うめこは名字で呼ばれるは恥ずかしいという。 
地元では珍しい苗字らしく、 
身元がすぐにしれるから、名前で呼んでほしいと言う。 

小さな田舎町、隣近所も皆知り合い、
いや、親戚の様な田舎町に生まれ、
中学、高校、短大まで同じ町で暮らしていた。

うめこは、高校を卒業する時に、
短大か専門学校と迷ったが、短大を選んだ。

日本中のどこの田舎町にでもいそうな生い立ちのうめこ。 

何が恥ずかしいのか、故郷のことはあまり話したがらない。

短大を卒業してから、親の進める会社に入ったが、
上司とうまくいかなくなり、2年で辞めた。
その後、都会の会社に入り、地道に仕事を続けたら、
32才で課長になり、2年が過ぎた。
今の仕事は、あっているのだろう。

仕事関係で知り合い、意気投合して、飲みに出かけたりしたが、
連絡はまるで、業務連絡。友情も愛情の気配もない。
もっと若くて、美人の女の子も知り合いになったが、
半年続いたのは、うめこが可愛いと思ってしまったからだ。

久々の休日、どこにもいかずに、うめこの部屋で酒を飲む。
てきぱきと、つまみを用意して、
部屋着のままソファに腰を下ろすと、かるく会釈して乾杯。
ワインから、水割りに代わるころ、会社でのうめこの評判を聞いてみる。
聞くと、なんと「鬼軍曹」とのこと。
何となく、納得してしまう。
仕事はできるだろうし、部下には早く出来るようになってほしいので、
きつい言葉をかけるのだろう。
もう、若くもないし、鬼軍曹、ハマりすぎて笑ってしまった。
さすがに、いやな顔をするうめこ。
あまりの可愛さに、いきなりキスをした。
びっくりして、飛び下がろうとするうめこの手首をつかみ、
もう一度、キスをした。

長いキスをした。

力が抜けていくうめこに、好きだと言ってみる。
「嘘よ、若くもない、めんどくさいおばさんを好きだなんて、嘘。」
「嘘なもんか、半年も毎日のように食事に誘い、デートして、
部屋にも上がれる男が嘘を言っても意味がない。」
「そんなこと、嘘。絶対に嘘。」
あぁ、めんどくさいスイッチが入っちゃた。でも、可愛いと思う。
手首を放して両腕できつく抱きしめる。 
思ったより、細い肩に顎をのせ、赤い耳に頬ずりをする。
初めて抱きしめる、うめこの胸が自分の胸でつぶれる。
「聞いてほしい。信じてほしい。うめこと一緒に居たい。」
「そんなこと・・・」言葉が出ないうめこ。
きつく抱きしめる。
「痛い。そんなにきつく抱きしめたら、痛い。」
愛しさのあまり、きつく抱きしめ過ぎたらしい。
柔らかく抱きしめ、背中を探る。
ガードルだろうか、それともボディスーツだろうか、
しっかりガードされているので、首筋にキスをする。
うめこの吐息が熱をおびる。
背中側に回り込み、体を預けさせるように、ソファに斜めに座り、
うめこが寄りかかるように肩を引く。
「お風呂にも入っていない、恥ずかしい、もうずいぶん長いことしていない。」
「いいよ、うめこはうめこだもの。」
そう言って、曲げた膝から、冷えたつま先を温めるように両手で包む。
つま先が温かくなるまで、包みながら、
「うめこの好きになった男の子はどんな男の子?」
「短大の頃、サークルで目立つ子、リーダー的な子だった。」
「うまく行ったの?」
「最初はね、でもそのうち、上手くいかなくなって別れたわ。」
「ふーん、最初の人?」
「いやな人。でも、そうね、最初の人だわ。」
「うめこの最後の人になりたいと言ったら、どうする?」
「嘘、それは嘘。」
そんな言葉を打ち消すように、つま先から、膝へと柔らく触る。
「あっ!」
可愛い声をあげた、うめこ。
膝を伸ばし始めたので、膝から内ももへ柔らく、さらに上に触ってゆく。
吐息が早くなる。
手を腿から放し、肩をつかみ、首をまわして、キスをしながら、
手は肩から、二の腕を触り、腰を引き寄せる。

「お願い、シャワーを浴びさせて。」
「大丈夫、うめこはいい匂いだよ。」
「いや、シャワーで良いの、お願い。」
「分かった、待っているね。」と言うと、
うめこはバスルームに少しよろけながら立ち上がった。
うめこが座っていたあたりが温かくソファが沈んでいる。

ほんの少し待ってバスルームに向かう。
「うめこ、一緒に入らせて。」
シャワーの音で聞こえないのか、返事がない。
「うめこさん、大丈夫?」と少し大きな声で尋ねると、
「大丈夫、待っていてください。」
「うめこ、一緒に入ろう?」
「恥ずかしいので、待っていてください。」
扉を開けてくれそうもないので、部屋に戻り、
うめこさんに冷たいビールがあるか、冷蔵庫を確認する。
さっきまで鳴っていたCDが止まっている。
新しいCDを漁ると、懐かしいDon McLeanとCamelがあった。
Don McLeanをかけて、水割りを作りながらうめこを待つ。
American Pieが流れ始めると、なぜか涙が流れた。
そう、この曲、American Pieは絶望の曲だったんだよな。
ぼんやりと、流れる涙で、うめこがいなくなるような気がして、
水割りを口に運ぶ。 

A long long time ago
I can still remember how that music used to make me smile
And I knew if I had my chance
That I could make those people dance
And maybe they'd be happy for a while


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これは創作で、主人公に似た名前の人もフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。 
あくまで、妄想ですので事実と誤認しないようにお願いいたします。
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