昨年の秋から、複数の在日コリアンの相続人調査の仕事をやっていて、今日で一段落ついた。その仕事で「朝鮮籍」の方とお話する機会があった。
そもそも、「朝鮮籍」とは何か、という説明をする場合には、少々、日本の近現代史の説明をする必要がある。1910年、日本が大韓帝国を併合した結果、大韓帝国の国民は「日本国籍」を取得したが、日本政府は旧大韓帝国国民については、日本の戸籍とは別に「朝鮮戸籍」を編製した。
1945年、日本が敗戦したことによって、朝鮮半島は事実上日本から独立したが、朝鮮半島がアメリカ、ソ連に分断されて支配下に置かれ、ただちに独立国家が成立しなかったため、朝鮮戸籍の記載者も当面は日本国籍を喪失しなかった。しかし、1947年の外国人登録令により、日本国内に居住する朝鮮戸籍の記載者は、国籍欄に「朝鮮」と記載され(当時、韓国、北朝鮮ともに建国していない。)、事実上外国人と扱われることになった。
1952年、サンフランシスコ条約により、日本が正式に朝鮮半島、台湾等の植民地の支配権を放棄した際に、日本政府は、朝鮮戸籍の記載者の日本国籍を喪失させたが、当時は朝鮮戦争が継続中であり、また、日本は韓国との国交も樹立していなかったため、朝鮮戸籍の記載者を韓国、北朝鮮の国籍保有者として扱うこともせず、便宜上の記載であった朝鮮籍が続くことになった。その後、現在も、韓国や日本の国籍を取得せずに、朝鮮籍の方が相当数存在している。なお、日本政府は、北朝鮮を国家承認していないため、法律上、朝鮮籍は、北朝鮮国籍ではない。
韓国籍の方が死亡した場合は、韓国民法の相続法が適用されることになっているが、朝鮮籍の方が死亡した場合には、死亡した方の家族関係、日常生活の状況、本国との交流の状況などを総合的に判断して、韓国と北朝鮮のどちらの民法を適用するのが適切か、個別に判断することになる。
話は戻るが、朝鮮籍の方を含む、在日コリアンの方の相続について、年配の方の話を聞くと、戦前・戦後の日本と朝鮮半島との歴史の中で、一人の人間として生きてこられた経験を知ることができ、やや不謹慎ながら、知的好奇心を満たす話を聞くことができて面白かった。せっかく韓国語を勉強していることもあり、これからも在日コリアン、韓国人に関係する事件は積極的に受任していきたい。