理佐side

 

急に部屋の扉が開いて、私達はとっさに離れる。

 

すると、

 

「あ、やっぱここにいたんや〜」

 

と、聞き覚えのあるふわふわした声が聞こえてきた。

 

私は扉の方を見ると、そこには小池先輩がカフェラテを片手に持って立っていた。

 

由「もうみぃちゃん!びっくりさせないでよ!」

 

美「あははっ、ごめん〜」

 

小池先輩は由依と同期で、私の高校の先輩でもあった。

 

高校生時代、部活終わりに二人でどこか食べに行ったり、休日にお出かけしたりするほど仲が良くて…

 

私が就職先に悩んでいるとき、私の会社きなよ!って紹介してくれたのも小池先輩。

 

会社に入って数日立ったとき、小池先輩が仲良い子を紹介してくれた。

 

それが由依だったってわけ。

 

だから私と由依がこうして付き合えているのも、小池先輩のおかげ。

 

小池先輩に私達の関係は言ってあるけど、まさかこの場所まで知っているとは思わなくて少しびっくりした。

 

美「あ、二人に話があるんやけどな」

 

「今日会社のみんなで飲み会するらしいんやけど、参加でええよな?てか、今日は参加しなあかんわ。」

 

理「…?なんでですか?」

 

美「それが…今日部長と課長も来るらしいねん」

 

「部長はおちゃらけてる感じやけど、課長はその…違うやろ?」

 

「みんな断れない雰囲気になってしもうて…だから、お願い!参加してほしい…」

 

理「あ…今日は…」

 

今日は夜、由依が甘えるから…なんて言えるわけもなく私が黙っていると、

 

由「ん、わかった行く」

 

と、由依が返事をした。

 

美「ほんまに!?」

 

「うわあ、ほんまありがとう!場所はな…」

 

小池先輩は嬉しそうに場所と時間を伝え、満面の笑みで帰っていった。

 

扉が完全に閉まりきった瞬間、由依が私に思いっきり抱きついてくる。

 

理「うっ、由依?」

 

由「…行きたくない、理佐とイチャイチャしてたい、」

 

って小さな声で言ってくる由依。

 

由依は完璧主義だから、仕事のことになると断れないのも知っていた。

 

だから家に帰ると私にひどく甘えてくるのも承知の上だった。

 

由「うぅ…やだぁ…」

 

理「由依〜…泣かないで〜…」

 

そして、こうなるのも想定内。

 

由依を私から少し離して由依の唇にキスを落とすと、すぐに泣き止んだ。

 

理「帰ったらた~くさんイチャイチャしよ?」

 

由「でもっ…時間少ないっ…」

 

理「じゃあ飲み会の時間分、起きてイチャイチャしよ?」

 

由「でも、理佐明日仕事…」

 

そう、由依は明日休みなんだけど、私は仕事が入っている。

 

寝不足になっちゃう…って由依は心配しているけれど、私にとってそんなのどうでも良くて、それよりも甘えん坊由依ちゃんを堪能したかった。

 

理「ううん、大丈夫。」

 

「由依と過ごせるほうが幸せだもん」

 

「だから、帰ったらたくさんイチャイチャしよ?」

 

由「っ…うんっ…!」

 

そういった瞬間由依は満面の笑みを浮かべて、私に抱きついてくる。

 

ほんと単純なんだから…と思いながら私は由依の頭を撫で、空き部屋を後にした。

 

 

 

 

仕事も終わり、私達はそのまま飲み会の場所へと向かう。

 

小池先輩と由依と一緒に場所へ行くと、すでにみんなが集まっていた。

 

私達はお店の中に入って順番に座っていく。

 

すると右側に人数が偏ってしまって、途中から左側に何人か移動することになった。

 

その時に由依と離れてしまい、私は頭を抱える。

 

美「理佐ちゃん、どんまい」

 

「私席変わろうか?」

 

理「いえ、大丈夫です…」

 

私の左隣は襖で、右隣は小池先輩だった。

 

そして、肝心の由依はテーブルの向こう側。しかも真ん中辺り。

 

その隣にはイケメンの先輩と、課長。

 

由依は飲むとふにゃんふにゃんになって、すごく甘えん坊になる。

 

そんな由依を見せたくない…嫌だな…そう思いながらも着々と飲み会は進んでいった。

 

 

私は同期の子と盛り上がっていると、小池先輩が少し顔を青くして私の肩を叩いてきた。

 

理「…どうしたんですか?」

 

美「由依ちゃん、やばいかも…」

 

そう言ってくる小池先輩の視線の先を見ると、顔をほんのり赤くしてへらへらしている由依に、課長とイケメンの先輩が言い寄っていた。

 

課「小林くんさあ、本当に仕事上出来だよね」

 

由「ほんとうですか?ありがとーございます…へへっ」

 

課「うんうん、それに顔も、スタイルもいいよね」

 

そう言って課長は由依の腰に腕を回して、顔を近づけている。

 

先「由依ちゃん顔赤くなって可愛い〜」

 

「酔っちゃったの?」

 

由「んー、よってないれす」

 

先「絶対酔ってるじゃん笑」

 

「ずっと思ってたけど、由依ちゃんの肌綺麗だね、すべすべじゃん」

 

その途端、先輩が由依の太ももを触り始めた。

 

私は立ち上がって、由依のいる場所までヅカヅカと歩いていく。

 

美「ちょ、理佐ちゃん!」

 

先「ね、この後予定とかってあr「あります」

 

先「え?」

 

私は先輩の手と課長の手を引き剥がして、由依に話しかける。

 

理「あります、ね、小林先輩」

 

先「あ、なら理佐ちゃんもどう?人数多いほうが〜たのしいだろうし?」

 

「課長もどうです〜?」

 

課「じゃ、行かせてもらおうかな」

 

先「そうこなくちゃ!」

 

理「だから、用事が…」

 

由「ゆいちゃんいかな〜い」

 

理「へっ…」

 

由依は私の腕を引っ張って、私を思いっきり抱きしめてきた。

 

一瞬何が起こったのかわからなくて思考停止していると、

 

先「で、でもほら、たのしいよ?」

 

課「そうそう、俺も行くって言ってんだから…」

 

課長は由依の手を掴み、由依を自分の方に引き寄せようとする。

 

私は抵抗しない由依にも、由依に近づこうとする二人にも腹が立ち、勢いよく由依を離した。

 

由「りしゃ…?」

 

理「…もう知らない」

 

そう言って私は自分の席に戻り、小池先輩の隣に座る。

 

美「いいん?あのままで…」

 

理「…由依とか知らないです、もういい」

 

美「嫉妬してるくせに…ほんまはとられたくないんやろ」

 

「あとは…抵抗しない由依ちゃんにイライラしてる、とか…」

 

理「…なんで分かるんですか」

 

美「そりゃあもう何年一緒にいると思ってるん笑」

 

「理佐ちゃんわかりやすいねんもん笑」

 

理「う…」

 

美「もう少しでお開きにするっぽいから、終わったらすぐ由依ちゃんのところ行きな?」

 

「じゃないと取られてまうで」

 

理「わかってますよ…」

 

私はイライラしながらも、なんとか飲み会を乗り切った。


飲み会が終わって必死に由依の姿を探していると、先輩と課長、由依が3人で話しているところを見つけた。

 

先「由依ちゃん行こっか?」

 

由「どこに…?」

 

先「んー、いっぱい良いことが出来る場所かな?」

 

由「良いこと…?」

 

先「うん、だから…」

 

先輩が由依の腕をつかもうとした瞬間、由依の手をとってこちらに引き寄せた。

 

由「あ、りしゃだあ…」

 

理「すみません、用事があるので。では。」

 

先「はっ?ちょ、まてよ!!」

 

なんか後ろで先輩が叫んでいたけれど、私は振り返らずに由依の手をひいて家までの帰り道を歩く。

 


由「りしゃっ…いたいっ…」

 

理「あ、ごめ…」

 

自分でも気づかないうちにすごく力を入れちゃってて、由依の手を見ると赤く染まってしまっていた。

 

私は由依と手をつなぎ直して、早歩きで家に向かう。

 

扉を開けて玄関の鍵を締めた途端、私は由依を壁に追い詰めて強引にキスをした。

 

由「んっ…ふっ……りしゃっ…」

 

理「…なんで、」


「なんであの時、拒まなかったの、」


由「え…?」


理「やっぱ先輩とか課長の方が良い、?私なんかより、あの二人の方が…


由「そんなことっ……」


「ただ、腕に力が入らなくて、抵抗できなくて…」


「…りさ、泣いてるの、?」


私は感情がぐちゃぐちゃになって、いつの間にか泣いてしまっていたみたいだ。


理「由依は…わたしのものだよね、?」


由「うん、りさのものだよ」


「……ごめん、りさ」


いつの間にか由依の酔いは覚めてきていて、気づけば立場が逆転していた。


由依は私を優しく抱きしめると、ソファに行こう?って優しく手を引いてくれる。


由「ごめん、実はあんまりその時記憶なくて……」


「一番、酔ってたかも…」


そうやって眉を下げながら話す由依を見ると、さっきまでのイライラはどこかに飛んでいってしまった。


由依曰く、私が痛いぐらいに手を繋いでる時辺りから、だんだん酔いが覚めてきていたらしい。


理「…ごめん、さっき強引にキスして…」


由「ううん、私が悪いもん…」


「……ねぇ、続き、してほしい…」


その言葉に反応して少し顔を上げると、お酒の力では出せないくらい、由依は顔を赤く染めていた。