今週のTIMEで気になった記事は干ばつの問題です。


気象学者は、『干ばつ』のことを『忍び寄る砂漠』と呼んでいます。
ハリケーンやトルネードと違ってゆっくりと動くからです。
アメリカの農地は、6月中旬から7月中旬までで、厳しい干ばつ地域が17%から39%に拡大したといいます。


干ばつだけじゃなくて、記録的高温が空気と土壌から水分を奪っています。
イリノイやインディアナといったコーンベルト地帯(トウモロコシ生産地)では、平年並みと豊作は24%しかなく、前年同期比で62%の収穫量です。
アメリカの農家は今年の春、例年より多く種を撒いただけに落胆しています。


気象予報によると雨が降りそうもなく希望は乏しい。
それは価格上昇圧力となっており、食費がかさみ、新興国では既に数億人が飢えています。
2010年の食料価格の高騰は、アラブの春のきっかけにもなりました。


アメリカの農務長官トム・ビルサックは、「降るものなら雨乞いのお祈りでも踊りでもする。」といいます。
面白い奴ですね、日本でこんなことを言ったら不謹慎とか言われそうです。


そんなわけで、アメリカの農家は天候保険をかけていますが、保険料も高騰しています。
なんだかよくわかんないですが、トウモロコシはアメリカの食料価格のピラミッドの底面なのだそうです。
ハンバーガー、シリアル食品にゲータレードまで影響を受けます。


ちなみに大豆も昨年の収穫量は1億7000万ブッシェルで、過去5年平均2億5700万ブッシェルに対し極めて不作でした。
アメリカのトウモロコシ生産地の88%が現在干ばつの影響を受けています。
今後、世界の食料事情に大きな影響がでるでしょう。
アメリカのトウモロコシは食料だけでなく、その40%はエタノールの原料に使われています。
シェールガス革命が始まったのですから、燃料にするのはやめてもらいたいものです。


食料と言っていますが、じつは水の問題に他なりません。
食料を生産するには、多量の水が必要です。
アメリカ産牛肉1トンを生産するには、20000トンの水が必要です。
オーストラリアなんかだと、牛に牧草を食わせるのですが、アメリカはグレインフィードといって穀物を食わせます。
この方が旨い肉質になります。
穀物と言っても、トウモロコシとか油を絞ったあとの大豆搾りかすです。
こっちは草より水が大量に必要で、しかもブロイラーや豚より成長に時間がかかる分よけいに水が要ります。
日本は、アメリカほど水を使っていません。
なぜなら、アメリカから輸入したトウモロコシと大豆搾りかすを飼料にしているからです。
これは間接的に水を輸入しているということで、「バーチャルウォーター」という言い方をすることがあります。


中東~北アフリカは、利用できる水と人口の比率が極めて厳しい地域です。
「アラブの春」が起こったのは、この「水ストレス」の大きい地域にあって輸入食料高騰から必然だったのでしょう。
日本は、水の豊かな国ですが人口が多いので「水ストレス」は意外に大きいのです。
それなのに、水源周辺の土地を中国に買い占められているのですが、何の防衛策も講じていません。


今後、世界は水に関する紛争が多発するようになるわけで、今回はその序章に過ぎないと私は思っています。