誤謬(ごびゅう)というのは、「誤」も「謬」も間違いという意味です。
これは神戸生まれの台湾系アメリカ人のリチャード・クーさんが、10年くらい前に書いていたのが最初に読んだものです。
この当時、公共事業の削減によって財政を立て直すか、景気刺激のため公共事業を推進するか議論されていました。
クーさんは、当時の日本を分析していました。
企業は、借入金を減らすため投資を控え、雇用を増やさず、賃金を抑えます。
個人は賃金の上昇が見込めないし、雇用も不安であるため、住宅や耐久消費財への支出を控えます。
国や地方公共団体は、歳入が伸びないから歳出も抑えます。
それぞれの行動は、それぞれに合理的です。すべてが合理的な判断をして行動しているのですが、その結果は景気後退という誤った状態になっています。
これを「合成の誤謬」と呼びました。
昨今の原油高も「合成の誤謬」による説明がされています。
石油元売会社は精製設備を持っていますが、余剰設備は持ちません。
それはその方が経営効率がよく無駄がありません。
高値になったら需要が下がるかといえば、中国やインドが発展するため更に石油の消費が必要になります。
高値でも自国の成長を維持するために買うのは経済合理性にあっています。
サブプライム問題で、株や債券が下がると投資ファンドは別の投資先を探します。
これも合理的な考えです。その投資先が原油相場に向かうのも利益を優先する考えには適っています。
今回も、各プレーヤーがそれぞれ合理的な判断と行動を採りますが、それが結果として誤った状態を招いています。
原油の場合は、公共事業じゃ解決できない問題なので、残念ですが日本が主役にはならないでしょう。
投資マネーを他に向けることができれば、原油の価格が下がることがわかります。
たぶん誰かができるのです。
それをさせない勢力もあって、非常に複雑ですねえ・・・