晩秋の大雪山にときめいた青い池 | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。



パッチワークのような畑を貫く白樺
街道沿いはカラマツの葉も散りかけて
もう晩秋の気配だった。北海道・旭川
から気ままに飛び乗った路線バス(道
北バス)は、思いもしない世界一と称
される絶景が見える大雪山国立公園の
スポットに連れて行ってくれた。それ
は「美瑛の青い池」と呼び、幽玄さを
放ち、しばらく言葉を失うほどの美し
さだった。



 「世界一」と称したのは決して大げ
さな自分の主観からではない。米国・
アップル社の壁紙に採用された美瑛町
の写真家、ケント白石氏の青い池の写

真は一昨年、サンフランシスコの「ナ

ショナルジオグラフィック」主催の写真

展で、「世界一美しい画面」と評価され

、iPhoneの壁紙にもなった。




 そんなことを知らずに「久しぶりに
美瑛の景色が見られたら」と飛び乗っ
たバスの運転手が「今年の夏は半分く
らいが外国人だった。世界中に知られ
た景色が見れるよ」と教えてくれ、行

く気になった。


 旭川から約1時間半の車窓の風景は
、真っ青な空の下、シラカバ林の白
が映え、遠くには新雪が降ったばかり
の山並みが連なる。収穫を終えた美瑛
のパッチワークのような畑と合わせ、
それだけで至福感に包まれた。


 JR美瑛駅の停留所から東京から来
たという中年女性のグループが「きの
うも青い池に行ったのよ」と楽しそう

に乗り込んできた。確かにリュック姿

の外国人も多かった。




 約30分走った白樺街道の停留所を降
りた。「青い池」と書いた駐車場の標
識があるだけで何もない。ナナカマド
の赤い実を見上げながら約5分歩くと
、カラマツの木の間からエメラルド色
の水面が見えてきた。近付くと、確か
に青い池と呼ぶにふさわしい景色が広
がっていた。


 バックに冠雪した美瑛富士と美瑛岳
が見える。枯れたカラマツの木が屹然
として水面に何百本も立ち並ぶ。それ
ぞれがこれからの厳しい冬に立ち向か
う決意のような雰囲気を放つ。


 アルミニウムを含んだ湧水が美瑛川
の水と混じって、目に見えないコロイ
ド状という粒子が生成され、青い光が
散乱されやすくなって青く見えるとい
う。近くの白金温泉のイオウ・石灰成
分が一層青くするのを引き立てている
という。周囲の木々は紅い葉や黄色い
葉を付け、青とのコントラストも見事
だ。旅人がこの景色から何を思う

か天が楽しんでいるのかもしれない。


 「孤独」「幽玄」「純粋」……。そ
れぞれ催す感想は違うだろうが、誰も
がしばらく見入ってその思いを深めた
い気分になるはずだ。「季節を変えて

再訪したい」という思いになりながら

名残り惜しい景色を後にして、帰りの

路線バスに乗り込んだ。

(写真は青い池の風景と北海道大学

構内の木々)



 【2014・10・25】