約30年前、TIMEを定期購読してた時期がありました。
そのとき「後天性免疫不全症候群」という病気があらわれて、アメリカで大騒ぎという記事を読みました。
原因不明の不治の病で、100%死ぬ!
しかし、ホモセクシャルとか薬中毒といった不道徳な連中しかかからない。
なんでも名前があんまり長いので、頭文字をとって「エイアイディーエス」というんだという記事でした。
こんな恐ろしい病気のことは日本じゃまだ報道すらされていない!
やっぱり、外国の本を読むのは有益だ!と思って、ふと電車内の吊り広告を見ると、
『アメリカで「エイズ」の猛威 原因不明の不治の病』とか書いてあるじゃないですか。(゚◇゚)ガーン
フィリップ・K・ディックの小説「Do Androids dream of electric sheep?」を読み終わってから、ハヤカワ文庫から日本語訳版が出ているのに気がついて以来のショックでした。
当時は、アメリカの雑誌が日本に届くまで時間がかかったのです。
だから、雑誌が届く頃には日本語訳された記事が出てたんですね。ガッカリしちゃいました。
しかも、「AIDS」を「エイズ」と読むとは英字誌じゃわかりませんでした。
それから間もなく、原因がHIV(人免疫不全ウイルス)と特定されます。
そして、世界中で人類史上初と言われるほどの盛んな研究が行われます。
細菌と異なり、ウイルスには抗生物質のような治療薬が存在しません。
しかしながら、世界中の精力的な研究によりウイルスの増殖を抑えたりウイルスに感染しても発症を抑えたりできるようになりました。
この間ウイルス治療薬の進歩は目覚ましく、皮肉な話ではありますが、エイズのおかげで他のウイルス病治療も飛躍的に進歩したと言えます。
今や、治療を受ければエイズは必ずしも死に至る不治の病ではなくなりました。
そして、とうとう母子感染した女の子が治療の結果「治癒」しました!
これで、エイズ治療は新しい段階に到達したと言えましょう。
ここで言う治癒とは「機能的治癒」で、血液中にウイルスが検出できないくらいにウイルスが抑えられ、生涯にわたり治療を受ける必要がない状態を言います。
じつは、ウイルスが完全に消失したわけじゃないけど、ウイルスが検出するこができず発症することもない。
医学用語でいう「寛解」と治癒の中間みたいなものかもしれません。
現在、小児の白血病はほぼ100%寛解します。
しかし、治癒と言わないのは再発する可能性があるわけで、生涯治療を受ける必要がない女の子とは異なります。
今後は、ウイルスが完全に消失するような治療、あるいはHIVに感染してもエイズを発症しない人々のメカニズムを解明するような目標が残されています。
先進国ではエイズより喫煙の方が問題で、現在でも深刻なのは、アフリカと中国といった途上国です。
人類は、天然痘を絶滅させました。
次は、おそらくポリオでしょう。タリバンがアフガニスタンなどでポリオワクチン接種を妨害しており、タリバンを先に絶滅させる必要があります。
この2つウイルスに共通なのは、ウイルスが人から人にしか感染しないことです。
エイズも基本的には同様です。
例外的に輸血や滅菌処理しない血液製剤による感染がありますが、そんなものは防げます。
アフリカと中国さえ何とかすれば、エイズも克服できることでしょう。
でも、この2つの暗黒大陸は一筋縄では片付きそうもありません。
(中国は、血液製剤の投与じゃなくて、血液製剤の原料となる血液を業者が売血で集めたところ杜撰な衛生管理でエイズ村ができてしまったのです。また、中国はアフリカの資源開発に大量の労働者を送り込み無茶をやってます。もっと新しいエイズ村ができることでしょう。)