カンブリア紀の捕食者がオルドビス紀まで繁栄していたことがわかりました。
あ、突然失礼しました。
生物が爆発的な進化を遂げた時代が「カンブリア紀」です。
それまでの生物は、シアノバクテリアみたいな例を除けば、ほとんど微生物でした。
先史時代の海生捕食動物、アノマロカリスの長さ1メートルに達する化石が、モロッコ南東部で発見された。
これまで発見された中で最大となる今回の化石は、アノマロカリスが従来考えられていたより数千万年も長く、恐竜が登場する以前の海を支配していた可能性を示唆している。
現在の甲殻類へとつながる進化過程の初期に出現したアノマロカリス類(anomalocaridid)は、現在のエビやコウイカを思わせる姿をしていた。
ただし、この化石動物の場合は、頭部や、円形で硬く、カメラの絞りのように開閉する口から、とげのある肢が生えていた。
過去に発見されたアノマロカリスの化石は、体長が0.6メートルほどだったことを示しており、既にカンブリア紀(5億4200万~5億100万年前)における最大の動物とみなされていた。
カンブリア紀は爆発的な進化が起こり、ウミユリや海洋性の環形動物など、無脊椎動物の多様な新種が登場した時代だ。
しかし、今回見つかったアノマロカリスの体長は、従来の化石を30センチほど上回り、この体節動物がこれまでの想定より大きな体をしていたことを示している。
「これほど大きなエビなら、軍隊を1カ月でもまかなえただろう。
巨大で、しかも間違いなくかなりの美味だったはずだ」と、研究の共著者でイェール大学ピーボディ自然史博物館の責任者、デレク・ブリッグス氏は笑う。
今回見つかったアノマロカリスの化石は、別の意味でも研究者たちに衝撃を与えた。
驚くほど“若い”化石だったのだ。
今回の化石は、“わずか”4億8800万~4億7200万年前のオルドビス紀のものと判明した。
したがって、アノマロカリス類の生息期間は、従来の化石が示唆するより3000万年長かった可能性がある。
アノマロカリス類の化石はカンブリア紀からは広く見つかっているが、「約5億1000万年前を境に、化石記録からぱったりと姿を消す」とブリッグス氏は述べている。
「問題は、彼らは絶滅したのか、それとも単に化石が見つかっていないだけなのかということだった」。
答えは後者だったようだ。
軟組織は化石化する前に分解されることが多いため、軟体動物が化石記録から発見されることは少ない。
幸いなことに、モロッコで見つかった化石の場合は、大量の土砂に埋もれていたために軟組織が保存された。
カンブリア紀には、現在の生物につながるすべての種の原型が現れました。
アノマロカリス類は、頭の前の2本の触手だけが見つかっていたため、エビの一種と思われていました。
「カリス」というのはエビを意味するのです。
だから同じ頃に甲殻類の祖先が誕生して「ネクトカリス」という本当の甲殻類も発見されています。
ところが、それがこんな奇想天外な形の生物の一部だということがわかりました。
発見者がエビと言っているのは、そんなわけで実際エビの仲間である甲殻類では全然ありません。
じゃあ何かというと、環形動物から節足動物に進化する中間の種ではないかと思われています。
環形動物とはミミズやゴカイの仲間で、節足動物とはエビやカニの仲間の甲殻類やサソリやカブトガニの仲間である鋏角類などです。
ミミズやゴカイとエビやカニは、全然違うじゃないかと思われるかもしれません。
でも、そうでもないんです。
昆虫のイモムシが蝶に変身するのは進化の過程を発生の段階でたどっているのです。
カンブリア紀には、われわれの祖先である脊索動物も生まれています。
脊椎の元になる脊索を備えた生物がピカイアです。
これがやがて魚類となるのです。
カンブリア紀に続くオルドビス紀には甲冑魚が登場します。
魚類はその後ずっと海の主役であり続けます。
アノマロカリスは、その魚類や甲殻類の追われる形で絶滅したのでしょう。
さて、アノマロカリスは美味だったのでしょうか?
発見者はエビと同様と想定していたわけですが、もちろん甲殻類じゃありません。
私は、エビと類縁関係にあるイナゴの佃煮を食ったことがありますがエビの佃煮と言われてもわからない代物でした。
アノマロカリスも同様に美味だった可能性はあります。
これを喜んで食ったのは、われわれの祖先である脊椎動物の甲冑魚だったかもしれません。