梅雨明けして夏本番、35℃を超える猛暑日が続くこのごろです。
夏の風物詩「お化け屋敷」の特集番組なんかやっていますが、
日本の幽霊には「足がない」のが定番になっています。
なんで幽霊に足がないことが定番になったかというと、これははっきりしています。
すなわち、江戸中期の絵師で円山応挙の書いた絵があまりに有名で、その足元が消え入っている姿がその後の幽霊の足を消滅させました。
応挙は人気が有りすぎて、贋作がメチャメチャ多い画家なのです。
専門家をして「応挙と幽霊は本物が出ない」と嘆かすほどです。
そんなわけで、その応挙が描いたという幽霊自体が応挙の真筆かという笑えない話もあります。
そんな幽霊の足がなくなった時代に、もう一つ足のない伝説が輸入されました。
極楽鳥です。
おそらく18世紀(1700年代)にオランダ人によって持ち込まれたのでしょう。
東南アジアからニューギニアに生息する極楽鳥の剥製です。
極彩色の美しい羽を持ち、なかでもシンガポールとジャワ島に生息する種が珍重されました。
日本には「極楽鳥」ではなく「風鳥(ふうちょう)」という名で伝えられました。
それ自体が伝説を具現化しています。
つまり、風鳥は足がなく生まれてから死ぬまで飛び続ける鳥で、風をエサとして風以外食わないというのです。
ヨーロッパ人が極楽鳥を初めて知ったのは、16世紀のマゼラン艦隊が持ち帰った剥製標本によってでした。
それ以前にも名前だけは知っていたようではありますが。
剥製ですから腐らないように肉も骨も取り去ってあるわけですが、ご丁寧に足も取り去ってあったのです。
しかしながら、それを見て元々足のない鳥だと信じるということも信じがたい話です。
古代ギリシャのアリストテレスも「すべての鳥には足がある」と述べているほど自明のことが、16世紀になって極楽鳥伝説を生むことになったかは謎です。
そう、突然なのです。アリストテレスから16世紀の間のどこかに足のない鳥の伝説があったかというと、それはなかったからです。
アジアから香辛料とともに持ち込まれた貴重な鳥は、伝説を生み出したのです。
それも、最近でいう「都市伝説」のようなものです。
誰かが面白がって、足がないので生まれてから死ぬまで飛び続け、空気しか食べない鳥の伝説を広げたようです。
その誰かというのは、スペインの博物学者フランシスコ・ロペス・デ・ゴマラです。
どうもこいつが面白がってこんな説を広める元を作ったらしいのです。
20世紀の動物学者ヘルベルト・W・ヴェントが調べたのですが、まあそこまで調べなくてもいいんじゃないかとも思います・・・・