ジェジュンの出現は継母をひどく混乱させた。
特に、その美しさに怯んでいるのが分かる。感情を抑えつつ、燃え上がる怒りを秘めたなんとも言えない危険な香りが、さらにジェジュンを輝かせる。
美貌と小賢しさを武器に渡り歩いてきた継母は、ここに来て最強のライバルを目にして戸惑っているようだ。このまま大人しくしているはずがない、それを側にいる俺が一番感じている。
[ユノ、貴方は私の味方よね?]
高飛車な言い方も慣れてきた。
[もちろんです、私は主人に仕えるのが任務ですから]
[そう、じゃあ目障りなあの子を何とかしてくれない?少々手荒な真似をしても構わないわ。私の前から消して欲しいのよ]
寄りにもよって俺を選ぶとは、見る目のない人だ。
立ち上がると俺の側に来て片手だけを首に回す。
[欲しいものは何でもあげるわ、何でもね]
意味深な台詞も俺には無意味だ。けど、ジェジュンの為に演技をしよう。
[何でも・・ですか?]
[ええ]
[貴女が欲しいと言っても?]
唇を近づけて寸前で止める。期待外れだったのか、あからさまに落胆する継母。
[あの子さえ消えれば、貴方は怖いものがなくなるわ。何でも手に入る、そう約束する]
僅かに残るプライド纏いながら、俺から離れる。
[必ずやり遂げて]
継母の命令のお陰で、俺はジェジュンに近づけるようになった。チャンスを得るために、しばらく警護する体で見張るように指示が出た。【でも、時々は顔を出しなさい】報告は細かくね、なんて釘を刺すのも忘れなかったけど。
[それ、使えるね]
ジェジュンが楽しそうに言う。
[自ら墓穴を掘る・・なんて愚かなんだ。せっかくだから、彼女を大スターにしてあげないとね。光と影を一度に体験するって最高じゃない?]
ジェジュンは、俺が思う数段上をいく賢さを持っていた。何年もの間、隠された存在であった中でやるべきことを理解していたのだと思う。知識も身のこなしも、あらゆる必要なものを貪欲に学んできたのだろう。そして、この計画も。
まずは自分が世間に知られる必要がある。それを実行する為に、あえてマスコミの前に見え隠れするようにした。父親の取材場所に見つからないように、いやちゃんと計算された場所で顔を出したり、会合の際には偶然装ってそこにいたり・・とにかく、父親の取材に来ている記者たちの目に止まった。度々現れる美しい子は誰なんだ?と。マスコミの写真の中にわざと映り込み、それが世間に出回ると自然に注目が集まるようになった。貪欲な父親は、このチャンスを逃さない。人気が出たジェジュンを実は息子だと公表する事にした。あんなに隠し通して来たのに、今度は自分の人に取りの為に表に出す。勝手すぎる行動もジェジュンには好都合だった。
[長い間、彼を表に出すことはしませんでした。とても大切に、そう出来れば私のような仕事には就かせたくなかったから・・穏やかに幸せな生活を送って欲しいと願っておりましたから]
自分が国政に出るために邪魔な息子を排除した、それが真実なのに綺麗事を転嫁するのも政治家らしい嘘だ。
[私は父を尊敬しております。出来れば父の跡を継ぎたいと考えております]
眩しい程のフラッシュの中、ジェジュンは最高の笑顔を見せる。舞台の幕は上がった、これからが始まりだ。
父親は掌を返すようにジェジュンを側に置きたがり、マスコミの前では常に良い父親を演じ続けた。その人気はバク上がりし、もはやジェジュンなしで選挙に出る選択肢はなくなった。
それ横目に見ていた継母の焦りはピークを迎え、俺を呼び出した。
[このままでは貴方の欲しいものも手に入らなくなるわよ?一刻も早く、あの子を消しなさい]
[あの子・・?]
[ジェジュンよ!傍にいて、まさか情でも湧いてきた?あの子は邪魔なの!主人も利用だけして捨てるつもりよ、ならジェジュンの名誉のためにも今のうちに消えた方がいいでしょ?]
[名誉のためとは?]
[利用されて捨てられるより、悲劇のヒロインで消えたほうがジェジュンの為って事よ]
[でも、本当に父親である先生もジェジュンを利用するつもりですか?少なくとも親の愛情はあるかと]
[ふんっ!あるわけないわよ、ならなぜ今まで放置していたの?あの人は自分のことしか考えていないの。いずれ総理大臣になる、その為には家族でも切り捨てるつもりよ]
[ジェジュンさんが気の毒ですね]
[あら、あの貴方も美しさにやられたのかしら?]
[いえ、私は奥様が一番美しく思います]
[ふふっ・・]
国会議員への選挙表明の記者会見は、ホテルで開かれた。人混みに紛れて決行するチャンスだと継母らいきり立ち、俺に今日だと命令した。
ジェジュンは記者達から少し離れた場所で、支持者たちに混じって会見を見ていた。俺は隣に立ちチャンスを待つ。継母は壇上の脇で夫を見守る妻を演じている。すべては整った。
[それでは、これまでの先生のご活躍をご覧ください]
会場が暗くなると、ステージには画像が流れ始める。
【あの子を消して】
ざわざわとし始める場内。
【もちろん主人も使い捨てのつもりよ、ジェジュンに愛情なんて欠片もないわ。現に今まで一度も会ってなかったでしょう?全寮制の学校にいれるなんて言って、邪魔者を追い払ったのよ。さあ、すぐにジェジュンを消して】
少しずつクローズアップされていく姿・・そして、継母の顔がアップになった。どぎつい赤い唇が俺を誘う。もちろん俺の姿は見えないようにしてある、その声もね。
会場のざわめきが頂点に達した時、明るくなった。悲鳴とともに倒れた継母と、青ざめる父親。この映像は全国に一斉に流れた。
父親は議員を辞め、継母は逮捕された。証拠を提出し、加担しなかった俺は罪に問われる事はなかった。
ジェジュンは家を出た。何の未練もなく。そして、もちろん俺はその隣にいる。
[どこに行く?]
とても楽しそうにジェジュンが笑う。
[ジェジュンとなら、どこへでも行くよ]
しばらくしてジェジュンの元に手紙が届いた。
弁護士からのそれは父親が、税金対策に俺の名前を使っていた銀行口座の案内。
権利は成人になったジェジュンにあるらしい。
[ふふっ]
ジェジュンが俺を見て笑う。
[困った人を助ける探偵でもする?]
[いいね]
俺はジェジュンを抱き寄せた。
正直、何もいらない。ようやく抱きしめた想いと共に生きていければ。
[ユノは俺が好きなの?]
その答えはゆっくり教えてあげるよ・・✨
おはようございます✨
2話では無理があります(^o^;
ヒルナンデス?録画しなくちゃ!
今日も元気に、いってらっしゃい(=^・^=)*/*☆✨♥