悪い奴ほど出世する国 | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

 

「国の屋台骨が腐っている」ーー
。霞ケ関が人事の季節を迎え、国
会でウソの答弁を重ねた財務省の
佐川宣寿理財局長が次官級の国税
庁長官に就いた。レイプの被害者
「詩織さん」の事件もみ消しを、
自ら認めた中村格組織犯罪対策部
長の統括審議官への栄転情報と合
わせて、ずっと怒りがおさまらな
い。東京都議選の歴史的惨敗で「
反省」を口にした安倍晋三首相は
、官僚人事でも、それが口先だけ
だったことを示した。この国は「
悪い奴ほど出世する国」に成り果
ててしまった。メディアは早くも
政権延命を目論む内閣改造の観測
報道に追われるばかりで、森友・
加計学園疑惑に象徴される安倍首
相と官邸中枢による権力乱用の追
及など忘れたように見え、暗然と
する。



すべての官僚人事は、官邸が差配
する。安倍内閣になって、内閣人
事局が権限を握り、政権に都合が
良いキャリア官僚の選別と登用が
進んだ。それを一番実感するのは
警察人事である。



数年前、社会部の大阪府警担当だ
った当時、取材先だった大阪府警
刑事部長のY氏がその後警察庁長
官に栄転した。上京のついでに、
皇居を見下ろす霞が関の総務省ビ
ルにある警察庁長官室でY氏と歓
談したことがある。まだ第二次安
倍政権以前のことで、長官職は警
察人事の頂点だった。Y氏は任期
を無事務めあげ、警察組織から退
いた。そんな当たり前と思えたこ
とを、あえて書くのは現政権は、
これまでの人事構造を一挙に変え
たからだ。



今は警察のキャリア人事のトップ
は警察庁長官でなくなった。内閣
官房に警察庁局長職や警視総監職
の退官者を取り込んだ。現官房副
長官の杉田和博氏は警察庁警備局
長から内閣危機管理監に登用され
た。警視総監だった西村泰彦現宮
内庁次長も同じ内閣危機管理監に
取り立てられた経緯がある。本来
中立の立場を貫くべき官僚組織の
頂点かそれに準ずる立場だった退
職者が官邸に入り、今は長官職よ
り強い権力を持たされているので
ある。政治からの中立を忘れ、時
の政権に屈服したともいえ、警察
官僚を目指す若い世代は、もう長
官を目指さなくなる時代かもしれ
ない。


それでも中村格警視庁刑事部長は
今回人事で警察庁長官への最短コ
ースに立った。首相お気に入りの
ジャーナリスト、山口知之氏のレ
イプ事件の逮捕状執行を直前でス
トップさせた論功行賞と見られる
。山口知之氏の情報源でずっとレ
イプ事件もみ消しの相談相手だっ
た北村滋内閣情報官と一体となっ
て、不起訴にして、政権に貸しを
作ったとみられる。安倍政権が続
く限り、「吏道」を外れ、どんな
あくどい立ち振る舞いをしても、
とてつもない立身出世が約束され
ているのである。



このブログで何度も書いてきたが
、国会で「女性の人権を踏みにじ
った権力の乱用」との追及がもし
本格化していれば、安倍内閣の支
持率は20%台に落ち込んでいたは
ずだ。今ネット上で、民進党の追
及を止めさせたのは、同党代表代
行の安住淳氏と指摘されている。
中村氏が民主党政権時代に内閣官
房長官秘書官を務め安住氏と親し
かったことが背景にあり、説得力
もある。詩織さんと事件を国会で
追及しようとした民進党の別の議
員のためにも、安住氏の明解な釈
明が求められる。そして有権者の
期待を裏切った汚名の挽回のため
にも、次の国会以後も、官邸の腐
敗のあぶり出しを求めたい。近く
開かれる検察審議会でも、逮捕状
まで発行された事件の全容解明を
期待する。



一方、佐川氏の国税庁長官への抜
擢人事をどれだけの納税者が納得
するか。今なお霞ケ関では、ひそ
かに「佐川になるな。前川になれ
」と語られる。それほど佐川氏の
国会答弁は醜かった。開示すべき
文書を「文書は破棄した」「シス
テム上、更新され記録は残らない
」と平然と隠蔽し続けた。本来な
ら昇格どころか降格に相当する。
あの上目使いの表情は上ばかりみ
る「ヒラメの目」であると言って
も、言い過ぎでない気がする。納
税意識が落ち込むばかりだ。



今秋は早くも内閣改造情報がメデ
ィアにリークされ、小泉進次郎氏
や橋下徹元大阪市長の入閣もうわ
さされる。しかし、メディア自ら
が人気を作り上げた二人を検証も
なく、取り上げること自体、無責
任で罪深いことを知っておくべき
である。それより、週明けの国会
閉会中審査で、前川喜平前文科事
務次官が、官邸中枢の権力乱用を
どう何を語るか注目したい。



    【2017・7・8】