春になると、当然ながらテンションが上がる。どうしてかな?桜のピンク色のせい?毎日の時間の流れに変わりはないはずなのに、なぜかワクワクする。


スタバのバイトはイケメンの証、俺はそう思っている。そして、その争奪戦も凄まじい。面接も顔重視、カウンターの中にイケメンしかない事でそれは証明されている。そして俺は・・今日もスタバにコーヒーを買いに行く。

[いらっしゃいませ、お決まりですか?]

キラッキラのイケメンが俺に微笑む。バイト試験で落とされた俺にとっては憎むべき相手だが、モデル並みのスタイルと切れ長の目には納得させられる。

[今日のコーヒーは何ですか?]

[はい、今日はグアテマラです]

[シナモンを入れてください]

[かしこまりました、食事はよろしいですか?]

[じゃあ抹茶ドーナッツを店内で]

[かしこまりました、ありがとうございます]


俺は諦めきれずにカウンターを覗いている。キレ良く動くイケメンに、憧れ以外の何も無い。はあ〜俺も本当だったらあそこで・・いつもなら高すぎるから絶対に買わない抹茶ドーナッツをかじると、さらに侘しさがこみ上げる。結局俺は、本屋でバイトしている。今は希少価値の高い本屋は自暴自棄になって応募をしたバイト先、大学のバイト案内の中から見つけた。今日もこのあと向かう。スタバ店員の夢は叶えられなかった。


新作は必ず入ってくる。本なんて今やネットで買えるけど、リーマンが仕事帰りに寄るパターンが多い。昼間はシルバー層かな、大学教授をリタイアしたような、いかにもって感じの人が来店する。時々難しい単語で質問してくるので、授業中かと錯覚してしまう。まあ、これはこれで楽しいバイトだ。スタバみたいな華やかさはないけど、暇な時に本が読めるのは最高だ。主人は裏にいて、必要な時だけ顔を出す。俺は自分のペースで本を並べたり整理整頓をして、その時間を過ごしている。


[すみません、この本入りましたか?]

珍しく若い客だ、それもどこかで見たような。

[あれっ?]

先に気づいたのは相手、そして爽やかに微笑む。

[いつも、ご来店ありがとうございます]

俺は考える、こんなイケメンのいる場所は・・あっ!

[スタバの?}

[はい、すごく印象的で、毎回すぐに分かります]

[印象的?]

ふっ・・と、イケメンが笑う。

[こんなに可愛い人は、そうそういません・・あっ、すみません!お店には内緒で、こんな事を言ったらクビになりますね。みなさん誰もが癒やされる場所がモットーですから、特定のお客様に好意を持つのは禁止行為でした]

意外に話し好きのイケメンに面食らう。俺の憧れの場にいる敵視するべき相手だが、悪いやつではなさそうだ。

[俺も受けたんです、そこのバイト]

[えっ!?じゃあなぜここに?]

[落ちました]

[ええっ!?もしかして、面接は女性でした?]

[はい]

[あ〜なるほどね、嫉妬ですよ。貴方みたいな可愛い人が来たら、女子が脇役になってしまう。うん、解る気がする。来なくて良かったかも、お客様も嫉妬しますね、多分]

それは褒めているって事?でもさ、落ちた事実は変わらないけど。

[俺は良かったかも、ここで会えたから]

イケメンの思考はよく解らない。とりあえず彼の望む本を用意する。


[これ、すぐに読みたかったんですよ。ネットで届くのなんて待っていられない。やっぱり本屋さんは必要です!]

にこにこのイケメンに俺も微笑み返す、一応接客業のルールだ。

[・・・]

切れ長の目を見開いて、俺を見るイケメンに首を傾げる。

[何か?}

[ヤバっ・・]

[はい?]

[ま・毎日ここにいますか?]

[あ〜授業の関係で夕方からが多いですけど、時間は変わりますが毎日います]

[来てもいいですか?]

[え?]

[お・俺はチョン・ユンホです!大学2年で、スタバでバイトをしています]

いや、バイトは知ってるし・・てか、同じ年?

[キム・ジェジュン、俺も2年です]

[そうなんだ!?なんだか急に親近感が湧いてきた。それに、本屋さんでのバイトも憧れる。本が好きだから、本当に羨ましい]

[そうなの?]

[うん、かなり]


憧れのバイトを互いに取り違えた俺達。

スタバに似合いのイケメンユノと、ユノ曰く本屋に咲いた1輪の花の俺。不思議な出会いだと思うけど、会うべくして会った気もする。

時々はユノのイケメンぶりに嫉妬するし、逆にユノは俺が可愛すぎると右往左往する。意味不明な事もたくさんあるけど、新しい出会いに違いない。


桜が満開になる今、心も躍り始める。

何だか恋の予感もするけど、まだ分からない。俺達は出会ったばかりだから。


いつかまた、俺達のこの先の話が出来たらいいなと思ってる。付き合ったりしてるかな?それとも友達のまま?


あっそうそう、すごく前に、ばあちゃんに隣の芝生は青く見えるって聞いたことがある。自分の持っているものの大切さに気づかずに、隣の芝生に目が行く事だって。いつか気づけるかな?本当に大切なもの・・。


さあ、今日も頑張ろう!ピンク色の桜が応援してくれるから、ちゃんと笑顔で歩き出す。


憧れは、案外傍にある事を感じながら✨




おはようございます✨

春は大好きです\(^o^)/

心機一転、何もかもが新しくスタートする気がします。新鮮な心を失わず、謙虚さを改めて考える春。

頑張ります!


今日も元気に、いってらっしゃい(=^・^=)*⁠⁠/⁠*☆✨♥