポイントについてお伝えしています。

新型コロナウイルス感染拡大という未曽有のパンデミックに見舞われた2020年が終わり、新たに2021年を迎えました。緊急事態宣言が発出された昨年4月以降、飲食業や観光業など多くの企業が深刻な経営状況に陥り、企業のデジタル化推進の動きも鈍るのではないかと考えていました。しかし実際はその逆で、昨年2020年に私が中小事業者のデジタル化を支援した件数は一昨年2019年と比較して1.5倍ほど増加しています。コロナ禍のこの時期を変革の機会ととらえた企業経営者が数多くいらっしゃったことを表しています。

さて昨年2020年8月にIPA(情報処理推進機構)がIT人材白書2020を公開しました。IT人材白書は、国内のIT人材の動向や実態を網羅的に調査しとりまとめた書籍です。2020年度版では、「DX取り組み企業やDXに対応する人材」について調査・分析されており、企業内のデジタル推進の現状を捉えるのに大変参考になりましたので、今回のコラムで一部紹介したいと思います。

IT人材白書サイトより引用


■DX推進企業における内製化状況 ~IT人材白書2020より~

白書では、DXに取り組んでいる企業と、そうでない企業に分けて取り組み事例が紹介されていますが、今回は「DX推進企業における内製化状況」を注目して取り上げたいと思います。


「IT人材白書2020」概要 P.13 ~IT業務の内製化とDXの取り組み~ より



IT業務の内製化状況を尋ねた結果をDX取り組み別に比較したものである。DXに取り組んでいる企業は、「企画・設計などの上流の内製化」を進めている割合が41.9%と高い。DXに取り組んでいない企業は内製化を「進めていない」割合が51.9%である。


この結果は何を表しているのでしょうか。DX推進は、ビジネスとデジタル(IT)の連携が不可欠です。昨今の変化のスピードが速い事業環境において、迅速にデジタルソリューション導入を推進するためには、内製化を抜きに取り組むことが難しいことを表しています。

しかし企業内の人材は限られるでしょうし、人材の獲得・育成に時間がかかるなかで、即座に内製化を実行に移せる企業は少ないのではないでしょうか。

そのような場合、DXの企画や設計(上のグラフの紫の部分)においては、外部の専門家(ビジネスアナリスト、ITコンサルタント)を活用してアドバイスをもらいながらDX推進するなかで自社内のデジタル人財育成を図っていく方法が考えられます。

では、プログラム工程を含めた全体工程(上のグラフの赤の部分)の内製化をどのように取り組んでいけばよいかを考えてみたいと思います。


■ DX推進の内製化/外部委託の切り分け

昨年、私がアドバイザーとして支援した士業法人の事例を紹介したいと思います。企業規模は小さいですが、会社の代表を中心にWEBマーケティング、社内IT化を積極的に進めてきた企業です。ホームページやメールを活用した集客に力を入れたいと考えており、マーケティングオートメーション(MA)※のソフトウェア導入を検討していました。

※マーケティングオートメーション(MA):ホームページやメール、SNSといったデジタルマーケティング業務を自動化することで業務効率化、生産性向上を図るソフトウェア、サービスのこと

これまで自社ホームページのコンテンツ企画、編集、アクセス分析といった運用は自社内のスタッフで対応してきましたが、ホームページサーバ構築や社内ITの保守運用全般はすべて外部ベンダーに委託していました。もちろん導入検討中のMAの知見のある人材も社内にいないため、これまで付き合いのあった外部ベンダーにMAソフトウェアの導入、運用の提案を依頼しました。しかしソフトウェア導入支援にかかるコスト、運用コストが割高で導入の判断には至りませんでした。

この時代、デジタルを積極的に活用しなければ市場競争に負けてしまいます。代表とも会話し内製化を検討することにしました。

従来のような社内ITを外部ベンダーに丸投げする状態では、コストの問題のみならず、マーケティング施策のスピード感、柔軟性が薄れてしまうことを代表も理解されていました。

限られた社内リソースで内製化を進めるため、外部ベンダーに任せる範囲、自社で内製化を進める範囲を切り分けることで実現しやすく効果の高い内製化体制を作ることを目指しました。先ずはこれを切り分けるために「IT技術の難易度」と「ビジネスの変化による改修頻度」の2つの軸から方針を検討してみることにしました。

「外部委託」する領域:上図の右下

導入予定のMAソフトウェアでメールマーケティングの自動化を実現するためには、顧客の氏名やメールアドレス情報を導入済みの顧客管理システムから取得し、MAソフトウェアと連携させる必要がありました。「IT技術の難易度」が高い作業で、自社内でこれを実現することは難しく、またシステム連携を対応した後はめったに変更が発生しないため「改修頻度」は低いと考えました。そこでこの対応は外部ベンダーに「外部委託」とすることにしました。

「内製化」を目指す領域:上図の左上

MAはマーケティングの自動化ツールですが、見込み客に対してどのような条件で情報の発信、紹介を行っていくかのジャーニー(シナリオ)の作成、顧客の動向把握のためのレポートを作成、といった設定作業が伴います。これらは運用を重ねるなかで頻繁に調整を加えていく地道な作業が必要です。「IT難易度」は低く、「改修の頻度」が高くなるこのような対応は、初めのうちは習得に時間がかかりますが、極力自社で内製化することでDX推進につながる重要な領域となりえます。

「内製化」を目指す領域:上図の左下

MAの導入準備には、ホームページ上にチャットボットの設置、マーケティング分析用タグの設置、といった対応もあります。「IT難易度」は低く、また一度設置するのみの作業で「改修の頻度」も低いことから、外部委託したほうが早い、という考え方もあります。しかしソフトウェアの理解を深めていくためには、このような対応も内製化していくことを推奨します。

内製化の体制がとれない場合は、外部のシステムエンジニアリングサービスを活用し、スポットでエンジニアに作業支援してもらいながら、自社人材の知見を蓄積しつつ、将来的には内製化できるようにつなげていく方法も検討できるでしょう。

「内製化+外部委託」する領域:上図の右上

導入予定のMAソフトウェアのチャットボットは、オンラインスクリプト言語によるプログラミングでボットの動作を実装する必要があります。またAIエンジンを活用して顧客別にボット機能をカスタマイズすることもできます。いずれも自社内で取り組むには非常に「ITの難易度」が高いものです。一方でボットの機能は運用する中で「改修の頻度」が高くなることが見込まれます。技術面は外部ベンダーに頼っていく必要がありますが、AIやロボットによる自動化といったDXの要につながる領域こそ内製化を進めていくべきだと考えます。すべてを外部委託することなく、外部ベンダーの支援をもらいながら社内人材の知見を高めていく内製化を進めていくことがよいでしょう。

■おわりに

今回はDX推進にあたっての内製化をテーマに取り上げました。社内のリソース、IT化予算などの制約があるなかでも、うまく内製化、外部委託を切り分けしてDXを推進いただくヒントになればと思います。

次回は、ビジネスとITの橋渡し役であるビジネスアナリストについて取り上げたいと思います。

以上


via 合同会社 BSMi
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このコラムでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)に初めて関わる、またこれからDXに取り組む企業経営者やマネージャーの方々を対象に、DXに取り組む際のポイントについてお伝えしています。

新型コロナウイルス感染拡大という未曽有のパンデミックに見舞われた2020年が終わり、新たに2021年を迎えました。緊急事態宣言が発出された昨年4月以降、飲食業や観光業など多くの企業が深刻な経営状況に陥り、企業のデジタル化推進の動きも鈍るのではないかと考えていました。しかし実際はその逆で、昨年2020年に私が中小事業者のデジタル化を支援した件数は一昨年2019年と比較して1.5倍ほど増加しています。コロナ禍のこの時期を変革の機会ととらえた企業経営者が数多くいらっしゃったことを表しています。

さて昨年2020年8月にIPA(情報処理推進機構)がIT人材白書2020を公開しました。IT人材白書は、国内のIT人材の動向や実態を網羅的に調査しとりまとめた書籍です。2020年度版では、「DX取り組み企業やDXに対応する人材」について調査・分析されており、企業内のデジタル推進の現状を捉えるのに大変参考になりましたので、今回のコラムで一部紹介したいと思います。

IT人材白書サイトより引用


■DX推進企業における内製化状況 ~IT人材白書2020より~

白書では、DXに取り組んでいる企業と、そうでない企業に分けて取り組み事例が紹介されていますが、今回は「DX推進企業における内製化状況」を注目して取り上げたいと思います。


「IT人材白書2020」概要 P.13 ~IT業務の内製化とDXの取り組み~ より



IT業務の内製化状況を尋ねた結果をDX取り組み別に比較したものである。DXに取り組んでいる企業は、「企画・設計などの上流の内製化」を進めている割合が41.9%と高い。DXに取り組んでいない企業は内製化を「進めていない」割合が51.9%である。


この結果は何を表しているのでしょうか。DX推進は、ビジネスとデジタル(IT)の連携が不可欠です。昨今の変化のスピードが速い事業環境において、迅速にデジタルソリューション導入を推進するためには、内製化を抜きに取り組むことが難しいことを表しています。

しかし企業内の人材は限られるでしょうし、人材の獲得・育成に時間がかかるなかで、即座に内製化を実行に移せる企業は少ないのではないでしょうか。

そのような場合、DXの企画や設計(上のグラフの紫の部分)においては、外部の専門家(ビジネスアナリスト、ITコンサルタント)を活用してアドバイスをもらいながらDX推進するなかで自社内のデジタル人財育成を図っていく方法が考えられます。

では、プログラム工程を含めた全体工程(上のグラフの赤の部分)の内製化をどのように取り組んでいけばよいかを考えてみたいと思います。


■ DX推進の内製化/外部委託の切り分け

昨年、私がアドバイザーとして支援した士業法人の事例を紹介したいと思います。企業規模は小さいですが、会社の代表を中心にWEBマーケティング、社内IT化を積極的に進めてきた企業です。ホームページやメールを活用した集客に力を入れたいと考えており、マーケティングオートメーション(MA)※のソフトウェア導入を検討していました。

※マーケティングオートメーション(MA):ホームページやメール、SNSといったデジタルマーケティング業務を自動化することで業務効率化、生産性向上を図るソフトウェア、サービスのこと

これまで自社ホームページのコンテンツ企画、編集、アクセス分析といった運用は自社内のスタッフで対応してきましたが、ホームページサーバ構築や社内ITの保守運用全般はすべて外部ベンダーに委託していました。もちろん導入検討中のMAの知見のある人材も社内にいないため、これまで付き合いのあった外部ベンダーにMAソフトウェアの導入、運用の提案を依頼しました。しかしソフトウェア導入支援にかかるコスト、運用コストが割高で導入の判断には至りませんでした。

この時代、デジタルを積極的に活用しなければ市場競争に負けてしまいます。代表とも会話し内製化を検討することにしました。

従来のような社内ITを外部ベンダーに丸投げする状態では、コストの問題のみならず、マーケティング施策のスピード感、柔軟性が薄れてしまうことを代表も理解されていました。

限られた社内リソースで内製化を進めるため、外部ベンダーに任せる範囲、自社で内製化を進める範囲を切り分けることで実現しやすく効果の高い内製化体制を作ることを目指しました。先ずはこれを切り分けるために「IT技術の難易度」と「ビジネスの変化による改修頻度」の2つの軸から方針を検討してみることにしました。

「外部委託」する領域:上図の右下

導入予定のMAソフトウェアでメールマーケティングの自動化を実現するためには、顧客の氏名やメールアドレス情報を導入済みの顧客管理システムから取得し、MAソフトウェアと連携させる必要がありました。「IT技術の難易度」が高い作業で、自社内でこれを実現することは難しく、またシステム連携を対応した後はめったに変更が発生しないため「改修頻度」は低いと考えました。そこでこの対応は外部ベンダーに「外部委託」とすることにしました。

「内製化」を目指す領域:上図の左上

MAはマーケティングの自動化ツールですが、見込み客に対してどのような条件で情報の発信、紹介を行っていくかのジャーニー(シナリオ)の作成、顧客の動向把握のためのレポートを作成、といった設定作業が伴います。これらは運用を重ねるなかで頻繁に調整を加えていく地道な作業が必要です。「IT難易度」は低く、「改修の頻度」が高くなるこのような対応は、初めのうちは習得に時間がかかりますが、極力自社で内製化することでDX推進につながる重要な領域となりえます。

「内製化」を目指す領域:上図の左下

MAの導入準備には、ホームページ上にチャットボットの設置、マーケティング分析用タグの設置、といった対応もあります。「IT難易度」は低く、また一度設置するのみの作業で「改修の頻度」も低いことから、外部委託したほうが早い、という考え方もあります。しかしソフトウェアの理解を深めていくためには、このような対応も内製化していくことを推奨します。

内製化の体制がとれない場合は、外部のシステムエンジニアリングサービスを活用し、スポットでエンジニアに作業支援してもらいながら、自社人材の知見を蓄積しつつ、将来的には内製化できるようにつなげていく方法も検討できるでしょう。

「内製化+外部委託」する領域:上図の右上

導入予定のMAソフトウェアのチャットボットは、オンラインスクリプト言語によるプログラミングでボットの動作を実装する必要があります。またAIエンジンを活用して顧客別にボット機能をカスタマイズすることもできます。いずれも自社内で取り組むには非常に「ITの難易度」が高いものです。一方でボットの機能は運用する中で「改修の頻度」が高くなることが見込まれます。技術面は外部ベンダーに頼っていく必要がありますが、AIやロボットによる自動化といったDXの要につながる領域こそ内製化を進めていくべきだと考えます。すべてを外部委託することなく、外部ベンダーの支援をもらいながら社内人材の知見を高めていく内製化を進めていくことがよいでしょう。

■おわりに

今回はDX推進にあたっての内製化をテーマに取り上げました。社内のリソース、IT化予算などの制約があるなかでも、うまく内製化、外部委託を切り分けしてDXを推進いただくヒントになればと思います。

次回は、ビジネスとITの橋渡し役であるビジネスアナリストについて取り上げたいと思います。

以上


via 合同会社 BSMi
Your own website,
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