「危険なのは、大統領が省エネルギーや風力、地上太陽光発電といった必要な量のエネルギーを生み出さないプロジェクトのために無駄に権限を行使することだ。」
とフリードマンは言っています。
次の10年で電力の消費量は増大すると考えています。
そのエネルギーに風力や地上太陽光発電では全然足りないと考えています。
その分はどうしても炭素燃料の頼らずにはいかないわけで、今後の石油、石炭、天然ガスの需要は増え続け価格も上昇します。
しかも、近年のエネルギー消費の増加分はほとんどが新興国です。
新興国はエネルギー需要の増加にその低い発電効率と低いエネルギー効率で対応しています。
中国やインドは太平洋の小国ツバルが海に沈んで消滅するかもしれないことに関心がありません。
石油が真っ先に枯渇して、その後頼れるのは石炭と天然ガスです。
ここで話は面白い方向に進みます。
以前にイラク戦争の開戦から撤退まで4700名が死んだと書きましたよね。
中国では炭鉱の落盤事故で毎年4700名が死んでいます。
すなわち、アメリカ人は石油のために死んで、中国人は石炭のために死ぬのです。
石油が無くなれば、アメリカはもう石油利権のために戦争する必要がなくなります。
そしてフリードマンも同じようなことを言っているのです。
「石炭と天然ガスはアメリカ国内に充分あるので、戦争の可能性が少ない。」と言っています。
結局、戦争の原因はエネルギーの確保にあるということです。
膨大なエネルギーを非効率に消費している中国がなぜあんなに軍備を増強しているかといえば、エネルギーを確保するためです。
日本がなぜ太平洋戦争に突入したかというのも、エネルギーとゴムや鉄鉱石等の資源を止められたからです。
原子力は一度燃料を入れてしまえば、数年間は燃料を入れる必要があり自動的に膨大なエネルギー備蓄ができているのです。
多少アナクロニズムではありますが、戦前にフランス並みの原子力発電所があれば、日本は戦争しなくても済んだでしょう。
これって本当の意味で原子力の平和利用なのではありませんか。
世界も原子力を増やす方向にあるようです。
ドイツは、東ドイツ出身のメルケル首相が原子力のライバル炭鉱労働組合の圧力で脱原発を決めています。
イタリアは、共産党の力が強く原子力=原爆という旧ソビエトのプロパガンダに乗っていたからです。
日本にも共産党と社民党といった旧ソビエトの手先だった政党がイデオロギーで原発に反対し、イタリアに近いものがありました。
それ以外の国ってのは原子力を推進しようとしています。
エネルギー安全保障と温暖化ガス低減のためには、原子力をやめるべきではないのです。
アメリカで建設が計画されている22基の原発はその半数が東芝子会社のウエスチングハウス製AP1000を採用しています。
この第3世代+の原子炉は全電源を喪失しても、また人間の手動操作によらなくても冷却が可能な構造となっています。
AP1000は、炉心の上部に巨大な水タンクが備わっており、メルトダウン(炉心溶融)につながるような異常が起こると、温度上昇を受けて弁が開きタンクの水が原子炉に流れ込むようになっています。
電気も人間の操作も必要ありません。
また、AP1000は“開放設計”になっていて、緊急の際には原子炉の冷却に空気を使います。
標準的な設計には反するが、コンクリートと鉄でできた原子炉格納容器の外側を覆っているコンクリート製の建物(原子炉建屋)の屋根付近に通気孔があります。
メルトダウンになった場合、自然に対流が起こって外気が建屋内に引き入れられます。
日本の完成間近の原発2基のうち1基もこれです。
新しい原発ができるたびに古いタイプの原子炉を停止していくべきと思います。