「米国逃避行」が不信増幅 | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。


まるで救命ボートに乗るように、
政権浮揚を狙った日米首脳会談は
、日本側にほとんど成果もなく終
了した。トランプ米国大統領は拉
致被害者帰国交渉だけを口約束し
たが、厳しい姿勢で貿易の二国間
交渉を迫ってきた。「蜜月時代」
をアピール、疑惑追及から逃れる
ように訪米した安倍晋三夫妻。加
計学園を「首相案件」と語ってい
た柳瀬唯夫前首相秘書官も同行さ
せ、セクハラ問題責任者の麻生太
郎財務相までもが国会了解なしに
渡米してしまった。政権トップと
ナンバー2の「米国逃避行」であ
る。改めて「対米隷属」しかない
無策ぶりを浮かび上がらせる。そ
んな時に読んだ気鋭の政治学者、
白井聡氏の新著「国体論 菊と星
条旗」(17日発売、集英社新書)
は戦後保守政治による政治と社会
の破壊ぶりを明解な論理で示し、
その深刻さを沈思させる。



フロリダで安倍首相を迎えたトラ
ンプ大統領の顔つきは、これまで
とがらっと変わり、首相に刺すよ
うな視線を投げ続けていた。安倍
首相の表情はその気配に押されて
か、当惑してひきつったような表
情が目立った。日本国内で一連の
疑惑の政治責任を問われている時
に、ゴルフに興じる二人の映像を
見せられて、有権者の怒りは募る
ばかりだ。そんななか、政権が期
待した最も注目された貿易交渉で
も鉄鋼・アルミの関税除外や早期
のTPPへの復帰はすべて先送り
にされた。「一体何のための訪米
だったのか」という疑問を多くの
人に抱かせた。それでも、何かほ
かに前進があれば、少しは評価も
できるが、獲得できたものは何も
なかった。


今回の訪米前から安倍首相はトラ
ンプ大統領から名指しで「日本は
長年米国に打撃を与えてきた」と
「口撃」され、世界に発信されて
いた。



訪米直前、安倍首相は「蜜月」が
ポーズだったことを思い知ったに
違いないが、それでも、のこのこ
と出かけて行かざるをえなかった
のは、それだけ国内で窮地に立た
されていたからである。そして結
局、予想通りほぼ手ぶらで帰らざ
るをえなくなった。



白井氏は、今回の訪米でまたあぶ
り出されたいびつな日米の経済関
係は「グロバリゼーションへの対
応・推進」の名の下に、米国企業
が日本市場進出へ参入する道筋を
作るために生じていると指摘する
。本来国民生活の安定や安全に寄
与するための規制や制度が論理上
、米国から「障壁」にされた結末
とみる。国民皆保険制度でさえ「
参入障壁」とみられ攻撃されてい
るのを危惧する。



そして対米隷属の現状を合理化さ
せようとする言説は「日本は独立
国ではなく、そうありたいという
意思すらもっていない」と結論付
ける。そして、ニーチェや魯迅が
喝破した「本物の奴隷とは、奴隷
であることをこの上なく素晴らし
いと考え、自らが奴隷であること
を否認する奴隷である」という思
考を紹介し、こう警告する。


「こうした卑しいメンタリティー
が『戦後の国体』の崩壊期と目す
べき第二次安倍政権が長期化する
なかで、疫病のように広がってい
ることである」



方々で末期的症状をみせているこ
の政権に、ぴったりあてはまる。
政治責任を回避し続ける安倍首相
に今後野党が追及を強めるのは当
然である。帰国後もこのまま昭恵
夫人や柳瀬氏らの証人喚問を拒否
し続けたり、麻生氏の引責辞任が
先送りになれば、野党は安倍首相
が自ら責任を果たすまで審議拒否
を貫いたら良い。内閣支持率は、
一部調査でついに20%台に落ち込
んだ。期待した訪米も底上げ成果
もなく、今後回復するのは至難で
あるはずだ。今は野党のバックに
世論が付いている。


   【2018・4・19】