歴史の審判はもっと早く下されても
いいのではないか。外務省の外交文書
のたびに、そう思わせる。今回も作成
から30年が過ぎた文書が閲覧できるよ
うになったが、国会で論議になった武
器全面禁輸や沖縄返還時の密約などに
ついて、当時の政府がいかに国民を欺
く判断を下していたかなどが改めて露
呈された。「国益のため」という言葉
がよく情報開示をしない理由として挙
げられるが、よく検証すると、結果的
にそれが国益に結びついていないこと
が多い。
今回の公開で最も目を引いたのは、
1976年当時首相だった三木武夫氏
が、憲法と法律(外為法)を根拠に全
面禁輸にしていたことである。この判
断があったからこそ、歴代内閣は対外
的に平和国家としての歩みを広く認知
され、経済優先の軽武装国家として繁
栄できたのである。外交文書は政府上
層部の強い意向によって「慎重に対処
する」から「慎むもの」と強い表現に
変わったことが明らかになっている。
つくづくリーダーの意志によって政策
に魂が入ることが分かる。今は「それ
にひきかえ……」と思わせ、武器輸出
相手国の紛争に直接的にも間接的にも
関与を強めていつ。武器輸出相手国に
敵対する国や勢力から日本が狙われる
リスクが高まるのは必至である。
この文書公開がもっと早ければ、国
会論議がより深まっていたのは確実で
、昨年、武器輸出緩和が一内閣の閣議
決定だけで、これほど拙速に行うこと
はできなかったはずである。
同時に公表された沖縄返還時の基地
現状回復費を密約で日本側が負担した
ことも、その後の外務省沖縄返還交渉
密約事件の展開は変わっていたことで
あろう。
驚いたのは、密約締結直後から日本
側が米国に「新聞記者から照会があっ
た時には『一切知らない』と応答して
ほしいとわざわざ頼んでいたことであ
る。この文書で当時の外交官らが背信
的職務を遂行していたことが明らかに
なったわけで、公電を入手した毎日新
聞記者の不当逮捕ももっと早くから指
弾されたはずである。歴代政権で最も
米国に隷属的な現政権に対しても、も
っと対米交渉の情報開示を迫れる根拠
になったかもしれない。
外交情報の不開示期間が30年という
のはあまりにも長すぎる。政府にとっ
て不都合なことを隠すための期間であ
ってはならず、短くて行くための合意
を求める取り組みもすべきではないか
。それこそが長い目で見れば、国益に
かなうはずだ。
特定秘密保護法の施行でますます政
府に都合が悪い情報が明らかになりに
くい状況が強まる中、今回の外交文書
の公開を単に歴史資料の開示と見るの
ではなく、これからの日本の針路を示
す羅針盤的役割を読み取っていかなけ
ればならない。
【2015・1・16】