旅行から帰って来て、ユノは自分のアパートに戻った。仮住まいが火事になった事で、ばあちゃんの家に危害が及ぶ事を恐れたらしい。それに仮住まいまで調べ上げた以上、どこに移動しても同じだと俺達が一番解っていた。
ユノがいなくなってすぐに、俺は本格的に調査を開始した。時間がないという焦りもあった。ユノが狙われている今、一刻も早く核に到達して攻撃しないといけない。そこを破壊する事が全てを明らかにする唯一の方法だ。迷っている時間はない、ユノに何かある前にそこに行かなければ。
警察の動きは異常だった。
悪徳業者を追求するより、そこへ侵入しているハッカーを見つけ出すのが最大任務だと命が出ている。本末転倒じゃないか?何度も上に抗議したけど、さらに上からの指示だと取り合ってくれない。ハッカーを潰した所で悪の組織は痛手を受けない、それどころか安心して仕事ができるようになる。おかしくないか?警察幹部が関わっているというのは、どこかで信じられずにいたが、ここに来て本当なのかもと思い始めている。俺の仮住まいも総務に届けてはいたが、他の者には伝えていない。知り得るとしたら内部からしかあり得ない。決まりだ。
[チョン君、これは本部からの見舞金だ]
[何ですか?]
[火事になって色々困っているだろう?見舞金が出ているから、何かの足しにするといい]
この人は何も知らないのだろう、けど俺には嫌悪感しかない。
[それは、どこかに寄付してください。俺はもともと何も持たない人間なので、特に必要なものはありません]
邪魔なものは壊し、したり顔で見舞金を出すなんて腐っているにも程がある。その仏面をぶっ壊してやる。誰なんだ?本丸にいるのは・・。
セキュリティが甘すぎる。次々と入れる事がおかしい、これは罠だ。普通のハッカーなら自分の技術に酔いしれる所かもしれない。けど、俺には解る。これは罠だ。どんどん誘導して行って、抜けられない場所へ追い込んでから正体を暴こうとしている。
[チッ!]
相手もなかなかの技術者を送り込んだらしい。パソコンの電源切る。しばらくこの回路は触らないのが良さそうだ。別の方法を探るしかない。時間がかかりすぎるな・・どうすればいい?打つ手に悩んでいると、携帯に久々にユノからの着信があった。
【夕食を一緒にどうかな?】もちろん迷わずに承諾した。正直、ユノと会いたいと心から思っていたから。
[ジェジュンは俺よりパソコンに詳しいと思う。だから託したいと思うけど、同時に不安もある。今もなお悩んでいる。どうすべきかを]
休暇を終えて警察に戻り、内部の状況を目の当たりにしているであろうユノ。リアルな危険も感じているはずだ。
[ITが俺の仕事だよ?常に危険はあるけど、ルールもある。踏んではいけない線に気をつければ危険は回避できる]
[本当か?]
本当かと聞かれたら、それは嘘だと答えるべきかもしれない。今やこの世界に限界はない、次から次へと突破口は開発されている。いくら天才と言われても、AIの技術には負ける日が来るだろう。今もすでに危うい空気は漂っている。業界でも消された人間は何人もいる。少しばかりの才能が、正体が明かされない唯一の防壁だ。油断すれば簡単に崩れてしまうだろう。
[ユノに嘘はつかないよ]
満面の笑みで返すと、安心したようにユノも笑う。
[パスワードをジェジュンに渡すよ]
まさか?
[これが核心を突く最後の手段だ、いや、これだけが正解かもしれない]
これを手にしたら、俺は本当に戻れなくなる。しかも自国で作業するのも危険だろう。
[解った、しばらく姿を消すよ。すべてを調べ上げたら連絡する]
存在そのものを消すしかない。そこからだ。
[会えなくなるのか?]
躊躇うユノに俺は微笑む。
[また会えるよ、きっとその時こそは素直に言える気がする]
ユノの目が光る。
[今じゃダメなのか?]
俺は頷く。
[うん、今じゃない]
ジェジュンは消えた。
ばあちゃんが言うには、成長の為に世界を旅してくると。何を甘えたことを言ってるんだと思いつつ、ジェジュンなら何かを成し遂げる力がある気がすると、弁当を持たせて見送ったよと悲しげに笑っていた。
[ちゃんと帰ってきますよ]
俺がそう言うと、ばあちゃんは豪快に笑った。
[当たり前だろう!]
ジェジュンが今、どこにいるのか俺には分からない。けど、きっと大丈夫だと信じている。俺は警察内部の動きを見張っているし、何かあれば邪魔も出来る。援護射撃にしては弱いかもしれないが、俺はジェジュンと共に戦っているつもりだ。
ひとりじゃない、それを知っているよな?
俺達はいつも共にあると・・。
おはようございます✨
韓国ドラマ風も飽きてきましたね?はい、ちゃんと早めに終わります(^o^;
頑張ります!
今日も元気に、いってらっしゃい(=^・^=)*/*☆✨♥