オリンピックの中継を見ていて、よく聴く言葉が
「勝利の女神はどちらの微笑むのでしょうか?」っていうフレーズ。
だいたい、ほとんどキリスト教の欧米で「勝利の女神」っておかしな話じゃないですか。
一神教で、エホバあるいはヤーウェという神しか存在しないはずなのだから。
要は、キリスト教以前の文化がヨーロッパには残っているんでしょうなあ。
つまり、ギリシャ神話に登場する戦いと知恵の神アテナのことを指すのでしょう。
女神ながら槍と甲冑で武装した姿で描かれることが多い神様です。
例外的なのが、ルーベンスなど多くの画家が描く題材の『三美神』あるいは『パリスの審判』です。
これは、アテナ、美神アフロディーテ、ゼウスの妻ヘラが美を競うという話です。
三美神の横に描かれる羊飼いの正体は、トロイ王の息子パリス。
三美神のコンテストの審判役となったパリスを神々は、こともあろうに買収しようとします。
アテナは戦いの勝利、アフロディーテは世界一の美女、ヘラはアシアの君主の座を提供すると約束します。
パリスが選んだ世界一の美女というのが、スパルタ王の妻ヘレネということで、これがトロイ戦争のきっかけとなったわけです。
パリスの審判は神話なのに、トロイ戦争は実際にあった史実です。
どこで線を引くのかよくわからないところです。
ドイツのアマチュア考古学者シュリーマンまでは、トロイ戦争まで神話と思われていました。
ホメーロスの叙事詩をすべて真実と信じたシュリーマンは、幸運も手伝って証拠を堀あてました。
考古学者として素晴らしい功績ではありますが、発掘物を売って調査費に充てちゃうもんで貴重な考古学上の発掘物が散逸してしまったのです。
とんでもない考古学者だったわけです。
アテナが戦いと知恵の女神なら、戦いと破壊の神が別にいます。
こっちは、オリンピックにはふさわしくありませんな。
赤い惑星火星の名前になっているマルスがそうです。
英語読みでは『マーズ(Mars)』火星の赤い色が戦いで流れる血を思い起こさせるからでしょう。
先日、火星にアメリカの探査機「キュリオシティ(好奇心)」が着陸に成功しました。
昨年のTIMEによる2011年の発明品ベスト50にも選ばれた代物です。
前回の「マーズ パスファインダー」よりはるかに大型の探査機で、なんらかの生命またはその痕跡の発見が期待されています。
それに合わせてか、インドも火星探査機の計画を発表しています。
新興国といえども、科学の世界で貢献しようという姿勢は素晴らしい。
日本も、火星大気圏に探査機を送り着陸せずに、サンプルを持ち帰るという「離れ業」の計画をしています。
地上まで降りないで大気圏を浮遊する物質を採取すると、省エネで地球まで帰ってくることができるというものです。
アイデアとして、非常に面白いです。
一方、宇宙を軍事利用しか考えていないのが中国です。
宇宙開発をやっているのが、人民解放軍だから当たり前といえばそうなんですけど。
火星に行かない中国人こそが、じつは一番戦いと破壊の神に近いところに居そうです。