日本のマンガというのは凄いもので、架空の世界観を作り出してしまうのには感動します。


アニメ化された人気の「鋼の錬金術師」通称「ハガレン」は、我々の世界と違うパラレルワールドを描いている作品です。
我々の世界より機械文明は遅れているが、錬金術の発達した世界の物語です。
ひらのXX的日常-hagaren

錬金術というのは、中世のヨーロッパで発達した、金以外のものから金を作り出す技術のことです。
当然、そんなことはできません。
しかしながら、それを研究することで様々な合金や化学的知識を開発したり発見することになりました。
ところがパラレルワールドの錬金術師は、なぜか金を作るのではなくて様々な超人的能力を発揮して軍で活躍します。


そんなハガレンの主人公たる兄弟の父親がホーエンハイムという錬金術師です。
ホーエンハイムという錬金術師は我々の世界に実在した人物なのです。
じつはホーエンハイムというよりは「パラケルスス」という名前の方で有名な人物です。
前にも一度ご紹介したことがありまして、そのときは安倍晴明との類似性を書いたのでちょっとおさらいを。


安倍晴明は平安時代の陰陽師最大のスターでした。
本職は天文得業生という占星術みたいに占いをする職にありました。
しかしながら有名なのは、陰陽師として呪いをかけられた者を救ったり、鬼を封印するなどを行なったことです。
晴明は、式神という鬼神を使役し和紙札を鳥や獣の姿に変えて自らの使いとしました。
パラケルススの本職は医師です。
それでいてヨーロッパで最も有名な錬金術師でもあり各地を放浪しては、世話になった宿の暖炉の火かき棒を金に変えて礼をしたり、重い病の人を治してみせるという奇跡を起こします。
パラケルススは日頃「賢者の石」をはめ込んだ短剣を身につけており、柄頭には一匹の悪魔が封じ込められていました。
気に入らない相手にはこの悪魔を送り、味方に対しては万能薬の「賢者の石」を用いるということをしました。
彼は医者であるだけでなく占星術もよくし、当時最も有名な魔法道士トリテミウスの弟子でもありました。


この両者の活躍した時代は晴明が10世紀、パラケルススが15世紀とかなり違います。
まあ、どちらも実在したにもかかわらず、後世になって文学作品に取り上げられて伝説上の人物となりました。


パラケルススの本名は、フィリップス・アウレオルス・テオフラトゥス・ポンパトゥス・フォン・ホーエンハイムというとんでもなく長い名前です。
この人はドイツ系のスイス人で、ホーエンハイムはドイツ語で「高い家」という意味をラテン語化して「パラケルスス」と自ら号したのです


パラケルススは、医師という当時の聖職者と並ぶ知識階級であっただけでなく、冶金学、占星術、錬金術など中世の学問を広くかつ深く研究した大学者でした。
ただ、相当傲慢な性格だったようで、人と片っ端からケンカして敵を作るような人物だったようです。
しかし、ヨーロッパ中を放浪しながらも各地で歓迎されています。
それはパラケルススがヨーロッパで最も有名な医師であり錬金術師であったことだけでなく、薔薇十字団の影の幹部だったからとも言われます。
薔薇十字団とは錬金術や魔術などの古代の英知を駆使して、人知れず世の人々を救うとされる国際的秘密結社で、これに属する者はどこに行っても合言葉かバッヂを見せることで歓迎してもらえるというのです。


パラケルススの伝説の中には、「フラスコの中の小人」である人工の人「ホムンクルス」を作ったとするものがあります。
しかし、これは「ハガレン」に登場するホムンクルスとは似てもにつかぬ代物です。
実在のパラケルススの伝説はほとんどマンガには取り入れず、ホムンクルスには独創的なアイデアを様々に取り入れるなどホントに日本のマンガは凄いです。