帝人がカーボンナノチューブを束ねて糸状にする技術を開発して、科学誌「サイエンス」に発表しました。
オランダの子会社テイジン・アラミドとアメリカのライス大学、アメリカ空軍との共同開発です。
防弾チョッキなどに使うアラミド繊維の製法を応用したものです。
金属並みに電気が流れる性質があり、かつ史上最強の繊維となります。


こいつで3万6000kmのロープを作れば、赤道上の静止衛星軌道(SF作家アーサー・C・クラークの名を取って「クラーク軌道」とも言う)までエレベーターを作ることができます。
ひらのXX的日常-kidou

NEC基礎研究所の飯島澄男特別主任研究員が、1991年に発見するまで軌道エレベーターを作る材料は存在しませんでした。
それ以前、アーサー・C・クラークは作品の中でダイヤモンドでエレベーターを作っていました。
小説「2001年宇宙の旅」の続編で、木星の中心には炭化水素が溜まっており、それが高温高圧下でダイヤモンド化しています。
謎の石板「モノリス」が木星を点火させ第二の太陽(ルシファー化)とするとき、ダイヤモンドの核が飛び出し木星の衛星エウロパに到達します。
メチャクチャ凄い設定ですが、クラークの時代劇では、そんなアクロバティックな設定じゃなくては軌道エレベーターは作れませんでした。


その後、発見されたカーボンナノチューブを使って軌道エレベーターが作れるか?NASAが外部の研究機関に調査依頼したところ、オバマじゃないけど回答は「Yes we can!」でした。
テイジンのような技術が開発されると、飯島氏のノーベル賞受賞が近づくんじゃないでしょうか。


カーボンナノチューブは、ダイヤモンドの代わりになるだけじゃなくて、プラチナの代わりにもなります。
燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)は、ハイブリッド車の次の本命と見られています。
ハイブリッド車は、電気自動車までの繋ぎの技術と思われていましたが、どうもそうじゃないようで電気自動車はまるで売れません。
三菱自動車と日産自動車は、自分たちが先行したら、トヨタ自動車やホンダが追随して市場ができると思っていました。
ところが、高すぎるうえ一充電の走行距離が短い電気自動車は売れず、ハイブリッド車が販売の上位を占めました。
焦った自動車メーカー各社は、ハイブリッド車を拡充しています。


そして、ハイブリッド車の後釜は、FCVです。
FCVの心臓部は、水素と酸素を反応させて電気を起こす「スタック」です。
水の電気分解を逆にして、水素と酸素から水を作って電気を取り出す装置。
火を点けないで水素と酸素を反応させるのに、プラチナを触媒に使うからスタックが高価になるのです。
そのプラチナの代わりに、カーボンナノチューブやカーボンナノホーン(ホーンhornは、角=ツノで円錐形の巨大炭素分子)が使われます。
FCVの開発は、スタックをいかに安く作るかにかかっていると言っても過言ではありません。


ああ、またノーベル賞受賞が近づいてしまいます。