手塚治虫の漫画が好きです

ドストエフスキーが好きです

手塚版の『罪と罰』を初めて読んだのは中学生の時だったと思います。

中学生の頃の私は手塚治虫が嫌いでした 彼特有のヒューマニズムがどうにも偽善に感じられて馴染めなかったのです

ですから当時殆ど手塚を読んでなかったのですが なぜかこれだけ読みました
(題名に惹かれたのか主人公のラスコルニコフが斧を構えた表紙に惹かれたのか今はもう分かりません)


当時すごくショックを受けた事を覚えています
ドストエフスキーをまだ読んだ事なかったのでしばらくの間『罪と罰』はこういう話だと思っていました。


後日原作を読んで分かったのですが、この長大な話の殆どのエピソードを入れつつ後半をオリジナルな話にしてるんですね

これが本当に凄いと思いました。

一番の違いはラスコルニコフと合わせ鏡の存在のニヒリスト、スビドリガイロフを革命家として描いている点でしょう。(ただこれはこれで合わせ鏡の存在として描かれています)


これは小説と漫画というジャンルの表現の違いもあったでしょうね
あくまでも登場人物達の心の動きを追い続けた小説とたった一枚の絵で世界を描こうとした漫画の違いです


手塚版ではラスト、ロシア革命らしきものが起こります ラスコルニコフが広場で大声で自分の罪を告白するのを誰も聞いていません

そして最後、瓦礫の山となり誰もいない銃声だけが聞こえる街の道を自首するために歩くラスコルニコフの後ろ姿で終わっています。

このラストシーンの一枚は無数ある手塚漫画においてでさえ最高の一枚になりうる可能性の一枚だと思います


この一枚からいろいろ深読みができそうです

〈 手塚はその後の学生運動の激化と崩壊を予見していた。〉


〈チャップリンの台詞「一人を殺せは犯罪だが100人殺せば英雄だ」を描いた〉


ただ自分には、これはその後苦難な道を開拓しようと歩み続けた手塚さん自身の後ろ姿に見えて仕方がありません。