法の番人も「モリカケの毒」 | 平野幸夫のブログ

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ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

 



「法の番人」が、こともあろうに自ら
データ改ざんに手を染めていたー
ー。外国人労働者の受け入れ拡大
に向けた入管法改正案の国会審議
中に出された法務省の集計は意図
的な改ざんの疑いが濃厚になった
。失踪した技能実習生への聞き取
り調査で、失踪動機の「低賃金」
を実際より低くみせるため、20
15年以降「質問項目になかった
「より高い賃金を求めて」を事後
、勝手に設定。そこに「低賃金」
と答えた回答者の数を算入してい
たのである。複数の省庁で公文書
を改ざん、隠ぺいしたのに誰も責
任を問われないという「モリカケ
の毒」が想像以上に霞ケ関の官僚
社会全体に広がり、国の根幹を蝕
んでいる実態を改めて見せつけた


先週末、新聞各紙は「ずさん集計
」(毎日)「調査に誤り」(朝日
)など、数字の過大算入がミスの
ように報じているが、その後の野
党の検証によって「高賃金を求め
て」は設問になかったことが判明
したという。後で、都合よく「低
賃金」を低くみせるための改ざん
は、一連の「森友・加計疑獄」で
財務省や文科省などが行った隠ぺ
い工作と同じ手口である。


先の通常国会での働き方改革法案
審議でも厚労省が政権に不都合な
調査数字を表に出さないため、ダ
ンボール箱をごっそり隠していた
ことが判明した。昨年来、政権の
公文書管理のあり方が政府の都合
よく狭められていたことに批判が
高まり、専門家らから保存、公開
の対象をもっと広げるべきという
指摘が相次いでいる中での、今回
のデータの意図的改ざんであり、
罪深い。


「疑某は成すことなかれ」


はかりごとは、疑問が少しでもあ
ればやってはならないと統治の心
構えを説いた中国「書経」の一節
である。役人が作った行政文書は
国民共有財産のはずだ。それを意
図的に隠したり、改ざんすること
は許されない。それを法の厳正な
執行を見守る立場の法務省の役人
が不正に関与、「エクセルファイ
ルデータの切り貼りに必要な作業
を忘れた」とお粗末な言い訳をし
ていること驚く。


衆院法務員会の葉梨康弘委員長は
森友学園の籠池泰典前理事長の証
人喚問で、「偽証だった」と刑事
告訴をにおわし、後に大恥をかい
た元警察官僚である。山下貴司法
務省も閣僚最年少で石破派への当
てつけのように、安倍氏首相から
一本釣りされた元検事だ。強引な
審議を進めようとする2人はどち
らも「法の番犬」だった誇りのな
く、「政権の愛玩犬」に成り下が
った振る舞いである。


改ざんを隠しきれなくなって、山
下法相は20日、「心からおわびし
たい。修正したい」と述べ、検証
チームの立ち上げを表明した。「
何を今さら」というしかない。メ
ディアも「ズサンだ」と報じるだ
けでは済まされない。


国柄を根本的に変えるかもしれな
い法案の拙速な審議をたださなけ
ればならない。日本に将来の希望
を託してくる外国人を温かく迎え
入れるためにも、過酷な労働実態
を隠すような改ざんを、もっと強
く指弾すべきだ。こんな出鱈目な
集計がまたまかり通れば、長時間
労働や低賃金の労働環境が維持さ
れてしまう。他国の人の人生まで
をも収奪することにつながるこの
法案は廃案にすべきである。


   【2018・11・21】