前に多剤耐性菌の話題で、ファージ治療のことを書きました。
ファージというのは、ウイルスと同じなんですが、バクテリアに取り付くウイルスをバクテリオファージと呼んでいます。


ちょっと、前回の話を思い出してもらいます。
抗生物質に耐性を持つ細菌が増えており、海外から非常に多くの抗生物質に耐性を持つ細菌が日本にも上陸しています。
だいたい、新薬を開発するのに10年かかるのに、細菌が耐性を獲得するのに10年はかかりません。
そういう意味で大手の製薬メーカーが新薬を開発する意欲を失うという危険な情勢にあります。


そこで、有望な治療法がファージ治療です。
抗生物質は、細菌一般に効くため、腸内細菌も根こそぎ殺してしまいます。
それじゃあ、腸内環境が壊れて下痢をしたり、ビタミン吸収ができなくなったりします。
ファージ治療の場合は、特定の細菌にしか効かないのでそのような副作用や耐性菌を作り出してしまう心配がありません。
それに今までの耐性メカニズムが全く効きません。
ただし、病気の原因菌を間違えたり、特定するまでの間に治療ができないという欠点があります。


そんなファージ治療は、通常の感染症治療以外の応用がすでにできているというのです。
生物兵器で病原体に使われる炭疽菌は、死亡率が高く感染力が強い菌です。スコットランド西岸の無人島で連合軍が炭疽菌爆弾の実験を行いました。
炭疽菌は、環境が変わると芽胞という形で休眠するも消失しません。島の生物に高率で炭疽が発症しました。
43年後、ホルマリン消毒でようやく炭疽菌を消失させることに成功したものの今だに島は無人島のまま。
非常に厄介なため、危なくって敵地を占領することもできないという敵味方両方危険なシロモノです。
北朝鮮は、ミサイルに核兵器ではなく、炭疽菌爆弾を登載する可能性があります。どうせ日本を占領できるような戦力もないから、使うことができます。


この厄介な炭疽菌を芽胞状態から目を覚ます薬剤と、炭疽菌に取り付くファージを組み合わせて炭疽菌汚染を除染する技術が開発されました。
しかしながら、この技術がなかったら自分たちも危なすぎて使えなかった兵器が使えるようになります。
そういう意味じゃ、これはいいことなんでしょうか?