8月1日から臨時国会が開かれる
が、自民党は、10議席も減らした
参院選を忘れたような驕りが目立
つ。中でも「改憲停滞なら(衆院
)議長交代」と発言した萩生田光
一幹事長代理の専横ぶりは突出し
ていた。「少なくとも議論すべき
だという国民の審判は下った」と
総括した安倍晋三首相の意を汲ん
だつもりだろうが一議員の分を超
えた振る舞いのエスカレートぶり
に驚く。「三権の長」の人事まで
に口を出す「安倍側近」に改めて
「何様か」と問いただしたくなる。
そもそも、国会の議長選出は与野
党合意で決まるはずだが、201
7年が任期だった大島理森議長再
選をごり押ししたのは政権与党だ
った。それが、今度は衆参両院の
憲法審査会が首相の思惑通りに進
まなかったことを、大島議長に責
任をかぶせ、交代させようとする
のは、専横極まれりと言うしかな
い。
一昨年以来の「モリカケ国会」で
首相出席の予算委員会を満足に開
かず、大島議長から「議論を尽く
すべき」と勧告された経緯がある
。それも首相が気にくわなかった
のかもしれない。萩生田幹事長代
理自身が、前任の官房副長官時代
、加計孝太郎氏が経営の加計学園
系の千葉科学大学から毎月報酬を
得ていながら、文科省の大学設置
審設置に口先介入した疑惑の中心
人物である。本来なら、謹慎すべ
き立場でありながら、安倍首相か
ら幹事長代理に抜擢され、ますま
す増長し始めた。
今年4月には10月の消費増税延期
の可能性をほのめかし。解散風を
あおった。当時、自らの総裁4選
に向けダブル選のタイミングを測
っていた安倍首相が萩生田氏に観
測球を上げさせたという見方が広
がったことがある。今度も改憲議
論を加速させたい安倍首相の願望
が込められているのは明らかだろ
う。
そんな大事な政局の節目に関わら
ず、メディアは相変わらず韓国叩
きと吉本興業のスキャンダル報道
に熱を上げている。今メディア、
特に免許を握られている放送会社
は政権からにらまれないように、
「政治の内実からいかに有権者の
関心をそらすか」だけに心を注い
でいるように見える。
8月は有権者の暮らしの先行きに
ついて、相次いで政治判断がされ
る重要な時である。安倍首相がト
ランプ米国大統領から参院選に先
送りしてもらった日米貿易交渉で
の譲歩の中身を明らかにしなけれ
ばならない。「老後年金2000
万円不足」論議の中、その前提に
なる5年に一度の年金財政検証の
公表も迫られている。政府がずっ
と出したくなかった名目成長率は
1%前後で推移していると見られ
将来最悪になりそうな給付率を追
及されるのは必至だ。現役世代の
平均手取り収入に対する、夫婦が
受け取る「所得代替率」はこの公
表によって、一挙に62%から20
44年には50%まで下落しそうで
、待ち構える消費増税と重なって
、強烈な政権批判がわきあがるの
は間違いない。
この夏、テレビ番組が報道すべき
は、そんあ生活直撃の関連ニュー
スであるべきだ。「吉本スキャン
ダル」を報じるなら、今春、吉本
新喜劇の舞台に立って選挙運動を
した安倍首相の異様な行動ぶりと
吉本興業幹部をつなぐ癒着と血税
約100億円が同社に流れるカラ
クリを検証すべきである。表面的
な報道だけでも「モリカケ」に匹
敵する「国家利権の私物化」の腐
臭が漂ってくるからである。
【2019・7・29】