まずこの作品にお声掛けいただけたこと、

そして誰も試したことのなかった撮影法を、ジャンルを越えて共有し試行錯誤を繰り返し完成させたスタッフ、キャストの皆様を誇りに思い、改めて感謝致します。



普通に観ただけでは見逃してしまうであろう細かな努力とアイディアの数々が、この作品のなかにはありました。





2月上旬から歌稽古・立ち稽古が始まり、

これから作るものはドラマではなく舞台なのではと思うくらい、

舞台の稽古と同じ工程で稽古が進められていきました。



この作品は劇団TipTapによるオリジナル作品。

過去にたくさんの俳優達によって舞台化されてきた為、

作品や役の資料も、作品の仕上がりも、演じてきた俳優の数だけ存在しました。


私は今回が初参加。

舞台ではなく映像で表現することの難しさと、作品の持つ舞台ならではの表現のバランスがとても難しく、

また楽曲の難しさも相まって初めから課題は山積みでした。



有難かったのは、演出の上田さんもプロデューサーの柴田さんも、音楽の小澤さんも、ディスカッションを大切にしてくれる方々だったこと。

丁寧に作品や役の持つ意味を伝えてくださり、

今まで演じてきた方々の歴史も見え、色々なことを経てこのドラマ化に繋がったのだなと思わせてくれました。



歌稽古から映像のスタッフさん達は毎回立ち会ってくださり、

立ち稽古でも映像でどう落とし込むか、この表現は実現可能なのかといったアイディアの出し合いが常に行われ、

共通言語がないはずの双方がお互いに歩み寄り、映像の分野でできること、舞台の分野でできることの擦り合わせはこうして行われていきました。








撮影が始まり、稽古中からの課題であった歌と音楽との合わせは、

カラオケ音源と現場でのピアノの生演奏を駆使し、それを小型のイヤモニで耳に返しながら歌うという、

映画版『レ・ミゼラブル』が取った手法に近いやり方を実践しました。






勿論簡単な作業ではありませんし、それで分かっていただけたかと思いますが、

本編で使われていた歌は映像と同時に録った生歌です。


撮影後のレコーディングでも直した箇所はほぼなく、

つまりは早朝から深夜まで終わりの見えない回数の歌を歌い続けました。


後にも先にもあんな時間にハイトーンを出すのはこの作品だけだと思いたい!笑

こういう時に日頃のメンテが活かされて良かったと心底思いました。








ミュージカルの特徴でもあり、ミュージカルが苦手な方は大概これを挙げますが、

歌と台詞の切り替え。


台詞からどうして急に歌い出すのか分からないという疑問は、

良くも悪くもミュージカルの一番の特徴でもあり、これが上手くいくかによって作品の見方が大きく変わります。



踊りも同じです。

どうしてさっきまで関係のなかった後ろの人と急に踊り出すの?と思うナンバーは必ずと言っていいほどあります。



しかも今回はそれが舞台ではなく、ドラマ。

舞台の芝居とドラマの芝居のアプローチが全く違うように、舞台ですら難しい問題を映像でより自然に、違和感なく見せなければいけません。



これに関しては様々な答えがあると思いますので、今回のこの作品のアプローチが正解かどうかは置いておいて、

皆さんがすんなり馴染めるように観ていただけていたら嬉しいなと思っています。








家のシーンから撮り、回想シーンを挟み、最後に学校回りを撮影していった為、

学校でのナンバーがほぼない私は家でのソロナンバーに全力を注がなくてはなりませんでした。



ラストシーンに関しては、実は3日間かけて撮りました。

毎日その日の全ての撮影の最後に必ず待っているラストシーン・・・。


女優達の泣き腫らした顔をご覧ください笑。






夫役の上口さん、

生徒役のなるちゃんは、

この短期決戦の撮影を一緒に全力で乗り切った戦友のような感覚があります。


お二人のお人柄が歌や芝居に現れていて、

辛く悲しいシーンでも常に現場は和やかな雰囲気で臨むことができました。



このメンバーで舞台版もできたら最高だねと話していましたが、またお会いできることを願って・・・。







スペシャルサンクスは寅之介!

そして控えの海ちゃん!


いきなり歌いだすお姉さんに驚かず堂々とお芝居してくれました笑。




これほどまできちんとミュージカルを作ろうとしたドラマはかつてなかったと思います。


フジテレビさんの深夜枠の試験的な枠だったからこそ色々な可能性が広がり、

それぞれの分野の融合と理解が、温かくこの作品を包み込んでくれました。




改めてこの作品を通して挑戦させてもらったことへの感謝をここに記すと共に、

ミュージカルの世界に興味・関心を持ってくださる方が少しでも多くこの作品を見て、その一歩を踏み出すきっかけになってくれますように。





私は既にその存在がない役でしたが、だからこそ人の中に生きている自分を通して救いや赦しを感じました。


「だから一生懸命、今を生きているんです」

と、どんなことをしている時も感じられるくらい、

日々自分と向き合いながら精一杯今を生きることができたら、きっと目に見える世界が一変するとおもいます。


その可能性を皆さんが持っていて、自分自身の意味に気付かせてくれる、

そんなことを教えてくれる作品だったと思います。





ご視聴いただきありがとうございました。