「あと二年くらいしたらね、地球の人口の三分の二の人たちが死ぬのよ。」

仕事から戻り家族で夕食中
君江がアセンションについて語りだした。


「今はね、二年後に生き残れるか死んでしまうか、どちらのグループに入るかの選択の時期なの!」


肩をすぼめ、やや前かがみになりながら
まるで極秘な情報を話すスパイのように
君江が話す。


「それでね死ぬって怖いじゃない?だからどうしようかって不安になってたら、グッドタイミングで生き残れる方法についての情報を知ることができたの!」


「引き寄せの法則だわ。」


今度は鼻の穴を大きく膨らませ、興奮気味に話している。

その変化についていけず
疲れが増した感覚になる。



「とにかく、二年後に死なないためにヒーラーになるってことでしょ?」



青は、朝聞いた内容と今聞いた内容を足して答えを君江に解いてみた。


「ちがうちがうちがう!パパ全然わかってない!あのね、ヒーラーになるのはお役目なの!生き残りたいからヒーラーになるなんて次元の低い話しじゃないわけ!私はアセンションを導くお役目があるの!自分だけ良ければいいなんて思ってたら次元をアップさせれないんだからね!」


「もういいよ、とりあえずご飯食べよう。」


はーっと君江はため息を付き、隣でアニメに見入って箸が止まっている
息子、石橋海(イシバシウミ)5歳O型、性別男、うお座に向かって早く食べなさいと一喝した。
朝のトイレは足に力が入らない。

ぼーっとしながら用をたしていると
ばかでっかい声が背後から聞こえてきた。

「パパー、パパー聞いて聞いて聞いてぇ」

妻の君江だ。


石橋君江(イシバシキミエ)35歳。性別女。
かに座O型。


占い好きの5歳児の母。
専業主婦である。


「朝から何?あいさつもしないで」


ちょっとムッとした調子で返事をしたが
まったく気にした様子もなく話しを続ける。


「私、ヒーラーになります!」



「ヒーラー??なんだそれ?」



「えー、パパ知らないの?今はね癒しブームで主婦がヒーラーとしてめちゃくちゃ儲けたりしてんのよ!
仕事優先の物質社会に生きてるパパは
きっとアセンションできないのよ。
でももうだいじょーぶ!私が家族みんなを高次元へアセンションさせてあげるから!」


あ、汗しょん?
こう時限?
物理学か生物学の話しだろうか。


妻のいっている半分も理解できなかった。


「だからヒーラーって何?」
もう一度妻に聞いたが
ため息をひとつついて
「とにかく、これからセミナーとかに出るようになるからよろしく。」と自分の足元をみながら答えた。



ヒーラー
癒しブーム
アセンション


この妻の行動により
石橋家は狂いはじめる。
朝、いつもの時間に起きる。
布団の中でごろごろしながら、いつもの時間いつもの考えを巡らす。

仕事行く?休んじゃう?


石橋青(イシバシセイ)32歳
いちおうコブ付きの水瓶座A型。性別男。
確かなんとかの占いでは、ごおうどせい?天王星人?


「占いだと何人だかわからないな」


嫁が占いの本を必死に説明してる姿を思い出して
よけいに気が滅入った。



時計を見ると6時12分。



時間を確認した青は、また目を閉じ
お決まりの想像で脳みそに呪文をかける



-今日仕事に行ったら、めちゃくちゃ楽しいことが待ってる-


脳みそを騙し騙し
いつもの時間にベッドを離れ、トイレへ向かった。