新婚生活は本当に幸せでした。結婚から1年経たずして、妊娠も判りました。

ちょうどその頃は、住んでいたアパートの隣人がかなり厄介で困っており、将来のことも考えて、家を持つことを考え出した時期でした。今住んでいる田舎では、戸建ての所有率が高く、アパートは仮住まいという認識の人が多いのです。実際に自分たちの周りも、結婚して数年後には家を持つ人ばかりでした。


夫は贅沢をする人ではなく、二人で協力して、頑張って頭金のお金をためました。一緒に家計簿をつけ、収支を計算して、同じ方向の同じ未来を向いていたと思います。妊娠中だったのとコロナ禍だったこともあり、私達はほとんど外出もしませんでした。


そもそも私達は、結婚式も新婚旅行もしませんでした。写真も撮りませんでした。
私はコロナの影響で仕事がとてつもなく忙しく、職場では感染防止のため、プライベートでも不要不急な外出は厳しく制限されていました。そして、写真は昔から苦手で、イベントや自分が主役になるのは苦手でした。
そんなコロナ禍が結婚イベントをしない理由でしたが、夫は「結婚式に呼ぶ友達がいないから」とも言っていました。そのときは冗談だと思って、さらっと流していましたが…。


その頃は色々なことがあまりにも順調に進んでいて、本当に幸せでした。決して浮かれていたわけではありませんが、今思えば、夢みたいな、希望や幸せに満ちた明るい未来を思い描ける日々でした。

出産予定日までまだ半年もある頃、切迫早産のリスクが高いと言われましたが、心配事と言えばそのくらいでした。


そんなある日、机の下に置かれた夫の仕事用カバンをどけて床をモップがけしたとき、カバンを倒してしまいました。カバンのファスナーは空いており、そこからビニール袋に入った処方薬の束がぽとりと落ちました。安定剤と睡眠薬でした。
メンタルクリニックを受診していたことがわかりました。