世の中は矛盾で溢れている。
平和に暮らしている人達を突然襲う事件は、理不尽極まりない。そんな悪を無くすために、この仕事を選んだ。けど、慣れというのは恐ろしい。あんなに強く持っていた正義への思いが薄れていく。そう、あまりにも事件が多すぎるんだ。自分の利だけを追求して誰かが傷つく事など気にしない、そんな犯罪者が増えた今、一掃するのは不可能に近い。それと共に俺の決意さえも揺らいでいく。
[悪徳業者を潰すのは、むしろ善じゃないですか?]
俺の発言に、みんなが反論する。
[ハッカーは間違いなく犯罪だ!悪徳業者だろうが、勝手に侵入して会社を潰すなんて、その楽しみを知ったら次は何をする?今のうちに芽を摘んでおかないと、国家を揺るがす事態になるぞ}
小さな犯罪には適当なのに、どう考えても正義だと思われる行為は認められない。それどころか妄想で国家問題にまで仕立てて行く恐ろしさ。人の妄想ほど怖いものはない、それがいつしかリアルだと思い込んでしまう。
[でも、今のところ弱者が救われています]
[あのな、正義は俺等の仕事だ。他のやつがなる必要はない]
まったく意味不明だ。警察というのは特権階級か?勘違いにも程がある。
[じゃあ、ユノは認めるのか?この犯罪を]
正直悪くないと思う。その人が出来る力で悪と戦うことこそ、勇気だと思うから。でもその反面、認めてしまったら、この仕事に就いた意味をなくしてしまう。
[いいえ、犯罪は認めません]
この世の正義とは何か?
俺は今、大事なものを見失いつつある気がする。
[ジェジュンは、どう思う?]
ユノが詳しくは言えないが、今関わっている事件についてと話し始める。
[例えばさ、昔から貧しい庶民を救うヒーローっていたじゃないか?もちろん金持ちからお金を盗んで与えるのは犯罪だけど、それを悪と呼べるのか?]
ピンと来た。俺のことだ。
[ユノは、どう思うの?]
ここは、答えないのがベター。
[俺は・・]
悩んだ顔をしながら、それでもキッパリと答える。
[心情的には認めたい。けど任務として、犯罪者を逮捕するまで追い詰める]
決定的な未来予想図だね・・。
[けど、悪だとは思っていない。俺がもし天才ハッカーだったら、同じことをしたかもしれない。実際に救われた人達から嘆願書も出ている。むしろ神扱いだよ。それが警察をさらに意固地にさせている。犯罪者は神じゃないってね]
ユノは警察官の格好をしていないせいか、どう見ても刑事には見えない。今日も薄緑のポロシャツにチノパンという軽装で、それで仕事に行っていいの?と思う。むしろ引きこもりの俺のほうが、マシな格好をしている。
[俺は・・思い通りに生きるのが一番だと思う]
ジェジュンの答えが意外すぎて驚く。
[それぞれが思う通りに生きればいいんじゃない?その人が、それをやるべきだと思うなら後悔はしないでしょ?]
おおっ!と感嘆の声を上げそうになる。人生最高値の答えじゃないか?悟り?
[悩むこともあるかもしれないけど、後悔しない生き方を目指すのは悪くない。きっと]
むしろ、自分に言い聞かせるように話す。ジェジュンといると教えられる事がある、それがとても新鮮で嬉しい。
[ユノを見ていると気持ちがいいんだ、いつも一生懸命で嘘がないでしょ?だから、一緒にいて安心する。この人になら俺の人生預けられるかもって]
えっ、それって・・いや、本当に?
[あ・・ジェジュン、俺でいいの?]
[えっ?]
[その・・人生、預けてくれるって・・約束するよ!幸せにする!!]
まさか、間違えたか?
目をパチパチさせて俺を見るジェジュンに、顔が熱くなる。
[ふふっ、例えだよ。ユノのような人になら、犯人も捕まっても後悔しないだろうなって]
[あ・・そっちかあ〜だよな、ははっ!]
まいったな。マジで俺、プロポーズするところだった・・。
ユノに捕まるなら、それでもいいと思える。
俺は自分のしていることに後悔なんてないし、むしろもっと多くの人を救いたいと思っている。与えられた才能は俺だけのものじゃない。誰かのために使ってこそ価値がある。
でもね・・俺が普通に生きている人だったら、ユノと楽しい未来を描けたのかもしれない。ユノが俺を犯罪者だと知った時、すべては終わってしまうから夢なんて見る事はない、見ちゃいけない。
でもね、期待はしてしまう。
ユノと共に、この先の長い人生を生きていけるんじゃないかなんて。
もう戻れない道へ立つ俺は、悲しいほどに現実を知っているから・・。
おはようございます✨
地震、大丈夫ですか!?復興の道を進んでいる今、被害がないことを祈ります。
どうか、お気をつけください。
今日も元気に、いってらっしゃい(=^・^=)*/*☆✨♥