税理士のヒラリーです。

 

うちのオピニオンレターを添付します。

ただし、参考文献、脚注などは企業秘密につき、省略します、

 

外国法人の日本国内での法人税課税の有無について

 

まず、2国間で企業活動を行う上で、どちらに課税権があるかどうかなどを決定する場合、各国間租税条約と各国国内税法に基づくこととなりますが、基本的には、租税条約の規定が国内税法の規定に優先されます(憲法982項、法人税法1391項)。

 

そのため日米租税条約の規定からまず解説します。

 

日米租税条約7条においては、「一方の締結国の企業の利得に対しては、その企業が他方の締結国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締結国内において事業を行わない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。」とされており、51項において、「恒久的施設とは、事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部又は一部を行っている場所」とされています。

そして、その恒久的施設の例として、52項以降にて、「事業の管理の場所、支店、事業所、工場、作業場、鉱山、石油又は天然ガスの坑井、採石場その他天然資源を採取する場所」などが挙げられています。

ただし、下記の場合は、例外的に恒久的施設に含まれないとされています。

  1. 企業に属する物品又は商品の保管、展示又は引渡しのためにのみ施設を使用する場合

  2. 企業に属する物品又は商品の在庫を保管、展示又は引渡しのためにのみ保有する場合

  3. 企業に属する物品又は商品の在庫を他の企業による加工のためにのみ保有する場合

  4. 企業のために物品もしくは商品を購入し又は情報を収集することのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有する場合

  5. 企業のためにその他の準備的又は補助的な活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有する場合

 

まず、恒久的施設の一般的定義である「企業がその事業の全部又は一部を行っている場所」について、従業員であるN様が保有される住居は、企業が事業を行う場所ではなく、企業の支配下にない私的空間なので、恒久的施設になる可能性は低いと考えます(支店登記、固定電話、看板なし、法人名義契約など事業所と誤認される要素の無いことを前提とします)。

 

次に、「事業を行う一定の場所」について、PCや携帯を用いた事務連絡は住居を拠点として行われるわけではなく、また技術支援も依頼に応じてクライアント様に訪問して実施するとお聞きしていますので、一定の場所で企業活動をしているわけではないのでN様の住居が恒久的施設に該当する可能性は低いと考えます。また、N様の日本での滞在期間はおおよそ20-50%とお聞きしていますので、より日本の住居が恒久的施設に該当する可能性は低いと考えます。

 

よって、日米租税条約において、N様の住居は恒久的施設に該当する可能性は低いと思われますので、日本国内では課税されないと思われます。

 

ただし、業務の効率性など企業活動の必要性から企業指定の場所に住み企業支配下の物件とみなされる場合などは、例え法的形式が従業員保有の住居であっても、N様の住居が企業の恒久的施設とみなされる可能性があります。また、住居としての使用を超えて住居で事業活動を展開した場合(例えば、連絡業務の範囲を超えてしまった場合)も同様に、法的形式に関わらず恒久的施設に認定され、租税条約54項除外規定の「企業のためにその他の準備的又は補助的な活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有する場合」等にも該当しない可能性があります

 

 

また、日本国内法の法人課税の規定として法人税法がありますが、日本の国税庁の独自認識により法人税を課税される可能性もあるため法人税法も確認する必要があります。その法人税法にて、「外国法人は、法人税法1381項(国内源泉所得)に規定する国内源泉所得を有するときは法人税を納める義務があり」(法人税法43項)、日本で課税されることとなっています。

その国内源泉所得は、外国法人が恒久的施設を通じて行ったもので恒久的施設に帰せされるべき所得に限定されており(法人税法13811号)、結局、租税条約と同様に恒久的施設を保有している場合に国内源泉所得に対して課税されることとなっています。

法人税法上の恒久的施設とは、「外国法人の国内にある支店、工場その他事業を行う一定の場所で政令で定めるもの」と規定されており(法人税法2112号の18、イ)、ここでも「外国法人の…事業を行う一定の場所」であることが明確に示されています。

ただし、税務上は実質判断を伴うものなので、国内法上も租税条約同様、恒久的施設とみなされるリスクは残ります。

 

よって、日本国内での課税リスクを下げるためには、租税条約は当然として、国内法人税法においても恒久的施設の範囲を確認し、N様の企業行動として業務内容(準備的又は補助的活動に)を制限しておく必要があります。また、脚注記載ⅲにあるように企業の全体としての活動の重要部分を形成する場合は準備的又は補助的活動に該当しない可能性もあるので、技術支援等の企業活動上の位置づけについて検討する必要があると思います。