昏睡レイプ容疑もみ消し疑惑がつ
いに衆院本会議で取り上げられた
。逮捕状まで出ていた「政権お抱
えジャーナリスト」の山口知之氏
の身柄拘束を直前にストップさせ
たのは、菅義偉官房長官側近だっ
た中村格前警視庁刑事部長だが、
政府は「捜査は遂げた」と再捜査
を拒否した。「総理の意向はなか
った」と政府がかわそうとする加
計学園疑惑について、あす5日か
らの国会で、野党の追及が本格化
するが、この「隠蔽捜査」にも焦
点が向きそうだ。一部メディアの
世論調査で安倍支持率が急落し始
めた。改めて思い出させるのは、
英国の著述家、サミュエル・スマ
イルズの言葉である。
「世の中に悪が栄えるのは、我々
がノーという勇気を持たないため
である」
議会制民主主義が機能し、学ぶ点
の多い英国は3日後に総選挙が迫
る。一時「歴史的圧勝」を予測さ
れていたメイ首相は投票直前に批
判で火だるまになっている。それ
は在宅介護の自己負担が免除され
る保有資産額の上限が引き上げら
れ、算定に持ち家の価値を含める
というメイ政権の政策に「家を売
らなければならなくなると」とい
う強い反発が出ているせいである
。メディアは高齢者の在宅介護の
自己負担の見直しを「認知症税」
ととらえ、苦境に立ったメイ首相
は討論会まで欠席したという。
選挙結果はどうなるか分からない
が、注視している。その理由は、
日本でも高齢者に負担増を強いる
介護保険の改正案が成立したため
だ。今年8月から18万人の「高額
介護サービス費」が月3万720
0円から現役並みの所得がある人
と同額となる4万4400円に増
額される。共謀罪、森友・加計疑
惑の陰で、政府は社会保障費をア
ップさせ、家計を圧迫させる。他
にも与党の「1億総活躍推進本部
」が原則65歳の年金支給を70歳に
引き上げる提言を行った。多くの
人に将来不安を呼び起こすこんな
看過できない政策にも、あまり有
権者の関心は深まらない。
北朝鮮のミサイル発射で政府が危
機を過剰演出、有権者はまるで無
思考状態になっているかのように
内政の暴走と破たんに目が向かな
い。先日、ある商業団体で会社経
営者の方々に、最近の政治を語る
機会があった。アベノミクスの行
き詰まりや利権政治のひどさを語
っても、何人もから「安倍首相の
ほかに人がいない」「メディアは
問題点を知らせない」などの逆質
問を受けた。問題ごとに丁寧に答
えたが、多くの人に共通していた
のは、日々のニュースに無関心で
歴史的な背景を知ろうとしないこ
とだった。それを偉そうに「反知
性主義」などというつもりはない
が、英国のように政治は生活に直
結している意識が日本の有権者に
はあまりに希薄過ぎるのではない
か。「だって(記事や放送で)知
らせてくれない」「学校で近隣国
との現代史など教えてくれなかっ
た」などとメディアや教育のせい
にするのは、最近の若者らの多く
にも似ていた。民主主義とは有権
者一人一人が学んで築き上げるも
のである。自ら判断せず、他人任
せにしていたら、どんな結末にな
っても受け入れざるを得なくなる
。
サミュエル・スマイルズが政治へ
の無関心さを警告した世界的によ
く知られる言葉がある。
「一国の政治というものは、国民
を映しだす鏡にすぎません。……
どんな法律や政治をもっているか
、そこに国民の質が如実に反映し
ているか。……無知で腐敗した国
民には腐りはてた政治しかありえ
ないのです」
どの国でも政治家や有権者が深く
心に刻むべき言葉だろう。国内の政
治に照らして、共謀罪、森友・加
計疑惑、レイプ事件もみ消しなど
当てはめて、世論の動向をみると
、わずかながら有権者の政治意識
に変化の兆しも見え始めた。政府
寄りとみられる日本経済新聞の世
論調査では、安倍内閣の支持率が
先月下旬に52・1%あったのが、
月末には26・7%に急落、加計学
園疑惑の政府説明に対して、実に
81・4%が納得できないとし、前
川前文科次官の説明を74・1%を
納得できるとした。同様の結果は
、北海道新聞の世論調査結果にも
表れている。もしかしたら、大き
な潮流がおき始めているのかもし
れない。そうだとしたら、どこか
まだ救いを感じる。
安倍首相が出席する週明け国会の
集中審議では、民進党が若手議員
を質問者に予定している。もし稚
拙な追及で現状の追認を許せば、
有権者の怒りが政府と同じように
向かうだろう。前川前次官の証人
喚問や文書公開が実現させられな
ければ、審議ストップか議員辞職
ぐらいの覚悟が求められている。
暴走を続ける安倍政権を止めるに
は、自らの職を賭するような行動
が必要だろう。全容解明を支持し
ない有権者は少ないことを、改め
て心に銘じてもらいたい。
【2017・6・4】