生物が生きて増殖するのに使う主要な6元素の一つ、リンの代わりにヒ素を利用する細菌が、米カリフォルニア州の塩湖「モノ湖」で初めて見つかった。米航空宇宙局(NASA)などの研究チームが論文を2日付の米科学誌サイエンス電子版に発表した。生物の概念を変える発見であり、地球外生命を探索する際にも視野を広げる必要があるという。
モノ湖はサンフランシスコの東方、シエラネバダ山脈の麓にある。湖水は塩分濃度が高く、アルカリ性で、人間など通常の生物にとって有毒なヒ素が多く含まれている。
湖底で発見された新細菌は、大腸菌と同じ「ガンマプロテオバクテリア」のハロモナス類に属し、「GFAJ―1」株と名付けられた。リンは遺伝情報を担うDNA(デオキシリボ核酸)やたんぱく質、脂質の主要な成分だが、リンが全くない環境で培養すると、代わりにヒ素を取り込んで利用し、増殖することを実験で確認した。
ヒ素は、元素の周期表で窒素やリンと同じ15族に属し、化学的性質が似ている。昔から農薬やネズミ退治の薬、毒薬に使われてきたのは、細胞内に容易に取り込まれ、さまざまな酵素の働きを阻害するためだ。しかし、研究チームはヒ素が毒にならず、リンの代わりになる細菌が存在すると予想し、探し当てたという。
地球上の生物が使うリン以外の主要元素は水素、炭素、窒素、酸素、硫黄の五つ。周期表の初めの方に位置し、宇宙や地球での存在量が多いため、生物が利用するようになったと考えられてきた。
NASAはこの発見の意義について、日本時間3日午前4時からワシントンの本部で記者会見を開く予定。
【時事通信】
これは周期表の一部を切り取ったものです。
水素のほかに、炭素、酸素、窒素、リン、硫黄が生命の必須元素と言われています。
ご存知のように、周期表とはメンデレーエフが原子量の順に元素を並べていくと周期的に似た性質の元素が出てくることを発見し作成したものです。
当時はその原因が分からなかったため、学会からバカにされていましたが、当時発見されていなかった元素が表の空白を埋めるとその性質が周期表から予想されていたものと同じことが分かってきました。
やがて、原子の構造が明らかになり、原子の最外郭の電子配置によって元素の性質が似てくることがわかり周期の現れる原因が明らかになりました。
周期表の縦列のことを「族」といい似た性質の元素になります。
記事中にもありますが、ヒ素が毒になるのはリンに化学的性質が似ているからです。
ヒ素が猛毒であることに驚きがちですが、化学的性質から考えれば、それほど不思議ではありません。
そこからリンの代わりにヒ素を利用する生命が存在すると予想して、それを探し当てたというところに今回の発見の素晴らしさがあります。たまたま見つかったわけではないのですから。
地球に存在する元素のうちヒ素よりリンの方が多いので、生命はより入手しやすい元素を利用しています。
しかし、リンが少なくヒ素の方が入手しやすい環境では、こんな進化もありうるという生命の驚異を感じます。
「NASAから宇宙人発見の発表がある。」と、ずいぶん勇み足な憶測がされた今回の発表ですが、全然ちがう話ですね。
宇宙には、地球型生命体以外の形の生命がありうるという発表だったわけです。
ということは、表をもう一回見ていただくと、炭素と珪素=シリコンが同じ「族」です。
炭素の代わりに珪素=シリコンの方が入手しやすい環境の星では、シリコンを使った生命体が存在するかもしれません。
シリコンの皮膚で太陽光発電して、シリコントランジスタの脳細胞を持った生命がいたら面白いですね。