究極の二択といえば、中学生からずっと悩んでいた二択がある。
何回か番組でも話したことあるから、知っている方もいるでしょう。

夜中布団の中で、急に怖くなることありませんか?
寝返りうったらそこに幽霊がいるんじゃないかとか、布団の中から急に出てきたらどうしよう、などなど。

私はこの不安や恐怖に打ち勝つにはどうしたらいいか考えていた。

「怖いと思うという事は、それだけ今が幸せなんだ、それを失いたくないから恐怖を感じているんだ」と自分を納得させてみたり、
方法は様々でしたが今一つ効果が薄かった。

そんな日々の中で生まれた究極の二択。


夜中目を覚ますと、隣に真っ白な服を着た女の霊が立っていた。
一瞬にして恐怖が膨れ上がり、叫び声が口から飛び出そうとした刹那、
恐怖を凌駕する稲妻に打たれた。
霊の女がドストライクにタイプだった。一目惚れと言っていいだろう。
しかも霊の女も「え?わたしが見えるの?すごく嬉しい!」と来るものだから、その愛らしさに一撃で仕留められた。
それからしばらく他愛のない会話をしてみると、見た目だけではなく、声やしゃべり方、仕草までもが好みだとわかった。
その日を境に、私の人生は色彩を帯び、どんな憂鬱な出来事があっても難なく乗り越えられるようになった。
夜になれば彼女に会えるから。
毎晩毎晩おしゃべりに興じた。語れども語れども尽きぬ会話と興味。
どうやら彼女も同じ気持ちでいてくれるらしかった。
この先こんな運命の出会いはないと思えるほど好きになった。
夜中急に出てきて「わっ!!」と幽霊の本職である、人を驚かすことをされても、(いやそれが本職かどうかは知らないが)
「おどかすなよぉ~」とイチャイチャにまで昇華されるようになった。
半年ぐらい過ぎたころだろうか、彼女の様子がおかしくなった。
楽しく笑いあっていたその後、ふいにとても悲しそうで切なそうな表情を見せるのだ。
思い切って聞いてみた。「言いたいことがあるならはっきりと言ってほしい」と。
すると彼女は堰を切ったように泣きだした。
そしてこういうのだ。
「わたしを除霊して成仏させてほしい」
私は混乱した。
今までの楽しい日々が張りぼてのように感じた。彼女は自分の事なんて見てくれていなかった、好きではなかったのだと。
打ちひしがれる私に彼女は、そうじゃないと、話し始めた。
一緒にいると、彼女の意思とは関係なく私の生気を吸い続け、いずれ死に至らしめてしまうとのことだった。
そう言われると確かに、最近親や友達に顔色を心配されたり、体重が落ちてきていることに思い至った。
なるほどと合点がいったと同時に私は、少し前の自分を心の中で叱責した。
彼女は誰よりも自分を見ていてくれた。考えていてくれた。
その優しさにまた彼女への想いが膨らむのを感じていた。
しかし問題はここからだ。
彼女を成仏させるのか?このままを続けるのか?


っていう二択。

この話をするとみんなに、何を長々アホらしいことを話してるんだとあしらわれてしまうのだが、
平野青年は、長い年月このお題と向き合ってきた。
しかも本来の目的である「怖さを克服する」ことに、このお題はことごとく勝利てきた。
布団の中で怖くなったときはいつもこの二択のことを考える、すると怖さは消え、どっちを選ぶべきなんだろうと、
いつの間にか思考の海へと潜っていけた。

愛を取るのか、命をとるのか。
苦しい現実をとるのか、甘い夢をとるのか。
色んなものを内包している二択だと思うんだよなぁ。

ドラクエ5の、ビアンカ・フローラ議論にも通ずるものがある。

今の私は熟考したうえで、「やはり成仏させるべき」一択ですが、
私の思春期は、この二択と共にあったと言っても過言はないだろう。

以上、一番考えた二択でした。

ありがとうございました。