今日はサボろうと決めた。学校へ向かう、いつもの道を外れて反対方向へと歩き出す。時々同じ学校の生徒が、不思議そうな顔で見るけど気にしない。真面目に勉強するだけが人生じゃない!俺はそう思う。たまには道を外す勇気も必要だ。特に優等生キャラの俺としてはね。意外性こそが人の深みを知らしめると、俺は信じる。


行き先は決めずに電車に乗り込んだ。名札は外し、リュックはロッカーに預けた。携帯と財布だけをポケットに突っ込んで、1日だけの冒険に出る。一応担任にはLINEで連絡済みだ。【学校に向かう途中で腹が痛くなり、病院に行きます。念の為休ませていただきます】と。家にはいませんよのアピールも大事だ。連絡されると面倒だからね。


電車は俺の住む街から離れていく。日常から解放されるのは実に爽快で、同時に不安もつきまとう。知らない場所へ行くのは冒険心よりも心配が増す。けど、せっかくのチャンスを見逃す手はない。今日一日で何かを手にしたい。淡々と過ごす毎日に喝を入れる刺激が。

電車の中はリーマンと学生だけ。みんな迷いもなく目的地に向かっているのだろう、多分。ひたすら携帯を手にしている人や、目を閉じて寝ている人、友達との話が止まらない学生。間違いなく変わらない日常だ。そこに何の疑問も持たずに向かう居場所。なぜ俺は今日を選んだんだろう?昨日でも明日でも良かったのに。通学途中に、ふと思った。今日だと。


いくつかの駅を過ぎると、満員だった電車が空いてくる。リーマンも学生も降りると、ようやく息がつける余裕が出てきた。ガラガラになった椅子に座ると、斜め向かいに学生がひとりだけ座っているのを見つけた。ここまで来ると学生の姿はほぼなくて、俺と彼ふたりだけ。この先に学校はない。あるのは終点に続く海沿いの駅だけ。まさか俺と同じサボり組?何となく興味が湧いてよく見ると、彼はとても可愛い顔をしていた。白い肌と、見るものを吸い込んでしまいそうな大きな黒い瞳が印象的な高校生だった。てことは、俺とそう変わらない年だ。どこへ行くんだろう?


終点のふたつ手前で彼は降りた。引きつけられるように俺も降りる。彼は前だけを見て、真っ直ぐに進んでいく。知らない土地ではないのか、なんの迷いもなく。

彼の姿だけを追ってきたせいか、全然気づかなかった。いつの間にか、目の前には広くてキラキラ輝く青い世界が広がっていた。

[うわあ〜]

思わず漏れる感嘆の声、海を見るのは久しぶりだ。やっぱり今日で正解だった、空も眩しいほどに晴天だ。で、彼は?海に気を取られて見失ってしまった。どこかにいるはず・・。


[サボり?]

背後から聞こえた声に慌てて振り向く。彼がそこに立っていた。

[あ・・]

[行くとこなくて付いてきたの?]

鋭い・・。

[うん、電車で見かけて何となく]

[ふ〜ん]

さほど興味なさそうな返事をすると、砂浜に降りていく彼を慌てて追いかける。手慣れた感じでリュックからビニールシートを出すと、砂の上に広げる。そしてリュックを放り投げるとシートの上に寝転んだ。太陽の光が彼の顔を照らして、リゾート地の写真のように完璧な構図を造り上げる。

閉じていた目を開けると、寝転んだまま俺を見上げる。

[座っていいよ]

[あ・うん、ありがとう]

言葉に甘えて彼が寝転ぶ隣に座ると、波の音だけが聞こえてくる。

[寝転んで空を見て]

そう言われたら拒否もできない。彼の隣に寝転んでみる。無限の空に抱きしめられている感覚、砂の感触と波の音が自然の壮大さを感じさせてくれる。

[目を閉じると別世界だよ]

言われて目を閉じてみる。本当に別世界へ来たみたいだ。車の音も人の声も聞こえない。この広い大地の中で、波の音だけが俺の耳に届いてくる。何も考えない時間の体験はそう多くはない。けど、ここでは考える必要がなさそうだ。というか、すべてを忘れる。自然の偉大さには屈するしかない。


[どう?]

彼がいることさえ忘れていた。 

[最高]

俺の答えに【ふふっ】と満足そうに笑う。

[俺の避難場所]

[うん、解る気がする]


そのまま眠ってしまったようだ。気がつくと昼はとっくに過ぎていて、顔がヒリヒリする。日焼けしたらしい。気づけば彼の姿はなくて、俺は少し焦る。

[起きた?そろそろ弁当でも食べない?]

彼の手には2本のジンジャエール、そして1本を俺に差し出す。【出会いの記念に】そんな洒落たセリフと共に。

母さんが作ってくれた弁当を学校ではなく海で食べている。隣の彼もきっとそう、美味しそうな卵焼きは母親ならではの味がある。ジッと見つめていると、気づいた彼が俺に聞く。

[おかず、交換する?]

いつもと違う味は、いつもと違う景色に相応しい。彼の母さんも料理上手らしい。卵焼きも焦げ目を少しつけた鮭も絶妙な焼き具合だ。野菜炒め?もチャシュー入の抜群の味、本格的にご馳走になりたくなる。


弁当を食べてからも、しばらくそこで彼と話した。学校の様子、未来への不安、そして日常の退屈さを。

[なんかさ、みんな同じなんだなって思った]

彼の声に頷く。

[確かに]

[また会える?]

[うん、サボりじゃない時にね]

[もう、頑張らないと。受験だし]

[大学、どこ?]


違う大学を目指している俺達だけど、気持ちを共有できることに嬉しくなる。小さな疑問に押しつぶされそうになっていた昨日までとは違う。

[名前は?]

[ジェジュン]

[俺はユノ、次は俺が奢るね。ジンジャエール]

[あ〜うん、また会えるための約束にしよう]


同じ電車に乗り、家へと向かう。

学生が乗り込む頃の時間を選んだ。どんどん増えてくる学生服に、車内の空気も変わってくる。

途中の駅で俺は降りた。ジェジュンにまたねと挨拶をして。バイバイと小さく手を振るジェジュンは、女子のように可愛かった。


駅を出ると携帯が鳴る。

画面には、可愛いスタンプと楽しかったの文字。ジェジュンの性格が見えた気がして微笑む。

俺も最高にキュートなスタンプを・・買った。

アンパンマンがOK!と笑うスタンプを送ってから、間違えたかな?と思う。

足取りは軽い、明日からも楽しくなりそうだ。そんな気がした✨





おはようございます✨ 

毎日を頑張りしょう!刺激は、いっぱいあるはずですから(^o^)v

次の休日まで、ファイティン!!\(^o^)/


今日も元気に、いってらっしゃい(=^・^=)*⁠⁠/⁠*☆✨♥