[ちゃくら!]


ジェジュンがパタパタと走り出すから、僕は慌てて追いかける。お母さん同士が花見に行こう!って盛り上がって、川沿いに桜の木が並ぶ綺麗な場所に来ている。

駅を出ると人混みの中を進み、目の前に広がる桜並木の川沿いに出た。満員電車みたいに立ち並ぶ桜に、ジェジュンは大興奮して走り出す。

[ユノ君お願いね〜}

二人のお母さん達は、おしゃべりしながら歩いている。僕はジェジュンを追いかけるのが大変で、何とかその手を握る。


[ジェジュン、僕から離れたらダメだよ?]

こんな人混みで見失ったら捜せない、迷子になったジェジュンは泣いてしまうだろう。そう考えると心配で目が離せなくなる。

[ユノ、ちゃくらちれね〜]

僕の話よりピンク色の洪水に大喜びだ。

[ジェジュンは桜が好きなの?] 

[ちゃくら大ちゅき!]

ピョンピョン跳ねながら上を見上げている。それにしても人がすごい。お母さんから携帯を預かってきて良かった。【お昼の席が取れたら電話するね】って言われたけど、どこのお店もいっぱいだから時間がかかりそうだ。

[ユノ、ちゅき?]

ジェジュンの言葉は端的だから、僕はいつも必死に考える。多分、今の状況からすると桜の話だ。

[僕も桜は大好きだよ、春が来た!ってワクワクする]

[わく?]

[うん、楽しくなるって事だよ]

[ジュ、たのち!]

にこにこのジェジュンの手は握っているけど、小さな身体が潰れてしまいそうで人混みにいるのが怖くなる。時々大きな身体がぶつかってきて、転びそうになるジェジュンを抱き寄せる。危険かもしれない、安全な場所に避難しないと守れない!僕はキョロキョロ見渡すと、川沿いから少しズレた横道を見つける。ジェジュンを抱っこして移動すると、体力の限界が来る前に何とかたどり着く。


[ジェジュン、ここからの方が全体が見えて綺麗だよ]

多分ジェジュンも少し怖かったのかもしれない。僕の服をぎゅっと掴んで頷く。

[ここ、ちれいね〜]

僕を見上げてニコッと笑う。

[どこか痛くない?人がたくさんで、ぶつかっちゃったね]

[ジュ、いたない。ユノぎゅっ!ちたから]

ジェジュンは僕が守っているのに気づいていたみたいだ、すごく誇らしくて嬉しい。

[僕はジェジュンを守るよ、だって大切なんだからね]

[たい?]

ジェジュンが解るように説明しないとね。

[えっとね、ジェジュンがいつも抱いて寝ているクマさんみたいに、離しちゃいけない可愛い子って事だよ]

[くまちゃん!]

急に大好きなクマを思い出してニコニコになる。


[ジュ、ユノくまちゃん?]

お兄ちゃんみたいに真剣な目で質問されるけど、内容はまだ可愛い。

[クマさんよりも、もっと大切な存在だよ]

多分、言葉が難しすぎて伝わらないかも。でも気持ちだけは伝えないとね。

ジェジュンが僕にギュっとする。

[ジュ、ユノくまちゃん!]

ジェジュンは、僕のクマさんになってしまったみたいだ。僕もジェジュンを抱きしめる。

[僕の大切なクマさんだよ]


ニコニコのジェジュンを、もう一度抱き上げる。人混みの向こう側の桜が見えるように。

[ユノ、ちゃくらちれいね〜]

大満足のジェジュンに僕も嬉しくなる。桜を見ているよりジェジュンを見ている方が楽しいな、なんて思ってしまう。


携帯の音が鳴る。

【お昼食べましょう、席が取れたから来て】

それは偶然にも、その横道にあるカフェだった。探さなくて良さそうだね。


[ジェジュン、お腹すいたでしょ?]

まだ桜を眺めているジェジュンに声を掛けると、すぐに僕の手を握る。またあの人混みに行くのだと判断したらしい。

[ほら、あそこに赤いドアが見えるでしょ?お母さん達が待っているから行こう?]

[あちょ?]

[うん、近くて良かったね。パスタかな?ピザかも。ジェジュンは何が食べたい?]

う〜んと少し考えてから、元気に答える。

[あいちゅ!]

あ〜今日は少し暑いかもね・・。


[ご飯を食べてからアイスだね]

小さな手を握って歩きながら教えると、ジェジュンは僕を見上げて答える。

[ご飯食べて、あいちゅね]


にこにこのジェジュンと、それを見て笑顔になる僕。はらはらと舞い散る桜が、僕たちの頭に着地する。


桜の花びらを頭につけたジェジュンがピョンピョンと跳ねるのを、僕はやっぱり笑顔で見ていた。





おはようございます✨

桜の花が咲き誇る時間は短いですけど、だからこそ心残るのかもしれないですね(≧∇≦)

今年の春も出会えた事に感謝です☆


今日も元気に、いってらっしゃい(=^・^=)*⁠/⁠*☆✨♥