日本が世界に誇るH2Aロケットは、世界的にも高性能なロケットですが、コストの高いのが難点。
なにしろ、年間4基の打ち上げがせいぜいで、電卓並みの能力の部品に何千倍ものコストがかかる特注品を使っているからです。
一回の打ち上げ費用が100億円かかってしまうのも、そんな理由からです。
JAXAから打ち上げ業務の移管を受けた三菱重工は、今後コストの削減に努め、ロシアとEUがほぼ独占する民間打ち上げサービスに参入する構えです。
ところが、ここに圧倒的な価格競争力で、アメリカのスペースX社が殴り込みをかけることになりました。
この会社は、IT企業で儲けた創業者がその資金力で立ち上げたものです。
新しい技術開発はしません。
すでにある技術をそのまま使うのです。
アメリカは1969年には人類を月に送り込んだ国です。
スペースX社のロケットは、1962年初発射のサターンロケットをベースにしています。
50年前の技術です。
スペースX社は、このロケットを使い一回44億円で打ち上げます。
なにしろ、50年の実績がありますから、信頼性抜群なのです。
すでにトラブルは出尽くして、その防止法も対処法も知り尽くしています。
こういうのを『枯れた技術』と言います。
古い技術のことなんですけど、決して悪い意味ではありません。
アメリカには、もっとスゴイのがあります。
戦略爆撃機B52は、長距離を高速で大量の爆弾を運ぶというコンセプトのもと1945年から開発が始まり、1952年初飛行。
すでに60年飛んでいます。
現在飛んでいる機体には、機長より年上のものが少なくありません。
初期型のエンジンはターボジェットで、その後効率のいいターボファンエンジンが開発されると、エンジン換装により性能を向上させています。
今後、改良をつづけながら2045年まで現役を続けることが決まっています。
後から生まれたB1超音速爆撃機やB2ステルス爆撃機が引退しても、黙々と現役を続けるのです。
当初の開発者は、これが100年先の空を現役で飛んでいると思って設計していたでしょうか?
技術は新しいばかりがいいとは限りません。
スペースX社のファルコン9は、打ち上げコスト100分の1を目指す挑戦をすることになっています。
それが実現すれば、三菱重工やIHIなどが開発している宇宙太陽光発電システム(SSPS)の実用化ができます。
地上太陽光発電の10倍を誇る高効率のエネルギー源を手にいれることができます。
『枯れた技術』恐るべし!!!