つぶより
刑事訴訟に関する書類は,公判の開廷前は,原則として非公開とされています(刑事訴訟法47条本文)。
そのため,不起訴事件記録の閲覧・謄写は原則として認められません。「原則は不開示」、これが重要です。
その理由は、公にされることにより,被告人,被疑者及び関係者の名誉,プライバシーが侵害されたり,公序良俗が害されることになったり,又は捜査,刑事裁判が不当な影響を受けたりするなどの弊害が発生するのを防止することを目的としています。
しかし、刑訴法47条には、ただし書があります。それは、「公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる」場合には、公開出来るというものです。
不起訴記録を公にできるか否かの判断は,不起訴記録が原則として公開禁止であることから、検察庁の合理的な裁量にゆだねられています。
この規定に基づいて、開示請求ができる範囲は、通達で拡大されてきました。
以前は、交通事故事件の実況見分調書等に限り,裁判所からの文書送付嘱託又は弁護士会照会を通じて入手できるだけだったようです。
現在は、以前よりも拡大されて、次のような場合に開示が認められます。
まず、「被害者等」からの開示請求です。被害者等からの申請で、写真撮影報告書,検視調書等の客観的証拠などは、開示が可能です。ここで、「被害者等」とは、刑訴法上、被害者本人か配偶者・肉親しか含みません(刑訴法290条の2)。例えば暴行事件で間接的、経済的被害を受けた者は含みません。
さらに、閲覧・謄写を求める手段としては、民事訴訟係属中に、裁判所から不起訴記録の文書送付嘱託等がなされた場合があります。
その場合、基本的には、写真撮影報告書,検視調書等の客観的証拠が開示されますが、下記の要件をすべて満たす場合には、供述調書が開示される場合があります。
①供述調書の内容が,結論を左右する重要なものであってかつ証明に欠かせないもの
②民事訴訟において供述を提出できない場合,又は供述調書の内容が民事裁判における証言内容と反する場合。
③供述調書を開示することによって,捜査、関係者の安全,関係者の名誉・プライバシーを侵害しないこと
民事訴訟が係属している場合において、不起訴記録を開示請求する場合には、後者の文書送付嘱託の制度を用います。その時に供述調書が開示されるのは、上記の四つの要件をすべて満たす必要があるので非常にハードルが高いです。
その供述調書を民事訴訟でどのように使うのか、その供述調書がどれくらい重要なのか、その供述調書中に不適切な記載はないかなど総合的に判断されますので、認められる可能性は、事案によるとしか言いようがないのですが、あくまでも一般的に言って、供述証拠が開示される可能性は低いと言えます。
弁護士による解説
ザッと読んだ限り不起訴理由の開示は被害者が求めない限り無理ってことかな?