暫くして、二人の部屋が出来た。その頃彼女は凄く自信家、確かに綺麗で元気であった。私の事をとても好きでいてくれる様子がありありと見えて、その癖、逆に「お前、有り難いと思えよ」とか、何時も言われる始末。ある日のことどこぞかの居酒屋で結構飲んだとき、独占欲が凄くて、また束縛も只ならなく、そろそろ時には、いい加減お灸でも据えなくてはということで、わざと別れ話を切り出した。「別れよう」部屋に帰る前に一言、告げた。一瞬翳りが見えた気もするが、そのまま、エレベーターに乗り込み、行先のボタンを押した。数階を過ぎたときだ。事は起こった。エレベーターなら、どれにも見ることができるプラスティックみたいなカバーをはずして押す、あのボタン。緊急用ボタンだ。その赤いボタンを、なんの躊躇もなく押された。それも連打。だだだだだ。ついでに、マイクに向かって「助けてー」。部屋になだれ込むや、その後、大声をあげるは、階下に轟き渡る程に、足で床を踏みつける。ドタバタドタバタ、物は手当たり次第に、投げつける。口を押さえ、何とか押さえ込もうとするも、強い強い。じきに、「ピンポーン」。まー、それはそうだろう。大騒ぎなわけだし。今思えば、管理会社の人だったのだろうか、二人来た。「どうしましたか?大丈夫ですか?」と一人が聞き、「いいえ大丈夫です。申し訳ありません、等々」と、丁重に謝った。そこで終わりかと、思いきや、暫くして、多分野次馬根性か、
もう一人が、舞い戻ってきて、「お二人の関係はどういう関係ですか?」と、聞いたものだから、かちーん。「貴方には関係のないことでしょ」と、不機嫌そうに答えて、ドアを閉めた。そして、興奮が収まり去り、騒ぎが落ち着きはじめた頃、まー15分後位かな、ドヤドヤという音がドアの外に聞こえた。ドアホンを鳴らし、応答すると、制服姿の警官がまず二人が見えた。と外を見ると、すでに約5人程警官がいた。私は外に出て、彼らに説明するはめになった。先の二人は中にするりと入り込んだ。田舎に、こんなにも居たのかというほどの数の警察官、全員で来たのかよと思った。「全員でこられましたか?」と、言った。「もっとくるよ」と言われた。脅し?かな、とも思ったが、「そうか」と思ったまでであった。その時点で、もう少し多くの警官が来ていた。廊下が、狭いため、一列に並んだ少し滑稽な様であった。暴れていたのは私ではないのだが。彼女には二人。私には結果八人が配置された形になった。飲んでいるのが自ずと知れたのだろう、「どのくらい飲んだね?」と聞かれ、「まー、二人でワイン二本超は飲んでいたかな」など答えた。その時、側に立っていた若手の警察官の腹がやたら弛んでいた為、我慢できずに、掴んでしまった。「これは駄目でしょう」何だか、あまり反応してくれなかったが。酔いもかなり回っていたのかな。「どこで飲んだね」と、聞かれた。その時、その集団の中に懐かしの顔がいた。あの時の警官Aだ。「あら、お久し振りです、前、あの道でお会いした者です」「あー」、そこですかさず「おっしゃられた通りに店で飲み、こうやって家で飲もうとしていてこうなりました」と言った。彼の顔色を変えてしまった。「もっと真面目に生きてください」と言われた。結果、おとがめ等、特に何もなく、真面目に生きてくださいと注意されただけであった。うーん、今回も通報されたのかな。エレベーターからは降りていたわけだし、確かにお騒がせしたには違いないが、警官10人にお世話になった。反省せねばな。田舎は平和だ。学んだことは、エレベーターの緊急ボタンは押さない、そして押させないこと。それより、何より女性を怒らせないことだ。