昨日の話は面白かったですか?
ええ、私の趣味は格闘技だったのです。
東洋古武道研究会というのがサークルの名前です。
中国武術(拳法と武器)、日本の古武術など研究して、実際に鍛練する同好会です。
皆さんサークル以外からも技術を吸収していました。
お手軽ですが私は、早稲田の体育の授業でボクシングと合気道を選択したんです。
ボクシングの先生は、最初の東京オリンピック日本代表でした。
それで、アマチュアボクシングのフォームを覚えて、拳法のキックを身に付けて、2年生の夏休みにキックボクシングジムにトレーニングしに行きました。
身体がなまってしまうから、夏休みだけ入門させてくれって言って入りました。
入門1日目、ストレッチと基本的動作を教えてもらってサンドバッグを叩き始めました。
ストレッチたって、いきなり180度開脚をして周囲がビックリ。
ハイキックをドスドス、アマチュアボクシングのきれいなフォームでパンチを叩き込むのを見たコーチが、
「オマエ、来月試合を組むからデビューしないか?」
と、言ってきたもんだから私は驚きました。
驚いたのは、コーチも同じでした。
腰の入らないパンチは、パンパンと軽い音がします。
それに変に推すからサンドバッグが揺れます。
キックも同様で、素人が蹴ると揺れますがトレーニングを積んだ人間のキックはサンドバッグを「く」の字にします。
コーチが見れば一目瞭然です。
アマチュアボクサーとグローブ着けてスパーリングしたときも、
「パンチ力があるのがわかるから、踏み込んで入れない。」と言われました。
コーチ、
「いますぐデビューできるくらい出来ている。」
と、潤んだ瞳で見られて身の危険を感じた私は丁重にお断りしました。
じつは、ボクシングとキックボクシングではルールが違います。
ボクシングでは、肘が当たるのを「バッティング」と言って反則とされます。
したがって、フックを打つときは肘を若干伸ばして当たらないようにすると指導されました。
ところが、キックボクシングジムでは構わず腕をブン回す!と教えられました。
蹴りに至っては、私の多彩な蹴りの多くが反則です。
そんな面倒な違いをやってられるか。
もし、このときにデビューしていたら山田の第一次タイ遠征隊に加わって、指導役をしていたかも知れません。