私は虫が嫌いだ。
というか哺乳類以外を愛でれない。

もちろんすべての生き物に敬意を払っているし、感謝もしてる。
すべてがこの世界を作っているし、命を日々頂いているわけで。

でも苦手だ。
少年時代は平気で、虫取りカゴとあみを持って、傍若無人に森や林を暴れまわっていたというのに。
我が星が自転をする度、及び腰になっていき、いつの間にか、出くわした時「ひゃっ」と乙女な声が漏れるようになってしまった。

全然余裕と言う方もいますよね。本当にたくましく思うし羨ましい。

まず最初に嫌いになった虫はなんと言っても『G』ですよね。
次にスパイダー。以後『S』と呼ぶ。
スパイダーマンは全作見るほど好きだ。

ただSに関しては苦手になる前に恐怖があったように思う。
映画などを通じて、猛毒があり人を殺すこともあると知ったから。
その怖いという感情が苦手に移行していったのだと思う。

Gは違う。何も経由せず嫌いになった。
Gが陣頭指揮をとって、私の虫嫌いをより深刻なものにしていった。

直接的な害があるわけでもないのに何故なんだろう。
あの見た目、スピード、音、すべてが受け付けない。頭で考えてるわけじゃなくDNAレベルでダメなんだと思う。
逃げ回るのに最後には玉砕覚悟で突撃してくるあれはもう、、、なんなんだ!

20代前半にアパートの1階に住んでいたことがある。
1階は出やすいという情報は知っていたが、一番効くと名高い「ゴキジェット」も部屋に設置しているし、大丈夫だろうと高を括っていた。

しかし自分の脇の甘さを呪った。
出現した場所がまさかのゴキジェット裏。
武器を取り上げられ、為す術がなくなった私は、棒立ちで固まるしかなかった。
奴が動き、武器から離れるのをただ辛抱強く待った。その時の私には、それしか選択肢がなかったのだからしょうがない。

30分ほど後、その時が訪れた。

バカめ、みすみす武器を手放しよって。
すぐさま私は武器を奪還し、気が狂ったように吹きかけた。
正気に戻った時には中身が半分くらい無くなっていた。我ながらこの取り乱し様に呆れ果てた。

失敗から学んだ私はそれ以降、各部屋、もちろんトイレにも、武器を設置するようになったし、
ブラックキャップ的な罠もぬかりなく仕掛ける策士へとなった。

どうしてここまで嫌いなんだろうと小学生の時、考えに考えた。
出した答えは「コミュニケーションがとれないから」でした。
相手のことを知る作業が出来ない。ならば調べるしかあるまい。
相手のことをより良く知れば、好きにはなれないにせよ、ここまでの嫌悪は薄くなるのではと思い図書館へ向かった。

調べると案の定、知らないことばかりだった。
一概にGと言っても本当に多くの種類がいることを知った。
海外では飼われている種類もあると知った。
昆虫なのに母性がある種類があると知った。
子を育てる、それは愛じゃないか。素晴らしい昆虫だと思った。

やはり知識は優しさを与えてくれるのだ。
もう大丈夫、怖くない、怖くない。とその時は心底思った。

だが次に出会ったとき、大丈夫と感じた心は、すべてが夢幻だったのだと悟った。



余談ですが、
「この記憶は正しいものか、恐怖が現実を歪めているのか」と思う記憶がある。

昔、御徒町で勤めていた時のこと。
夜勤明け、上野まで歩こうと思い、靄がかかる街を疲れた足取りで進んでいた。
すると50mくらい先、とんでもないサイズのGが横切った。
大きさで言うと、もうちょっとした子犬くらい。
もはやG(ジー)ではなく、Z(ジィー)だ。
と思った記憶。

以上、余談でした。

最後までお付き合い、ありがとうございました。