「洗練された科学技術は魔法と区別がつかない」
アーサー・C・クラークは著書の中で語っています。
けだし、名言ですねえ。
現実の世界でも、最新の科学技術は確かに魔法のように感じることがあります。
科学技術が魔法を現実化していると言えましょう。
科学的に可能であって成立しない技術はなかった、といいます。
できないとすれば、理論か材料に無理がある。
また、カオスのところで述べたように、天気予報みたいに科学的に不可能なことが明らかになっている技術もあります。(一定期間の近似値以上の予報はできない。)
我々は多くの小説や映画で馴染んでいる「ワープ航法」ですが、これは1000年以内に人類が手にするのは困難かもしれません。
理論的にワームホール内に質量が入ると、不安定になるからです。
そうは言っても、ワームホールを高速移動させてタイムマシンを作る可能性があるという理論があります。ただし、どうやって動かすかについては、No Ideaなのです。
故カール・セーガン博士は科学者でありSF作家でもありました。
ジョディ・フォスター主演で映画化された「コンタクト」は、明らかにワームホールを使って異星人とコンタクトするストーリーです。
出発時と同じ時間に戻る設定も、ワームホールタイムマシンでしょう。
しかしながら、セーガン自身は地道に宇宙に向かって黙々と電波を発し続けました。
クラークの描く3001年の世界は、魔法だらけですが残念ながら「ワープ航法」もスタートレックの「転送」も登場しません。
現代の技術の延長で考えられる恒星間飛行技術に、「オリオン」計画と「ダイダロス」計画があります。
どちらも化学ロケットではなく、核融合を利用します。
いわばミニ水爆を使った推進システムです。
水素爆弾のぺレットを船外でレーザーによって起爆します。
このシステムで光速の10%まで加速することができます。
しかし、それでは相対性理論的速度言いかえればローレンツ短縮が十分に意味を持つ速度にはほど遠いと言わざるをえません。
光速に近い宇宙船ができるほどの技術が得られるまで、1000年かかるのか1万年かかるのかはわかりません。
ただ、その速度になると宇宙にわずかに存在する水素原子等が光に近い速度で宇宙船を貫き乗組員がたちまち黒焦げになる恐れがあります。
それを避けるために、強力なレーザーを前に照射し、電子を原子核から引きはがし磁力で電離した原子核を除けて飛ぶというideaが示されています。
でも、その前にどうやってそんな推進力を得るかのideaがありません。
科学者はスタートレックのファンほど将来の技術予測の楽観的ではなさそうです。