目覚めると雪が降っていた。

もう春の足音が聞こえる季節なのに、窓の外には舞い降りる雪。裸のまま窓際に立つとブルッと震える身体、慌ててベッドの中に逆戻りする。

[冷たくなっている]

そう呟いて俺を抱きしめるユノは、あと数時間すれば他の人のものになる・・。


[結婚する]

ユノがそう言った時、俺はやっぱりなって思った。不確かな愛は未来へは続かない。いつかはこうなると、どこかで思っていた。

[だけど、ジェジュンとも別れない]

ふっ・・勝手すぎるね。

[卑怯だと思う、けど別れたくない]

俺も弱かったと思う、ユノに必要とされるだけで幸せだった。

ユノの結婚式の日も、春には珍しい雪が降っていた。降り注ぐ雪が着飾ったユノと奥さんを包んでいく、まるで俺の冷え切った心を知らせるように。


ホテルで会うようになったのは、俺がそれを望んだから。前と同じように部屋で愛し合うのは違うと思った。偽りの愛の残り香はいらない、自分の中でケジメをつける必要がある。 

ユノもそれでいいと言ったから結婚した後、俺達の逢瀬はホテルになった。


[毎週出張で、奥さん疑わない?]

ユノの腕に包まれながら聞くと、小さくため息をつく。

[付いていくと言われるよ]

[完全にアウトだね]

[ああ、そうだな]

俺は未だに解らない。なぜユノが結婚したのか?そして、なぜ今も俺に会うのか?

[ジェジュン]

[うん?]

[俺は愚か者か?愛する人がいるのに、違う人と結婚するなんて]

なぜ結婚するのか聞いたことはない、俺は世間に顔を上げて公表できる恋人ではないし、日陰の存在である事は認識している。高望みもしないつもりだ。

[人生に選択は必要だよ] 

きっといつか俺も結婚する、愛してはいない人と。

[俺達は、なぜ結ばれてはいけないんだ・・]

それはね、人間がこの世に生まれた時に決められたんだよ。


携帯のアラームが鳴る。

1度目のアラームを消して抱き合っていると2度目のアラーム、そして3度目でようやく身体を起こす。ふたりでバスルームに行き、笑いながら泡で遊び、また愛し合う。こんなに幸せな時間もまた泡のように消えていく。


身支度を整えると、ユノが先に部屋を出る。名残惜しそうに何度も俺を抱きしめてから、切ない瞳で微笑む。

[愛してるよ]


窓の外には季節外れの雪が降る。俺も雪だったらいいのにと思う。美しく舞い降りて、人の心に残像を刻んで消えていく。【バイバイ、ユノ】俺からそう告げて。


テーブルにひとつだけ残されたキーを手に取り、俺も部屋を出る。ここを出たら俺はまたひとり、強く生きていかなくてはいけない。愛される事は罪じゃない、そして愛することも。

肌に残した温もりは消えはしない、俺の心が求める限り・・きっと。


ユノが結婚して半年が過ぎた頃、社内に噂が立った、離婚したらしいと。ユノは何も言っていなかった。むしろ、少しの間会えなくなると言われていた。この1ヶ月はユノに連絡もしていない。そして急に湧き出た噂に落ち着かなくなる。

[どういう事?]

独り言がさらに心を揺らす。それでも自分から連絡することは控えた。ユノからの連絡を待つのが約束だったから。


すべてが当たり前に過ぎていく時間の中で、溺れそうになる時がある。情報過多の世の中で真実を知ることは難しい。ましてや人の心を読むなんて不可能だ。それが例え愛する人でも。今、俺は揺れている、離婚の噂が立ってからもユノからの連絡はない。俺もまた捨てられたのかもしれない・・。


それからさらに半年が過ぎた。それでも俺はユノのことを忘れたりしなかったし、また会えると信じていた。

突然の連絡は仕事中だった。

【ジェジュン、待たせてごめん】

久しぶりのLINEに涙が出そうになる。

【今夜、部屋に行ってもいいかな?】


ちゃんと片付けるのに半年は必要だったとユノが言う。そもそも論だよね?なぜ結婚したのか。

[ジェジュンを幸せにしたかった。自分が縛り付けておくことに、罪悪感を覚えて逃げる道を選んだ]

まったく意味不明だし、それは奥さんに失礼だよね?

[愛のない結婚を納得してくれる人が条件だったけど、やはり無理があったし俺の心が許せなかった}

当然だよ。

[あらゆる方面に詫びに言って、彼女には半年かけて理解してもらった。マンションは彼女に渡したよ。俺のもとに残ったのはローンだけだ]

[バカなの?]

話を聞いていた俺の第一声はそれ。ユノがポカンとしている。

[ったく、ユノの面倒見られるのは俺しかいないよ。バカすぎて]


ふたりで泣き笑いをしながら愛し合う。

バカな俺達は、何度も間違いを繰り返すだろう。誰かを傷つけ、自分が傷つきながら。

それでも・・。


[俺が守るよ]


互いにそう思えばいい。いつかどこか遠い世界で、俺達がひとつになるその日まで・・。





おはようございます✨

なんやねん!悶々とするてしょ!٩(๑`^´๑)۶

誰かを傷つけ、自分が傷つき、そして成長するしかないのかな・・難しいですね(^o^;)


今日も元気に、いってらっしゃい(=^・^=)*⁠⁠/⁠*☆✨♥