昭和電工がジスプロシウムを使わない産業ロボット用の高性能磁石を開発しました。
ジスプロシウム自体は磁力を強化させるものではなく、現在最強のネオジム磁石の高温での磁力低下を抑える働きがあります。
昭和電工は、特殊な熱処理で結晶構造を変化させることで磁力低下をしない磁石を開発したものです。
東芝は、ネオジム磁石ではなくコバルト系で高性能磁石を作ったり、ホンダなど自動車メーカーもジスプロシウムの使用量を大幅に減らす技術を開発しています。
ジスプロシウムは北アメリカやブラジルにもありますが、通常放射性物質のトリウムと一緒に採掘されます。
ところが中国南部の鉱山では、トリウムのない「奇跡の鉱脈」があります。
それゆえ、硝酸アンモニウム流し込んでジスプロシウムを抽出するという簡便な方法で分離できて圧倒的な低コストなのです。
そうなると、カナダやブラジルの鉱山は価格で勝てないから採掘を止めて閉山してしまったのです。
だから、生産量の9割が中国になっています。
じゃあ、中国が輸出を減らして市場価格が上がったから再び採掘しようとしても、準備に2年くらいかかってしまいます。
中国は、レアアースの生産量は世界の9割でも埋蔵量は3割くらいで、こんなことを続けていたら中国だけレアアースが枯渇して輸入しないといけなくなるんです。
うまい具合に日本の尖閣諸島で、中国船が日本の海上保安庁の船に体当たりするという、とんでもない事件が起こりました。
そこで国内備蓄することにして、日本への輸出を止めるという経済制裁をしました。しかし、他国がすぐには生産再開できないから価格が急上昇しました。
中国にしたら、してやったりでしたが尖閣の意趣返しで嫌がらせした日本が代替技術を開発し需要が激減。
今度は、価格が急下落します。
逆に、日本に買ってくれと泣きついてきているわけです。ハイテク品を作っているのは日本だけだから。
ところで、環境に全く配慮しない中国は硝酸アンモニウムが地下水に流れ込んで水質汚染を起こしています。
日本各社のジスプロシウム不使用(または大幅使用量減)磁石は中国の環境汚染対策にも協力することになるのです。
ただ、この技術は繋ぎに過ぎません。
現在商品化されているネオジム磁石の性能は、既にほぼ理論限界に達しており、これ以上の性能向上は見込めません。
今、次世代の磁石で有望視されているのは窒化鉄という地球上どこにでもある材料で作るものです。
これが5年後にでも実用化されると、中国のレアアースはただの無価値な泥になります。
そうなれば、誰もレアアースを掘らなくなるんですねえ。
したがって、水質汚染はこれ以上進みません。
中国に感謝してもらいたいものです。