何とかしてユノからパスワードを聞き出したい。そうすればユノを危険から守る事にもなる。焦るけど、それを急げば俺の正体がバレてしまう。今は、自分のを落ち着かせるのが大事だ。


でも、ユノがいる生活はどうやっても落ち着かない。ふと隣を見ればそこにいて、いつも一人でマイペースに生きてきた俺には戸惑いしかない。それにユノは、刑事にしてはプライベートが今ひとつしっかりしていなくて、朝も起こさないと寝坊するし、寝癖をつけたまま出勤しようとする。服に関しては全く意に介せずで、昨日着た服をまた着て出かけようとするから慌てて止める。あまり多くの服を持って来なかったユノに、俺の服を用意して着るように促す。いいの?って驚いた顔をしてから、少し小さめの服を着て笑う。【すごくいい匂いがする】そんな事はどうでもいいから、身なりだけは整えないとね。朝からユノの世話をするのが俺の日課になった。


ユノが出掛けると、早速俺は隠してあるパソコンを出して調べ始める。ユノから聞いた話を総合すると、間違いなく警察幹部が悪の根源と繋がっている。それが犯罪組織解明の為なのか、利を得る手段なのか判断するにはまだ早い。ただ怪しいのは、パスワードがあまりにも完璧なセキリュティに守られていること。俺でも入れない場所は最高機密エリアしかあり得ない。何としても突破しなくていけない。どうやったら聞き出せるだろうか?ユノから、そのパスワードの秘密を。


[気づかれていると思う] 

帰ってきたユノが、怖い顔で話し始める。ずっと誰かに監視されている。ここに帰ってくるのにも逆の方向のバスに乗り、わざわざ遠回りをして何とか逃げてきたと。

[ここにいては迷惑をかけてしまう、他の所へ移るよ]

止めたい所だけど、俺もバレてはいけない任務がある。それに、ばあちゃんにも危害が及ぶのは何があっても避けたいと思う。

[行く当てはあるの?]

そう聞くと、困ったなって顔で答える。

[とりあえず、ビジネスホテルを転々としするつもりだ]

[逆に危険じゃない?むしろ一定の場所で構えていた方が、立ち向かえる気がする]

[一定の場所?]

[敵を欺く為に、そこに住んでいると見せかけるのが一番だよ。実際はいなくてもね]

[なるほど]


ジェジュンの提案で、目立たない風の空き家を借りた。捨ててあったパソコンを設置し、いかにも拠点のようなセッティングをして毎日必ずそこに帰るふりをした。実際には裏口から出てジェジュンの家に帰っていたが、携帯で電気のスイッチをコントロールして住んでいる体を作り上げて。もちろん監視カメラをつけて様子を窺う。どんなやつが俺を付けているのか?そこからだ。

動きはすぐにあった。俺が空き家に入るとすぐに、ふたつの影が玄関前に現れた。残念ながら倉庫を改造した空き家は外から中が見えない。何度か確認してから、その影は消えた。今日のところは俺の居場所の確認ってとこだろう。それに、相手もまだ完全に俺だと確信を持ってはいないだろう。もしかしたら、仲間が一人でやった事かもしれないとも考えられる。けど、接点のあった俺を疑うのは当然でもある。


[ユノ、俺に何かできない?]

ジェジュンがそんな事を言い出して驚く。

[いや、これは警察内部の問題だ。外部の人間を巻き込むわけにはいかない]

少し考えてから、ジェジュンかまた言う。

[こう見えて、俺はパソコンが得意だよ。学生の頃プログラミングを習ったから結構使える。ユノが調べたい事、手伝えるかもしれない]

でも、このセキュリティは素人にはむりだ。すぐに特定されてバレてしまう。あの精通した仲間でさえ、すぐに特定されて消されてしまったのだから。

[気持ちはありがたいけど、危険すぎるよ。それにプロでも難しい仕事だ]

[ユノは一人でやれるの?]

[俺はそこまで得意じゃない、別の仲間を探すつもりだ]

ふふっと微笑むジェジュン。

[別の仲間はここいるよ?]

絶対にダメだ、ジェジュンを引き込むなんて俺には出来ない。

[俺も誰かの役に立つ事を証明させてくれない?今のままだと生きている意味さえ見失うから]

嘘っぽい台詞だと思う。でも、その瞳の奥にある何かに気づく。ジェジュンは、何かを知っているのではないか?そう考えると質問の内容も素人っぽくなかった。核心の周りを撫でるような、なんて言うか絶妙なフリは、時々俺をハッとさせる事があった。


[ジェジュン、正直に答えてほしい。何か知っているのか?]

ユノからの問いかけに、先急いでしまったことを少し後悔する。こんなにダイレクトに聞かれるほど、俺は焦ってしまったのか?

[ユノから話を聞いて、俺も市民として何かしたいと思ったんだ。幸いにもパソコンは少しなら操作できるし、気づかれないようにする術も調べることは出来る。ねえ忘れてる?俺はこれでもIT企業の社員だよ]

[ああ、そうだったね・・リモートワークを出来るのもそっち系ならではだよな]

[手伝える?]

やっぱり考え込むユノ。それでもため息をついてから、申し訳なさそうに答えた。

[正直助かるよ、仲間を探すにも危険を知っていて誘い込むのを躊躇していた。けどジェジュンにそれをさせるのも・・]

[俺も正義の一員になりたいんだ、ユノだけがヒーローとかズルくない?]

ユノが手を伸ばすのをぼんやり眺めていた。まさか、ハグをされるなんて想像もしていなくて・・。


俺を抱きしめながら、ユノが囁く。

[ごめん・・こんな仕事をしていなかったら、もっと違った形でジェジュンと共に過ごせたのに・・]

ユノの背中に手を回す。


[俺は、どんな形でもユノといられて楽しいよ]

心からそう感じていた。

ユノの持つパスワードよりも、もっと欲しいものがある。それに気づいたのはそう、かなり前からたったと・・。



おはようございます✨

今日も元気に、いってらっしゃい(=^・^=)*⁠/⁠*☆✨♥