「政事乱るるは、すなわち冢宰(
ちょうさい)の罪なり」。政治の
乱れは、一国の宰相の罪責である
という意味の中国の古典・荀子の
警句である。日本学術会議の任命
拒否で杉田和博官房副長官による
陰の差配ぶりが国会で指弾されて
いる。菅義偉首相が安倍内閣から
継承したこの「官邸ポリス」は加
計学園疑惑でも暗躍ぶりが指摘さ
れ、今回も参考人招致が求められ
ている。衆参の予算委員会で、何
度も答弁不能状態に陥る菅首相の
姿は、改めて宰相としての資質の
無さと、恣意的に権力を行使する
薄汚さを思わせる。
昨日の衆院予算委では、杉田副長
官の新たな疑惑が浮上した。立憲
の本多平直氏によると、杉田副長
官が菅首相と親しい「グルナビ」
の滝久雄氏を文化功労者に選考し
たというのだ。同社は「GoTo
キャンペーン」で多大な利益を上
げたことで知られる。本多氏は情
実人事ではないかと追及した。
滝氏の関連会社は菅首相の政治団
体に多額の政治献金をしており、
伊藤詩織さんへのレイプ事件を起
こした元TBSの山口敬之に資金
援助をしていた人物でも知られる
。安倍前首相の加計学園疑惑で「
国家の私物化」批判が高まったの
と同じように、また杉田副長官の
関与が発覚。菅首相への利益誘導
が繰り返されたのではないか。
関係者の証言によると、菅首相は
滝氏に「山口氏の家賃を払ってく
れないか」と依頼したといい、実
際に家賃月42万円が支払われたと
いう。そもそも滝氏が文化功労者
の資格があるか極めて疑わしい。
二人一組で打つ「ペア囲碁」を普
及させたという選考理由も飾り立
てただけの経歴で菅首相に近いと
いうだけで選ばれた疑いが募る。
文化功労者は年金として350万
円を終身にわたって受け取れる。
そうだとしたら、「モリ、カケ、
サクラ」に匹敵する「菅スキャン
ダル」に発展してもおかしくない
ほど腐臭が漂う。
文科省事務次官だった前川喜平氏
は文化審議会の人選で、杉田副長
官から大臣了解の人物を「好まし
くない」と差し替えを要求された
と証言している。前川氏は「出会
い系サイトの店」に出入りしてい
たのを杉田副長官に注意されたあ
げく、読売新聞にリークされた。
官僚を支配下におくための脅しを
駆使していたのである。菅首相は
官房長官当時から杉田副長官を「
官邸ポリス」として重用していた
ことは明白である。日本学術会議
の任命拒否も一連の「杉田差配」
の一つだったとみられる。
一連の疑惑は菅政権の権力構造の
醜悪な姿を見せつける。全容を知
るためにも杉田副長官の国会招致
が欠かせない。「官邸ポリス」に
よる陰の権力行使にストップをか
けなければ、また民主主義国家の
土台が棄損し続ける。
【2020・11・5】