アフガニスタンは産油国でもなく、アメリカにとって魅力のある国ではありません。
そんな貧しい国がアメリカに安全保障上の保護を求めたのですが、アメリカは断ってしまいました。
そこでしょうがないので、アメリカと世界の覇権を争っていたもう一方の雄であるソビエト連邦に頼むと、こっちは軍事顧問団を送ってくれました。
アフガニスタンにシンパを作りたいソ連の軍事顧問は「貴国の若者は優秀である。わが国で教育を受ければ貴国の将来に役立つ人材となろう。」と勧めます。
馬車からソ連の飛行機に乗りモスクワについた若者は初めて見る都会に目を見張りました。
すっかり共産主義に心酔した若者たちは、帰国後共産主義革命を起こそうとします。
友好関係を深めたかっただけのソ連は驚きました。なんて余計なことをしてくれるのだろうと。
しかも、革命は失敗して彼らはソ連に救出を求めます。
ソ連崩壊後の情報公開でわかったことですが、ソ連はアフガニスタンの侵攻したくなかったのです。
しかし、ソ連で学んだ若者を見殺しにできないとアフガニスタン侵攻作戦を嫌々ながら始めます。
損得じゃなくて浪花節みたいなところがあったのです。
ソ連の軍事顧問団って結構いい奴だったのです。
驚いたのはアメリカも同じで、なんであんな何もない国に侵攻するのだろう?と不思議に思います。
合理的理由のわからないアメリカは、アフガニスタンの更に南の産油国が目的だろうと勝手に判断します。
ここでアメリカは、直接介入するのではなくゲリラ組織を軍事訓練してアフガニスタンを「ソ連のベトナム戦争」にさせることにしました。
当時のレーガン大統領は、部族長らをワシントンに招いて嬉しそうに記念写真を撮っています。
イスラム圏というのは、こういう戦争が起こると国を超えて義勇兵が集まるのです。
サウジアラビアの裕福な家庭に育ったウサマ・ビンラーディンもその一人でした。
アメリカの目論見どおりソ連はゲリラとの泥沼の戦争に陥ります。
しまいには、勘違いしたランボーまでやって来て「お前らにアメリカの石油利権は渡さん!」と結構いい奴のソ連軍事顧問団にムチャクチャします。
可哀想にソ連はこれをキッカケに崩壊への道を辿ります。
一方アメリカは唯一の超大国となり、世界で戦争を続けます。
日高義樹さんによれば、アメリカは平均2.5年ごとに戦争をやっているだそうです。
湾岸戦争でビンラーディンの国サウジアラビアに派兵したアメリカは、戦争後も軍を駐留し続けます。
アメリカに国を売るのかと、サウド王家を批判したビンラーディンは国籍を剥奪されます。
アフガニスタンでアルカイダを組織し、各地でテロ活動をしました。
9.11同時多発テロでその名を世界に知られることになります。
アメリカは自ら育てたビンラーディンに酷いしっぺ返しをされたわけです。
復讐に燃えるブッシュ大統領は、ビンラーディンを賓客扱いしていたアフガニスタンのタリバン政権に身柄引き渡しを要求します。
タリバンは当然アメリカにアッカンベをします。
怒ったブッシュはアフガニスタンの乗り込んで、タリバン政権を崩壊させます。
ところが、そのままアフガニスタンにこだわっても石油が湧いてくるわけでもありません。
ブッシュは今度はイラクに行ってしまいます。
ここは批判も多いことですが、大量破壊兵器が見つからなかったとはいえ、サダム・フセインがクルド人に対し毒ガス兵器を使ったのは事実です。
一応、独裁政権を打倒して民主的な選挙で選ばれた政府を樹立させます。
その間も、ビンラーディン追求作戦は続きますが、アフガニスタンとパキスタンの国境に近い山岳地帯を逃げ回っていると思われていました。
ブッシュのイラク戦争を批判して、アフガニスタンでテロとの戦争を始めたオバマは外交にも軍事にも無知でした。
だから、ブッシュが無価値と判断したアフガニスタンの戦争にこだわりました。
しかし、ここで戦ってもアメリカは何も得るものがありません。
アメリカ軍の司令官は2年で戦争を片付けると大統領に約束しましたが、ゲリラ戦というのは戦果がはっきりとわかりません。
何時どこから攻めてくるかわからない敵に神経をすり減らします。
昼間タリバンに攻撃を仕掛けると、敵は戦わずクモの子を散らすように逃げてしまいます。
それでいてアメリカ兵がタバコを吸いに基地から一歩出ると、タリバンの狙撃兵に頭を吹き飛ばされるのです。
そこでアメリカは手加減している場合でないと最強兵器を投入します。
エイブラムスM1戦車、1km先から狙撃してくるタリバン兵の狙撃位置一帯を殲滅させてしまいます。
この戦車、5km先の戦車を破壊できます。生身のゲリラ兵など跡形もなくなってしまいます。
ソ連のアフガン侵攻を思い出させるという理由で投入を躊躇していましたが、タリバンには死神のような存在です。
無人攻撃機プレデター&リーパー、人間が乗らないのでパイロットは地上で交替しながら24時間攻撃態勢でいられます。
これで多くのタリバン幹部を爆殺しています。捕虜にして裁判するより効率がよいです。
先日、タリバン兵500人が刑務所を脱獄しましたが、すでに何人かは爆殺されていることでしょう。
プレデターは肉食系=捕食者という意味で、リーパーはズバリ死神という意味です。
やっと戦争が終わらせられるという兆しが見えてきたとき、「ビンラーディン殺害」はオバマにとっては朗報です。
山岳地帯の洞窟どころか、パキスタンの首都イスラマバード郊外の大邸宅(英語でマンションだが共同住宅ではない)で家族と暮らしていました。
パキスタン政府は否定していますが、パキスタンが保護していたのでしょう。
なんらかの理由でパキスタンはアルカイダを裏切ってアメリカと手を結んだ。
何があったのか今後明らかになるのか、あるいは明らかにされないのか気になるところです。
ところで、アルカイダという組織は軍隊のような指揮命令系統の整った組織ではありません。
ビンラーディンが死んだところで、組織自体に大きな影響が出るものでもありません。
ただ象徴的な意味があります。
アメリカ側の士気が上がるとともに、アルカイダとタリバンには精神的打撃です。
今後、アルカイダ側は報復テロが計画されるでしょうが、9.11のような大掛かりで計画的なテロは資金的にやりにくくなるでしょう。