ルチアノ・パヴァロッティ、ホセ・カレイラス、プラシド・ドミンゴ
3大テノールはいずれもラテン系です。
イギリス人のポール・ポッツさんがテノールのスターになるのは珍しいことなのかもしれません。
ただ、ポッツさんが遅咲きでもスターになれたのは、歌手だったからです。
クラッシック音楽でピアノやバイオリンなどは、幼くして才能を開花させるアーティストが多いです。
ところが、声楽は本人自体が楽器であるという特性があります。
フルオーケストラにも負けないあの大きな声を出すために歌手たちは訓練を積む必要があります。
そんなわけで、声楽家になるのはわりと年齢が高くなってからということになり、ポッツさんの一発逆転があったのです。


楽器としての人体は非常に小さいものです。
大きさとしは、木管楽器で最も小さいピッコロと同等くらいの大きさしかありません。
亡くなったパヴァロッティの堂々たる体躯のうち、楽器と言えるのは気管と音源たる声帯から音響放射体たる口まででしかありません。
堂々たる胴体や足腰はなんの役にも立っていません。
ドミンゴも堂々たる体躯をしていますし、死にそうなはずの椿姫を巨体の女性歌手が歌うのを見て身体がでかくないと大きな声が出ないと思いがちですが、そうじゃないんです。


どうやって大きな声を出すのかというと、声帯より前の空気の動きをコントロールして、ブランコが大きく揺れるために適当なタイミングで押し出すのと同じように圧力をかけます。
そうやって同じ力でも大きな振動を取り出せるようなタイミングを訓練で覚えるのです(非線形イナータンス)。
また、周波数によってトランペットのように口をメガホン型に大きく広げたり、口をすぼめて気管で共鳴させる逆メガホン型のテクニックを使っています。


じつは人が楽器としていかに豊かな歌声を奏でられるのか最近まで、科学的に説明がつかなかったんです。
一般の楽器のように入力と出力が比例(線形)するのと違って、なんでオペラ歌手はあんなデカイ声が出るのか?
最近になってようやく音源と共鳴器の相互作用が非線形効果によっていることがわかってきました。
ホントに人体って不思議ですよね。